12月19日 デルタロイド

2008年12月19日 | 風の旅人日乗
(photo by Rick Tomrinson/VOR)


ボルボ・オーシャンレースに参加しているデルタロイドに大きなトラブルが発生した。
カンティング・キールを左右に振り上げる油圧ラムを支持するカーボンフレームが座屈した。

(photo by DeltaLloyd/VOR)
キールを振り上げることができないばかりか、
キール根元部との水密を保つカバーも割れているため、浸水の恐れもある。

現在デルタロイドはキールを船体中央にロックし、
さらにバックアップとして、生き残っているもう一方の舷のラムでキールを中央に支えてセーリングしている。


最も近い港に向かうことも視野に入れながら、
最良の選択であるシンガポールまで走ることができるかどうか、
状況を見ながら検討中とのこと。

カーボン積層での修理が必要となるため、最も近いスマトラ島に向かったとしても、
そこで修理できる見込みは少ない。

カーボン積層修理が可能そうな、最も近い港は、チャーターヨットのベースがあるマレーシアのランカウイかもしれないが、
ここは、水深(ボルボ・オープン70の喫水は4.5メートル)が充分か否かの不安が残る。



デルタロイドは、元の、前回のボルボ・オーシャンレース2005-2006で優勝したABNアムロ1。

(photo: VOR2005-2006)

ABNアムロ1は、2005-2006のレース前には数ヶ月に及ぶトレーニングで1万マイル近くをセーリングし、
本番レースで地球を1周した後も、オーストラリアのシドニー-ホバートレースに参戦(このときはマストを折ってリタイア)、

その後には地中海マキシヨット・シリーズを転戦している。

その後さらに、エリクソン・チームのトレーニングボートとして買われ、
今回のレースに参加しているエリクソン3のチューニングパートナーとして酷使されてきた。

これらの疲労が、ボルボ・オープン70クラスのヨットの中で最もロードが掛かるこの部位に蓄積していたのかもしれないし、
今回のレースから採用された新しいルールに合わせてキールバラストの重量を増やす改造を加えたことで、
オリジナルの設計強度を超える応力が生じていたのかもしれない。

無事、どこかの港にたどり着くことを願う。

『マリンウェザー海快晴』の携帯サイトで、
日本語の解説を加えたボルボ・オーシャンレースの迫力の動画を配信中(毎週1回金曜日に更新)です。
今週は、第2レグでブームを折ったグリーンドラゴンをフィーチャー。
クルーたちがそのトラブルに対応しているオンボードカメラの映像に
日本語で解説を加えています。
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