(原題:Burn After Reading)少なくとも退屈はしなかったが、あまり評価は出来ない。これはコーエン兄弟の旧作「ファーゴ」の焼き直しに「ノーカントリー」のテイストを織り交ぜただけのシャシンではないのか。もちろんネタの二次使用だろうが何だろうが前回よりもリファインされていれば文句はないのだが、本作に限っては緊張度が落ちているのだからどうも手放しでは喜べない。
売り言葉に買い言葉でCIAを辞めてしまったアル中の幹部職員が書こうとした暴露本の草稿入りのCD-ROMを巡って、イマイチ知恵の足りない連中が右往左往するうちに、凶悪犯罪に発展するという筋書きだ。いつもの“人間ってやつは、愚かでどうしようもない”というヒネたコンセプトに則って、濃い面々が織りなすブラックな笑いを楽しもうという仕掛けだが、語り口は上手いもののストーリーは完全にマンネリである。
もっとも、マンネリズムを御愛敬として受け入れれば文句も出ないのだろうが、コーエン兄弟の遣り口は愛嬌として片付けられるほど扱いやすいものではない。特に、豪華キャストにつられて劇場に入ってしまったフツーの観客こそいい面の皮である。
ジョージ・クルーニー扮する捜査官は身勝手なだけの野郎だし、ブラッド・ピット演じるスポーツジム・インストラクターは完全なアホで、しかも思いがけず途中で“退場”してしまうという愛想の無さ(この時、一瞬客席がざわついたのには笑ったが ^^;)。フランシス・マクドーマンド、ジョン・マルコヴィッチ、ティルダ・スウィントンといったクセ者キャストを揃えて、やっぱり後ろ向きの食えない役柄を振っているのは、手練れの映画ファンならば苦笑するだけだが、一般のお客さんにとってはドン引きすること必至だ。
無手勝流のラストなんて(約束通りかもしれないが)やはり脱力する。今回のような配役ではなく、まったく無名の俳優たちを持ってきて楽しませてくれれば、それなりの努力は買うが、どうも今回は出演している面々にネタを丸投げしているようで愉快になれない。凝った小道具の使い方も、映像面での面白さも、ロケーションの効果も(今回は首都ワシントンが舞台だが ^^;)、あまり見られない。どうにも扱いに困る映画なのである。