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元・副会長のCinema Days

映画の感想文を中心に、好き勝手なことを語っていきます。

「草原とボタン」

2009-05-15 06:37:28 | 映画の感想(さ行)
 (原題:War of the Buttons)95年作品。ルイ・ペルゴーの小説「ボタン戦争」の2度目の映画化で、舞台を60年代のアイルランドの片田舎に移し、ケンカに明け暮れる小学生たちの生態を描く。

 アイルランド南西部コーク地方の隣合った二つの村の子供たちは何かというと互いに対立する。負けて捕まると服のボタンを取られる屈辱が待っているため(これが原題の由来)、彼らは互いに知恵を絞りぬく。ヒネた映画ファンなら、子供たちの対立を通じて大人社会の縮図を示そうとしているとか、時代背景を投影しているとか、そんな扱い方を期待するものだが、これは見事に子供たちだけの映画に仕上がっている。

 屈託のかけらもなく、いかに相手をヘコませるかだけを考えてケンカにいそしむ彼ら。ほとんど素人を起用し、ワイワイガヤガヤ、はつらつとした子供たちの描写は嫌味がなくてよい。ブルーノ・デ・キーズによる撮影もアイルランドの自然を美しくとらえている。

 でも、それだけの映画であるのも確か。思い切ったテーマの提示や、先鋭的な描写といったプラスアルファの魅力は最後まで見られず、子供時代のノスタルジアに終始するだけだ。同じ題材なら侯孝賢の「川の流れに草は青々」とかイヴ・ロベールの「マルセルの夏」の方が断然すぐれている。物足りない出来だ。プロデューサーは何と「ミッション」「メンフィス・ベル」で知られるデイヴィッド・パットナム。監督のロバーツはこれがデビュー作であった。
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