猫のひたい

杏子の映画日記
☆基本ネタバレはしません☆

BAR(バール)に灯ともる頃

2020-11-17 22:17:49 | 日記
1989年のイタリア映画「BAR(バール)に灯ともる頃」。

ティレニア海沿いの小さな港町チヴィタヴェッキア。タクシーから降りた初老の
男(マルチェロ・マストロヤンニ)は兵役中の1人息子ミケーレ(マッシモ・トロイ
ージ)と久々に再会する。初めての父子2人きりの1日。BAR(バール)で打ち解け
た2人は、トラットリアで昼食。ミケーレは父から機関士だった祖父の形見の懐
中時計を贈られて喜ぶ。父子は揃って町を散歩し楽しいひと時を過ごすが、些細
なことで喧嘩になってしまう。

エットーレ・スコラ監督による人間ドラマ。裕福な弁護士の父は兵役中の息子ミ
ケーレに会うため、ローマからやって来る。父は今まで仕事が忙しく、ミケーレ
と2人だけで過ごすのは初めてのことだった。お互いに気恥ずかしさを覚えるが、
BAR(バール)に入って話をし、やがてトラットリアに場所を移す。ミケーレは父
から大好きだった祖父の形見の懐中時計を贈られとても喜ぶ。父はミケーレに新
車やローマの家までプレゼントすると言い出すが、ミケーレは「そんなにはいら
ない。今の暮らしで満足している」と言う。ミケーレにとって車より家より祖父
の懐中時計の方が嬉しいものだった。2人はちょっとした意見の違いから口論に
なってしまう。
父と息子がひたすら会話をしているだけの映画である。特に劇的なことが起きる
訳でもなく、しゃべっているだけ。私はセリフがとても少ない映画も好きだが、
会話劇も好きなのでおもしろかったが、会話劇が苦手な人には合わないかもしれ
ない。父は久しぶりに会った息子が逞しく成長しているのを誇らしく思うし、ミ
ケーレも父に会えて嬉しいのだが、自分の価値観を押しつけるところのある父を
実は少し苦手にしていた。次第に2人の会話はかみ合わなくなっていく。
父はミケーレを愛しているのだが、仕事に追われてろくに話もしてこなかったた
め、愛情表現が一方通行だ。どうもうまくミケーレの心を掴めない。ミケーレの
恋人や行きつけのBARの店長の方がミケーレのことをよく知っていることに嫉妬
し、すねたりする。その細やかな感情をマルチェロ・マストロヤンニがうまく表
現している。さすがマストロヤンニだと思った。2人は仲直りできないまま父が
帰る時間になってしまう。
イタリアは家族主義だというのをよく感じられる映画だった。今ひとつ父の考え
に納得できない息子、息子への愛情が空回りしてしまう父、でもやはり愛し合う
家族なのである。ラストシーンも良かった。何も起きない映画だが、じんわりと
した親子の心の交流が描かれていて、私は好きだ。マルチェロ・マストロヤンニ
は年をとってもかっこいいなあ。ちなみにBARとはバーと喫茶店が一緒になった
ような飲食店で、トラットリアは大衆向きの小さなレストランのことだそうだ。


良かったらこちらもどうぞ。エットーレ・スコラ監督作品です。
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