
日本秘湯を守る会でも名高い法師温泉「長寿館」。旧三国街道沿いにある一軒宿で、本館は江戸時代の旅籠の面影を残す。古くから数多くの文人墨客が訪れる名湯だ。与謝野晶子や若山牧水、川端康成、直木三十五、内村直也、中西悟堂等々、いずれもその道の大家が、口を揃えて評価するのは、鹿鳴館風の異色の建物「法師乃湯」。

法師乃湯を一躍、全国版に押し上げたのは国鉄(現JR)のフルムーン旅行のポスター。上原謙と高峰三枝子が仲良く湯船に浸かっているシーンをご記憶の方も多いだろう。浴槽の底からお湯が沸きあがってくるのを身体で感じながら、川のせせらぎと風木の音を、丸木を枕に湯に浸かっていると、詩人になったような気分になるから不思議だ。
女房と二人で作った下手な一句を。
「風までも 声をひそめる 法師乃湯」(作chosan)
「川音を 丸木まくらに 法師乃湯」(作shizue)