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元・副会長のCinema Days

映画の感想文を中心に、好き勝手なことを語っていきます。

「腑抜けども、悲しみの愛を見せろ」

2007-07-28 06:56:39 | 映画の感想(は行)

 極端な自意識過剰女を演じている佐藤江梨子や、漫画家志望の根暗なその妹に扮する佐津川愛美の演技など、まったく大したものではない。私見だが、ああいう“最初からぶっ飛んだ役”は、当初の“掴み”さえ分かればあとはノリで何とかなるのだと思う。彼女たちのような基本的演技力がままならない者にとっては“都合の良い役”だったのではないだろうか。

 対して真に凄みを感じさせるのはサトエリの兄嫁を演じる永作博美だ。実際、この映画は彼女のためにあると言っても良い。貞淑で働き者の農家の嫁・・・・という設定ながら、実は異常な生い立ちを持ち、そのために“家族”に対して異常なほどの執着を見せるが、本人は夫とのセックスレス生活を長年続けていて自ら“家族”を持つことに関して完全に腰が引けている。そのアンビバレンツな精神構造が映画が進むにつれジリジリと表面化し、徐々に狂気の世界に足を踏み入れてゆくプロセスは圧巻と言えよう。永作の実力のほどを見せつける怪演である。

 だが、どちらかというと脇のキャラクターである彼女が目立ってしまったこと自体、本作の不成功ぶりを印象づけるものだ。どうしようもない姉妹二人の泥仕合など、観ていて鬱陶しいだけで何のカタルシスもありゃしない。ヘンな連中におかしなことをやらせて、それを作者が勝手に面白がっているだけみたいな印象を受けてしまう。まずは、舞台となる石川県の片田舎のリアリティを徹底的に描出すべきではなかったか。現実が描けてこそ非現実が活きるのは常識以前のことである。

 これが劇場用長篇デビューとなる吉田大八監督はCM界出身らしく、なるほどテンポは良く凝った映像処理も手慣れたものだが、観客の心にグッと迫る求心力の発揮は、まだまだのようだ。今後の精進を望みたい。

 それにしても、佐藤江梨子のようなアマゾネス的ルックスの女優は、邦画界では本作みたいな現実離れした役しかやらせてもらえないのは仕方がないのだろうか。この映画はカンヌ映画祭にも出品されたことだし、海外進出してみるのも面白いかもしれない・・・・と、勝手なことを言ってみる(^^;)。
コメント
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