元・副会長のCinema Days

映画の感想文を中心に、好き勝手なことを語っていきます。

「スイング・ステート」

2021-10-10 06:58:20 | 映画の感想(さ行)
 (原題:IRRESISTIBLE)題材は面白い。しかし、映画は面白くない。もっとも、アメリカ人が観れば楽しめるのかもしれない。際どいジョークの連発は、あちらの観客を喜ばせること間違いなしだろう。でも、我々ヨソの国の者にとっては関係ない。さらに言えば、本作の展開はかなり平板で盛り上がりに欠ける。結果的に、観ている間は眠気との戦いに終始してしまった。

 2016年のアメリカ大統領選挙での敗北を境に、民主党の選挙参謀ゲイリー・ジマーは失意の中にあった。そんな時、スタッフが持って来たウィスコンシン州の田舎町ディアラーケンでの住民集会で熱弁を振るう中年男の動画を視聴した彼は、一気に目の色が変わる。農村部の票を取り戻す切っ掛けになると信じたゲイリーは意気揚々と現地に乗り込み、くだんの男である退役軍人ジャック・ヘイスティングス大佐を来るべき町長選挙に民主党候補として立候補させる了解を取り付ける。



 さっそく大佐の娘ダイアナや住民のボランティアたちと選挙事務所を立ち上げる彼だが、対立候補の現役町長ブラウンに共和党の選挙参謀であるフェイス・ブルースターが荷担。事態は民主党対共和党の、巨額を投じた代理戦争の様相を呈してくる。

 ディアラーケンは軍基地が撤廃されてから人口が大幅に減り、財政危機で破綻寸前だ。めぼしい産業も無い、ラストベルトの代表みたいな土地である。そんな町で二大政党のバトルが巻き起こるという構図は、なるほどナンセンスで興味を惹かれる。実はこの珍事の裏には思いがけない“真相”が隠されていたというオチも、まあ悪くないだろう。

 しかし、日本人としては笑えない内輪のギャグの連発と起伏に欠けるストーリーが、鑑賞意欲をかなり阻害する。ジョン・スチュワートの演出は手ぬるく、メリハリに欠ける。聞けばこの監督は本来バラエティ番組を手掛けていたプロデューサー兼コメディアンとのことで、本作を観る限り映画向けの人材ではないことは確かだ。主演のスティーヴ・カレルは“お笑い系”であることは承知していたものの、ここでは微妙なくすぐりに終始していて感心しない。

 クリス・クーパーにマッケンジー・デイヴィス、ナターシャ・リオン、ローズ・バーンといった面々は良くやっているとは思うが、コメディらしい真にハジけたようなパフォーマンスは見られなかった。ブライス・デスナーの音楽はあまり印象に残らないが、ラジオから流れる昔のポップスには心惹かれるものがある。特にグレン・キャンベルの「ラインストーン・カウボーイ」は懐かしく思えた。

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