1953年文学座=新世紀映画提携作品(配給は松竹)。日本映画史上屈指の監督と言われる今井正の代表作だが、私は今回の福岡市総合図書館ホールにおける再上映で初めて接することが出来た。樋口一葉の3つの短編小説の映画化で、本編も3つのパートに分かれたオムニバス映画である。
第二話に当たる「大つごもり」が断然面白い。資産家の家に奉公しているヒロイン・みねは、ある日病に伏せっている伯父の一家から金に困っていることを明かされ、大晦日までに給料を前借りして少し都合して欲しいと頼まれる。世話になった伯父を見捨てるわけにもいかず快く引き受けた彼女だが、資産家の財布を握っているのは不人情な奥方だ。一度は給料前払いを承諾するが、大晦日近くになってもそれを実行する気配は無い。
切羽詰まったみねは、売上金の中からいくらか抜き取って伯父一家に渡す。時あたかも月末の決算で、みねの“犯行”が露見するのは時間の問題。さて、彼女の運命は・・・・。
プロットの積み上げ方が絶妙で、全編に渡るサスペンスには瞠目させられる。終盤の鮮やかなドンデン返しも含め、一級の娯楽編と言って良い。主演の久我美子をはじめ、仲谷昇や中村伸郎といった脇のキャストも万全だ。
不本意な結婚生活に悩んで一時は実家に帰る人妻と、彼女に思いを寄せていた幼馴染みの車引きとの束の間の逢瀬を丹念に綴った第一部「十三夜」や、小料理屋の酌婦と彼女に入れあげて落ちぶれた男との恋のもつれを描く第三部「にごりえ」(主演の淡島千景がキレイでエロい!)も良い出来なのだが、「大つごもり」と比べればどうしても印象は薄くなる。
とはいえ、全体的には水準以上のクォリティは確保されており、この時代の今井監督の実力を垣間見るような気がした。中尾駿一郎のカメラと団伊玖磨の音楽はさすがに達者。昭和28年のキネマ旬報誌のベストワン作品でもある。
第二話に当たる「大つごもり」が断然面白い。資産家の家に奉公しているヒロイン・みねは、ある日病に伏せっている伯父の一家から金に困っていることを明かされ、大晦日までに給料を前借りして少し都合して欲しいと頼まれる。世話になった伯父を見捨てるわけにもいかず快く引き受けた彼女だが、資産家の財布を握っているのは不人情な奥方だ。一度は給料前払いを承諾するが、大晦日近くになってもそれを実行する気配は無い。
切羽詰まったみねは、売上金の中からいくらか抜き取って伯父一家に渡す。時あたかも月末の決算で、みねの“犯行”が露見するのは時間の問題。さて、彼女の運命は・・・・。
プロットの積み上げ方が絶妙で、全編に渡るサスペンスには瞠目させられる。終盤の鮮やかなドンデン返しも含め、一級の娯楽編と言って良い。主演の久我美子をはじめ、仲谷昇や中村伸郎といった脇のキャストも万全だ。
不本意な結婚生活に悩んで一時は実家に帰る人妻と、彼女に思いを寄せていた幼馴染みの車引きとの束の間の逢瀬を丹念に綴った第一部「十三夜」や、小料理屋の酌婦と彼女に入れあげて落ちぶれた男との恋のもつれを描く第三部「にごりえ」(主演の淡島千景がキレイでエロい!)も良い出来なのだが、「大つごもり」と比べればどうしても印象は薄くなる。
とはいえ、全体的には水準以上のクォリティは確保されており、この時代の今井監督の実力を垣間見るような気がした。中尾駿一郎のカメラと団伊玖磨の音楽はさすがに達者。昭和28年のキネマ旬報誌のベストワン作品でもある。