元・副会長のCinema Days

映画の感想文を中心に、好き勝手なことを語っていきます。

「バグジー」

2007-07-04 07:01:06 | 映画の感想(は行)
 (原題:Bugsy )91年作品。「ラッキー・ユー」の舞台はラスベガスだったが、もともとここは沙漠であり、現在の礎が出来たのは1940年代である。そのあたりを描いたのが本作。愛する女のためにラスベガスの街を築き上げた男、ベンジャミン・“バグジー”・シーゲル。実在のギャングをモデルに、ハリウッドの女優ヴァージニア・ヒルとの運命的な出会いと激しい恋、ギャング同士の抗争、などのエピソードを散りばめながら、沙漠でしかなかったラスベガスにフラミンゴ・ホテルを建てるまでを描くドラマ。監督は「レインマン」などのバリー・レビンソン。

 正直言って、それほど面白くなかった。大変にカネをかけた映画であることはわかる。当時の風俗をそっくりそのまま再現したセットは見ものだし、衣装も使用されている楽曲も素晴らしいもので、加えてアラン・タヴィオーによる撮影は暖色系を中心にノスタルジックな雰囲気を醸し出すことに成功。きわめてゴージャスな映画で、その意味では観て損はない。

 しかし、ドラマとしては物足りないのは、主人公のキャラクター設定が甘いからだろう。競争相手のギャングや裏切り者に見せる凶暴さと、家族や惚れた女に対する優しさ、という二面性を持っていることはわかる。自分の夢のためならすべてを投げ打つロマンチストだというのもわかる。実在の人物としては映画として描くに足る面白い個性であるのは納得できる。ただそれが映画の面白さには反映されていない。

 実績や性格をストーリー上で説明するだけではなく、プラスアルファの人間的魅力をスクリーン上に結実しなければ伝記映画は成功しない。主演のウォーレン・ビーティは軽いタッチで主人公の憎めないキャラクターを強調しているようだが、何となく薄っぺらで底の浅い人物にしか見えない。少しは悩んだり、考え込んだりしたらどうなのか。行きあたりばったりの行動が多く、これでよくマフィアのボスになれたものだと感心してしまう。

 相手役のアネット・ベニングにしても然り。美しいけど中身がなく、わがままで可愛げのない女で、最後はバグジーのために改心(?)するものの、主人公の運命を変える役どころとしては貫禄不足だ。ハーベイ・カイテルはじめとするわき役が健闘しているだけに、主役二人が浮いているような印象を受ける。ギャング映画御用達のエンニオ・モリコーネ音楽も今回は不発。
コメント
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