ここのところ、ヨーロッパの「古伊万里写」や中国の「古伊万里写」の紹介を続けていますが、今回は、そのうちの6点目の紹介で、前回同様、ドイツのマイセン窯で作られた小皿の紹介となります。
前回、ヨーロッパの「古伊万里写」とか中国の「古伊万里写」の物を勉強するためには、どうしても、ドイツのマイセン窯で作られた物を収集して勉強しなければならないことを書いたところです。
ところが、なにせ、古いマイセンのものは、本歌の古伊万里よりも数が少なく、また、値段も高いものですから、なかなか手に入りません(><)
前回紹介しました「ヨーロッパ製 柿右衛門写 もみじ小花散らし文 小皿」は、平成2年に東京で見つけたものですが、ちょっと、年代が若く、教材とするには適当ではありませんでした(~_~;)
今回紹介します「ヨーロッパ製 柿右衛門写 色絵 花鳥文 小皿」は、偶然にも、平成13年に、或る地方都市の市民会館内で行われていた小規模な古美術品展示即売会で出会ったものです。
物との出会いというものは、何処で巡り会うか分かりませんね! また、「骨董は足」という言葉にも納得です(^-^*)
その「ヨーロッパ製 柿右衛門写 色絵 花鳥文 小皿」というものは、次のようなものです。まだマイセン窯の窯印も入っていないもので、マイセンの初期の頃のものと思われ、柿右衛門様式を一生懸命に写していたことが伺えます。それは、また、前回紹介しました、
「1680~90年代にピークを迎えた柿右衛門様式は、1700年の声を聞いた前後になると、作風展開が停滞するようになる。峠を越えたのである。1710年ごろになり、ドイツのザクセン選帝侯であり、神聖ローマ帝国ポーランド王を兼ねたアウグスト強王は、柿右衛門様式を愛するあまり、マイセン窯の陶工ヨハン・ベットガー(1682~1719)に命じて、白磁の創始に成功する。この余勢を駆って、1720年前後には、手本とも見紛うほどの素晴らしい柿右衛門様式の色絵磁器の倣製品をつくりあげたのである。その出来ばえはまことに見事であったから、名声はヨーロッパの諸国に広まり、柿右衛門様式は各地の窯で写されることになった。」(「世界をときめかした伊万里焼」(矢部良明著 角川書店 平成12年初版発行)P.84 )
という文章を彷彿とさせますし、ヨーロッパの「古伊万里写」を学ぶ教材に相応しいものと思われます。
表面
見込み面の拡大
本歌の柿右衛門様式の場合は、花は、普通、梅、椿、牡丹、菊等が描かれますが、これは何の花なのか分かりません。洋風の花に置き換えているのでしょうか? そんなところから、これが柿右衛門写しであることが分かります。
裏面
高台内には、窯印がありません。前回、
「マイセンは、当初は、ライバルもなく、窯印もありませんでしたが、マイセンの名声がヨーロッパの諸国に広まり、マイセンに続けとばかりにヨーロッパの各地の窯が台頭してきますと、作品に窯印を入れて、そのオリジナル性を主張するようになります。」
と書きましたように、窯印がないということは、この作品が、マイセンの初期のものであることを示していると言えるか思います。
生 産 地 : ドイツ・マイセン
製作年代: 18世紀前半
サ イ ズ : 口径;15.7cm 高さ;2.3cm 底径;9.4cm