元・副会長のCinema Days

映画の感想文を中心に、好き勝手なことを語っていきます。

「ファウンテン 永遠につづく愛」

2007-07-26 06:48:17 | 映画の感想(は行)

 (原題:The Fountain)何やらトンでもないものを観たような気がした。ヒュー・ジャックマン&レイチェル・ワイズの主演による時空を超えた恋物語・・・・という触れ込みだが、印象としてはどこぞの新興宗教のPR映画みたいである。

 余命幾ばくもない妻が書き綴る物語は、中世スペインを舞台にしたカソリックがらみの宗教抗争劇から、なぜか旧約聖書にある“生命の樹”が南米にあることになり、そこに赴く女王の親衛隊の冒険談に発展。それと平行して主人公の精神世界みたいな“空間”が映し出され、そこで“座禅”を組んで瞑想にふけっていると生死の境にあるはずの妻が現れ“物語を完成させて”と懇願する。また脳外科医でもある主人公の動物実験に“南米から持ち込まれた樹”の一部が使われ、それが脳腫瘍に効果があるかどうか逡巡するうちに、同じ病に冒された妻は危篤状態になって、かと思うと次は二人の過去が何度もフラッシュバックするうちに、くだんの“空間”は上昇を続けて、一方南米の奥地にたどり着いた親衛隊長は“生命の樹”の奇跡に遭遇するのだが・・・・といった、ほとんど支離滅裂のストーリーが観客を完全無視して展開される。

 監督・脚本は「レクイエム・フォー・ドリーム」などの鬼才ダーレン・アロノフスキーだが、この浮世離れしたストーリーは、おそらく彼の中で何らかの宗教的インスピレーション(?)が生成されたのだろうと思わせる。何かそういうきっかけになった出来事があって、はからずも“あっち側”に足を踏み入れてしまったのだろう。

 先ほど某宗教団体のPRみたいだと書いたが、これは何も“布教”を目的としたものではないから、個人的な信心の発露というレベルである。ただし困ったことに作者はこれを“普遍的なもの”だと捉えているようだ。この意味で、本作は日本映画史上屈指の怪作である橋本忍監督「幻の湖」と通じるところがある。

 おそらくは時が経てばカルト作品として一部の好事家から“評価”されるのだろうが、今回それをリアルタイムでスクリーン上で観られたということに価値があったのかもしれない(爆)。なお、クリント・マンセルwithクロノス四重奏団による音楽は素晴らしく、サントラ盤だけは文句なしにオススメだ。
コメント
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