今回は、「染付 芙蓉手 岩草花虫文 輪花皿」の紹介です。
表面
表面中央部分の拡大
岩の上に虫(バッタ)が止まっています。
この文様が、この手の皿の特徴です。
口縁の一部の拡大
成形時のまだ土が軟らかい時点で、口縁に何か硬い物を押しつけ、あたかも口縁が
「輪花形」であるかのように工作しています。口縁の染付が、所々濃く
なっているのは、傷ではありません(笑)。
こうなると、「輪花形」というものが形骸化しています(笑)。
裏面
この「芙蓉手皿」というものは、江戸前期に盛んにヨーロッパに向けて輸出されました。
「芙蓉手皿」には、「宝文」や「花鳥花卉文」、或いは「花盆文」や「草花文」、そしてこの「岩草花虫文」など、いろいろな文様のものがありますが、この「岩草花虫文」が一番有名なものかもしれません(^-^*) それは、皿の中央に「バッタ」が描いてあるからかもしれません、、、(笑)。
「芙蓉手皿」は、「柴田コレクション」にも相当数が掲載されていますが、その内の「岩草花虫文」が描かれたものを次に2点紹介いたします。
柴田コレクション総目録から転載
柴田コレクション総目録から転載
なお、「芙蓉手皿」の裏面は、無文の白地のものや、上に転載しました「柴田コレクション総目録」の図1262にあるような簡素なものが圧倒的に多いようです。
しかし、中には、上に転載しました「柴田コレクション総目録」の図1582にあるようなやや緻密に唐草繋ぎ文を描いたものもあるようです。この「染付 芙蓉手 岩草花虫文 輪花皿」もそれに近いと言えそうです。
以上のことから、この「染付 芙蓉手 岩草花虫文 輪花皿」は、表面は「柴田コレクション総目録」の図1262に近く、裏面は「柴田コレクション総目録」の図1582に近いことが分かります。
ところで、この「染付 芙蓉手 岩草花虫文 輪花皿」の製作年代についてですが、私は、これは、「柴田コレクション総目録」の図1262や図1582のものよりは新しいのではないかと思っています。その理由は、次のとおりです。
「芙蓉手皿」は、江戸前期だけに作られたわけではなく、その後も作り続けられています。江戸前期に作られた「芙蓉手皿」は、いかにも中国の萬暦様式写という風情ですが、これはかなり和様化が進んでいるように思えるからです。
この「染付 芙蓉手 岩草花虫文 輪花皿」の裏面文様はかなり和風ですし、また、口縁が実際には「輪花形」になっていないのに、あたかも「輪花形」であるかのような工作を施し、「輪花形」の形骸だけを残しているからです。「芙蓉手皿」といいいますと、すぐに「輪花皿」をイメージしますので、それを、形骸だけでも残そうと思ったからだろうと思います。その点から考えても、後世になって、古い「芙蓉手皿」を手本にし、それを写したと考えられるからです。
生 産 地 : 肥前・有田
製作年代: 江戸時代中期
サ イ ズ : 口径;20.7cm 高さ;3.6cm 底径;11.8cm