今回は、「染錦 太湖石花文 ミニ髭皿(ヒゲザラ)」の紹介です。
これは、平成2年に(今から31年前に)、東京の古美術店から買ってきたものです。
表面
非常に保存状態が良いようです。
ドールハウス用だったので、実用にはされなかったからでしょう。
裏面
生 産 地: 肥前・有田
製作年代: 江戸時代中期(1700~40年代)
サ イズ : 口径;10.0cm 高さ;3.2cm 底径;4.4cm
ところで、これを買った時点で、ミニ髭皿というものが世の中には存在すること、また、それが珍品であることは承知していました。
といいますのは、「図鑑 伊万里のすべて」(野村 泰三著 光芸出版 昭和55年 初版 第4刷発行)という本を読んでいて、その16ページに、
「 古伊万里染錦草花文ひげ皿
享保前後 径11cm 高台径4.3cm
ミニ髭皿である。
はじめみたときは、ちょっと信じがたかった。それもそのはず、これはひげ皿としては、ものの用にもたちがたいしろものだから。
だが、手にとってみると、製作年代はやはり江戸中期はバッチリあった。ひげ皿のサンプルという説もあるが、はたして何に使用したものか。大珍品ではある。 」
と書いてあることを知っていたからです。
また、上掲書の17ページにはカラーの写真も載っていて、それも見ていたからでもあります。
上の写真の下側の2枚がミニ髭皿
しかし、手に入れた当座は、「やった~! 大珍品を手に入れた!」と喜んだものですが、だんだんと不安になってきました(~_~;)
だいたいにおいて、大珍品が、そう簡単に手に入るわけがないですものね(><) それに、保存状態が良すぎて、それほど時代を感じなくなってきたんです(><) 上掲書にあるような、「手にとってみると、製作年代はやはり江戸中期はバッチリあった」という感じがしないんです(><)
それで、だんだんと、「これは、後世の写しなのではないだろうか、、、」と思うようになってきたわけです(~_~;)
それからは、このミニ髭皿は、後世の写しであろうと思うようになっていたわけですが、その後、平成12年(2000年)に発行された「日蘭交流400周年記念・佐賀県立九州陶磁文化館開館20周年記念 古伊万里の道」(佐賀県立九州陶磁文化館監修)を見て、ビックリしました。
上掲書の94ページに、このミニ髭皿と同じようなものが掲載されていたからです。
表面(上掲書の94ページから転載)
181 色絵花文髭皿(ミニチュア)
有田 1700~40年代
口径10.8 高さ3.3 高台径4.6
源右衛門窯 古伊万里資料館
裏面(上掲書の94ページから転載)
上掲書によりますと、ミニ髭皿の用途はドールハウス用のものだったんですね。
上に掲載されているミニ髭皿は保存状態が悪いですが、ドールハウス用だったとすれば、実用になどされませんから、保存状態が良く、最近作られたように見えてもおかしくないものがありうるわけですよね。
また、ドールハウス用だったわけですので、結構な数は存在したわけですから、大珍品とまでは言えないわけですよね。
そのように考えるようになり、やはり、このミニ髭皿は、江戸中期はあると思うようになった次第です(^-^*)
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追記 (令和3年3月1日)
このミニ髭皿を紹介したのち、或る方から、「ミニ髭皿がドールハウス用のものだったということですが、具体的には、ドールハウスではどのように使われていたのでしょうか?」とのコメントが寄せられました。
それで、次に、参考までに、上掲書「日蘭交流400周年記念・佐賀県立九州陶磁文化館開館20周年記念 古伊万里の道」(佐賀県立九州陶磁文化館監修 平成12年(2000年)発行)から、ドールハウスでの使用例を2例紹介したいと思います。
<ドールハウスでの使用例:その1>(上掲書P.152から転載)
髭皿をかけた場面を再現している例
ペトロネア デュノワ夫人のドールハウス 1676年頃
アムステルダム国立博物館 『17世紀のドールハウス』図録1994年より転載
<ドールハウスでの使用例:その2>(上掲書P.152から転載)
髭皿は、髭を剃るために使用する以外に、瀉血療法のために使用したともみなされている。それを示しているのか、患者を処置する様子をあらわしたドールハウスに、従者が髭皿を持っている場面を再現している例
ドールハウス 所蔵不明
写真提供:源右衛門窯