猫のひたい

杏子の映画日記
☆基本ネタバレはしません☆

ザ・フォーリナー/復讐者

2021-01-09 22:06:44 | 日記
2017年のイギリス・中国・アメリカ合作映画「ザ・フォーリナー/復讐者」。

ベトナム戦争時代、アメリカの特殊部隊の優秀な工作員だったクァン・ノク・ミン
(ジャッキー・チェン)は、現在はロンドンでレストランを経営して慎ましく暮らし
ていた。ところがある日、愛娘が政治的な無差別爆破テロに巻き込まれ、命を落と
してしまう。怒りに燃えるクァンは、特殊部隊時代に培ったスキルを駆使して犯人
を捜し出し、復讐しようと決意する。調査を進めていくと、かつて過激派組織の活
動家だったが現在は北アイルランドの副首相であるリーアム・ヘネシー(ピアース
・ブロスナン)の存在が浮かび上がる。

ジャッキー・チェンが笑顔を封印しシリアスに演じたサスペンス・アクション。ク
ァン・ノク・ミンはロンドンでチャイニーズ・レストランを経営していたが、ある
日娘の送迎中爆発テロに巻き込まれ、目の前で娘を亡くしてしまう。その後、北ア
イルランド解放を主張する過激派組織が犯行声明を出す。クァンは、かつて過激派
組織の活動家だったが現在は北アイルランド副首相となっているリーアム・ヘネシ
ーにコンタクトを取り、犯人の名前を教えるようにリーアムに迫るが、彼は無関係
だと言ってクァンを帰してしまう。
暗い映画だったがなかなかおもしろかった。クァンの孤独さや冷徹さがよく表現さ
れていていい。クァンは昔妻と長女、次女を亡くしており、3女だけが唯一の家族
だった。その3女を目の前で殺害され、全てを失ってしまったのだ。彼は復讐を決
意する。物語の最初の方ではクァンの正体が明らかにされていないので、この人ど
うしてこんなことができるのだろう、どうしてこんな知識を持っているのだろう、
と思うシーンが多いのだが、やがて彼がかつて米軍の特殊部隊に所属していたのだ
とわかる。そしてテロに関連して浮上してきた北アイルランド副首相の存在。
ジャッキーも60代だが、それであのアクションはすごい。若い俳優たちに全く負
けていないかっこよさ。副首相にしつこく接触してくるクァンのことを副首相は何
度も「あの老いぼれ」と言うのだが、実際はジャッキーよりピアース・ブロスナン
の方が1歳上である。でも確かにジャッキーの方が老けて見えた。ピアース・ブロ
スナンが若いのだろうか。
物語は私には少しわかりにくい部分もあった。私はポリティカルな映画が苦手なの
だ。大体昔過激派組織に属していた人が副首相になれたりするのだろうか。登場人
物も多くて人間関係がわかり辛い感じもした。もちろんこれは私の理解力のせいな
のだが。純粋にジャッキーのアクションを楽しむには少し暗い映画だし。でもシリ
アスなジャッキーもこれはこれで好きだ。全体的にはおもしろかったと思う。ラス
トシーンは悲しい。




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ジョン・F・ドノヴァンの死と生

2021-01-05 22:18:38 | 日記
2018年のカナダ・イギリス合作「ジョン・F・ドノヴァンの死と生」。

ニューヨークで人気俳優のジョン・F・ドノヴァン(キット・ハリントン)が29歳
の若さでこの世を去る。自殺か事故か、あるいは事件か、謎に包まれた死の真相
について、鍵を握っていたのは11歳の少年ルパート・ターナー(ジェイコブ・ト
レンブレイ)だった。10年後、新進俳優として注目される存在となっていたルパ
ート(ベン・シュネッツァー)は、少年の頃ジョンと交わしていた100通以上の手
紙を1冊の本として出版。更には、著名なジャーナリスト・オードリー(タンディ
・ニュートン)の取材を受けて、全てを明らかにすると宣言する。

グザヴィエ・ドラン監督による初の英語作品。アメリカの人気俳優ジョン・F・
ドノヴァンが29歳の若さで謎の死を遂げ、大きく報道される。11歳の少年ルパ
ートもショックを受けた1人だった。彼はジョンの大ファンで、ジョンに憧れて
子役になっていたのだった。そしてルパートがジョンにファンレターを送ったと
ころ返事が来て、それから秘密の文通をする仲になっていた。華やかなスターの
光と影、苦悩が100通以上もの手紙から明かされていく。
ルパートは両親が離婚して、母親のサム(ナタリー・ポートマン)に連れられてア
メリカからイギリスに移り住んでいたが、その生活は平穏なものではなかった。
アメリカを離れたために子役の仕事もあまりなく、学校では孤立し、サムとの関
係も良くなかった。ルパートにとってはジョンとの文通が心の支えだった。ドラ
ン監督の映画では母と子の関係がよく描かれるが、ジョンもまたアルコール依存
症の母親を疎ましく思い、長く母親に会っていなかった。そしてジョンは自分の
セクシュアリティについても悩んでいた。これもドラン作品ではよく描かれるテ
ーマである。
物語はジョンのパート、少年時代のルパートのパート、青年期(現在)のルパート
のパートが交錯しながら進行していく。現在のルパートがジャーナリストのオー
ドリーにジョンとのことを話す形で少しずつジョンの人生が浮き彫りになってい
く。けれどもちょっとリアリティに欠ける感じはした。アメリカのスター俳優が
少年からのファンレターに返信したのはいいとして、そのまま文通を始めるだろ
うか。誰にも相談できない仕事や生活の悩みを、会ったこともない11歳の無名
の子役の少年に明け透けに語るだろうか。今までのドラン作品の中ではちょっと
説得力に弱い感じがした。
でもそれでも、ルパートが知るジョンの素顔は繊細で苦悩に満ちていて、痛まし
く感じられるものはある。ジョン役のキット・ハリントンと少年期のルパート役
のジェイコブ・トレンブレイの演技がとにかく素晴らしい。ルパートがジョンの
人生を引き継いだかのようなラストは感動的だった。ただドラン作品では初めて
の英語映画で、ナタリー・ポートマン、スーザン・サランドン、キャシー・ベイ
ツといったハリウッドの有名俳優たちが出演しているので、何だかアメリカ映画
みたいだった。今回英語作品に挑戦してみたらしいが、挑戦しなくていいのにと
思った。ドランの映画はやっぱりフランス語で観たい。


良かったらこちらもどうぞ。グザヴィエ・ドラン監督作品です。
胸騒ぎの恋人
Mommy マミー
わたしはロランス
たかが世界の終わり



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