Dr.K の日記

日々の出来事を中心に、時々、好きな古伊万里について語ります。

染付 蛸唐草文 小皿

2021年10月03日 14時10分41秒 | 古伊万里

 今回は、「染付 蛸唐草文 小皿」の紹介です。

 

 

          左:小皿Aの表面           右:小皿Bの表面

 

 

          左:小皿Aの裏面           右:小皿Bの裏面

 

 

小皿Aの表面(口径:15.1cm)

 

 

小皿Aの裏面(底径:8.9cm)

高台内銘:成化年製

 

 

小皿Bの表面(口径:14.9cm)

蛸唐草文の一部に滲みがあります(上部)。

 

 

小皿Bの裏面(底径:8.9cm)

高台内銘:富貴長春

 

 

生 産 地 : 肥前・有田

製作年代: 江戸時代中期 → 明治時代以降 → 江戸時代中期

サ イ ズ : 小皿A・・・口径;15.1cm 底径;8.9cm

      小皿B・・・口径;14.9cm 底径;8.8cm

 

 

 なお、この「染付 蛸唐草文 小皿」につきましたは、かつての拙ホームページの「古伊万里への誘い」の中で既に紹介しているところですので、次に、その際の紹介文を再度掲載することをもちまして、この「染付 蛸唐草文 小皿」の紹介とさせていただきます。

 

 

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         <古伊万里への誘い>

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*古伊万里ギャラリー196  伊万里染付蛸唐草文小皿        (平成26年8月1日登載) 

 

 

        小皿Aの表面  小皿Bの表面       小皿Aの裏面  小皿Bの裏面

 

 小皿Aと小皿Bは、ほとんど同じである。 

 違いと言えば、小皿Aの口縁内側の圏線が二重で、銘が「成化年製」であるのに対し、小皿Bの口縁内側の圏線は一重で、銘は「富貴長春」であることくらいである。

 したがっ小皿Aと小皿Bは、ほとんど同じ時代に作られたものと思われる。

 ところで、蛸唐草は、その文様の描き方で作られた時代が判るのである。

 この小皿Aや小皿Bのように、輪郭線で蛸唐草文を描き、その中をダミ筆で塗り埋めてゆく、つまり、塗り絵のように、輪郭線で描かれた中を染めてゆくような作風のものは、蛸唐草の中では古い時代に作られたものである。

 それが、だんだんと時代が下がるにしたがい、簡略化されてくる。

 それは、まず、輪郭線は描かないが、比較的に蛸足は太く丁寧に描き、全体としても、器面いっぱいに隙間なく描かれていて、まだ丁寧さを感じさせるように描かれるようになる。 

 そして、幕末近くなると、つけたて風に蛸足を描き、蛸足の吸盤のようなものは、点、点で表現され、、全体として雑で、器面にもかなり隙間が見られる。

 まっ、要するに、古い時代のものは、丁寧に作られているということである。
 それが、時代が下がるにしたがい、大量生産し、コストを下げるために、雑に作られるようになるというわけである。

 

   江戸時代中期   小皿A:口径:15.1cm  高台径:8.9cm 

              小皿B: 口径:14.9cm   高台径:8.8cm 

 

 

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*古伊万里バカ日誌125  古伊万里との対話(蛸唐草文の小皿)(平成26年8月1日登載)(平成26年7月筆) 

 

登場人物
  主     人  : (田舎の平凡なサラリーマン)
  蛸唐草A  : (伊万里染付蛸唐草文小皿) (銘:成化年製)
  蛸唐草B  : (伊万里染付蛸唐草文小皿) (銘:富貴長春)

 

      蛸唐草Aの表面  蛸唐草Bの表面      蛸唐草Aの裏面  蛸唐草Bの裏面

 

 

・・・・・プロローグ・・・・・

 連日、猛暑が続いている。テレビでは、「日本の各地で、本日も日中の気温が体温を越えました!」というニュースを流している。
 ただでさえ暑いのに、よけいに暑さを感じさせる。主人は、いまにも目を回しそうである。
 それでも、ステテコ一丁になって、なんとか暑さで目が回りそうになるのを凌いでいたが、「あっ、そうだ! 目が回るといえば、我が家にも、文様がぐるぐると描かれていて、見ていると目の回りそうなのがあったな。逆療法と言うくらいだから、それと対話をしていると、むしろ、暑さを忘れるかな・・・・・」との浅はかな考えを抱いたようで、さっそく、くだんの、ぐるぐるとした文様が描かれた皿を押入れから引っ張り出してきては対話を始めた。

 

 


 

 

主人: 毎日暑いね! 暑さで目を回しそうになったので、見ているだけでぐるぐると目を回しそうになる蛸唐草のお前達とニラメッコすれば、逆に目が覚めるのではないかと思い、押入れから出てもらった。

蛸唐草A・B: ホント、暑いですね! それで、どうですか? 私達とニラメッコして、益々目を回しましたか、それとも目が覚めましたか? 

主人: うん。「クソ! 目なんか回すもんか!」と気合を入れたら、少しは目が覚めてきたよ(笑)。 人間、気合だね。「心頭滅却すれば、火もまた涼し」と言うものね。

蛸唐草A・B: でも、あまりムキになって気合を入れ、カラ元気を出したり、痩せ我慢をしたりしては体に悪いですよ。熱中症などにならないように気を付けてください。

主人: わかった。わかった。気を付けるよ。
 ところで「蛸唐草A」、お前を見つけたのも、5年ほど前の暑い盛りの骨董市でのことだった。蛸唐草というものには芸術性のカケラもないと思っている私としては、そんな蛸唐草のものを買うということは珍しいことだったがね・・・・・。

蛸唐草A・B: 「蛸唐草には芸術性のカケラもない」というのは言い過ぎでしょう(プンプン)。現に、古伊万里の中では人気も高く、値段も高いんではないですか! 皆さん蛸唐草に芸術性を認めている証拠ですよ!

主人: それはどうかな。まっ、人は好き好きだからね。蛸唐草が好きな人もいるだろうし、蛸唐草に芸術性を認める人もいるだろうよ。
 確かに、ひところは蛸唐草は人気が高かった。蛸唐草がブームだった。その頃、お前のようなものが5枚組だったら相当な値段だった。でもね、ブームが去ったら、随分と安くなってしまった。やはり、実力以上の値が付けられていたんだと思う。
 そんなこともあって、私としては、内容もないのに値段ばかり高い蛸唐草には嫌気がさして食指が動かず、めったに買わなかったんだ。

蛸唐草A・B: どうして、以前は、蛸唐草の人気が高かったんですか?

主人: そうだね。それは、私が思うには、蛸唐草文の描き方の違いで、作られた時代の判定がし易いからだろうね。骨董初心者でも時代判定がし易かったからだと思う。
 「骨董は騙される!」という先入観が強いからね。それが、蛸唐草文の描き方の特徴を少し学べば簡単に時代判定が出来、安心して憧れの本物の古伊万里を手に入れることが出来るので人気が出たんだと思う。人気が出れば、実力とは関係なく、需要と供給の関係でどんどん値段は上がっていったわけだよ。
 ところが、かなり前から、古伊万里ブームも去り、それに伴い蛸唐草の人気も落ち、蛸唐草はどんどんと値を下げたんだ。

蛸唐草A・B: かなり安くなったんですか。

主人: 安くなったね。そして、市場への出回り方も、5枚揃いとかではなく、1枚、1枚バラで売られるようになってきたね。5枚揃いとなると、どうしても値が張るようになってしまい、それでなくとも高過ぎて売れなくなっていたから、苦肉の策として、バラで売るようにしたんだろうね。1枚、1枚なら、それほど値も張らなくなるからね。

蛸唐草A・B: ご主人は、やはり、1枚、1枚バラで買われたんですね。

主人: そうだ。先程も言ったが、まず、5年程前に骨董市で「蛸唐草A」を見つけたんだ。次いで、それから2年程たってから、「蛸唐草B」を見つけたんだよ。その時は、「蛸唐草A」よりももっと安くなっていたな~。
 蛸唐草は、ずいぶんと安くなってしまったな~、地に落ちたもんだな~と思ったよ。まっ、それが実力というものだろうけれど・・・・・。

蛸唐草A・B: ・・・・・(涙)。

主人: でも、この辺が底値かな。いくらなんでも、これ以上は下がらないだろう。

 

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追記 (令和3年10月4日)

 これを紹介してから、「うん、なかなか良い皿だな~。蛸唐草もマンザラ捨てたものではないな~」と一人悦に入って眺めていましたら、「ん?」と気になる所を発見しました(~_~;)

 それは、蛸唐草文様の一部に、輪郭線が途切れたり、ボヤッとした所があることに気付いたからです。

 例えば、小皿Aにつきましては、上の「小皿Aの表面」の画像の中心からやや左側の輪郭線の一部に途切れのあることを発見したんです(上の「小皿Aの表面」の画像からでは、分かりませんが)。

 

輪郭線の一部が途切れている所

 

 また、今度は、上の「小皿Aの表面」の画像の中心からやや右側の輪郭線の一部にも途切れのあることを発見したんです(やはり、上の「小皿Aの表面」の画像からでは、分かりませんが)。

 

輪郭線の一部が途切れている所

 

 小皿Bにつきましては、その中心部に、蛸唐草文様の一部にボヤッとした所があることに気付きました。

 使用擦れで染付文様が薄れたのではなく、最初から薄れてボヤッと描かれていたんですね。

 

蛸唐草文様の一部がボヤッとしている所

 

 そこで、これらは、どうして、この様になっているのかと考えました。手描きでは、このようなことにはならないですよね。

 考えた結果は、それは、これらの皿の文様が、手描きではなく、プリントだったのではないかとの思いに至りました。

 しかし、裏文様は手描きのようですし、また、ボデーも最近作られたものではなさそうですので、最近のプリント物とは思えないところがあります。

 それで、これは、明治以降に銅版転写で作られたものであろうと結論付けました。

 もっとも、それも、未熟な私の想像にすぎないかもしれませんが、そのようなことから、この「染付 蛸唐草文 小皿」の製作年代を「明治時代以降」に訂正いたします(~_~;)

 

 

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追記(その2)(令和3年12月24日)

 上記しましたように、令和3年10月4日に追記したところですが、その後も、何故か、腑に落ちないところがあり、インターネットでの古伊万里の紹介記事などを見ている際も、この小皿の文様の描き方が気になり、そのことが頭から離れないでいました。

 その結果、この小皿の文様がプリントで描かれたとしても、それは、銅版転写ではなく、型紙摺で行われたものではないかと思うようになったわけです。

 銅版転写ならば、時代は明治以降ということになりますが、この小皿のボデーは、どう見ても江戸時代はありそうだからです。型紙摺ならば、江戸時代には行われていたわけですから、、、。

 私は、この小皿の文様は手描きで行われていたものとばかりに思い込んでいたものですから、それが手描きではなくプリントであると気付いた時は、これまた、「精密なプリント=銅版転写」と思い込んでしまったわけです。

 しかし、型紙摺でも、かなり精密なプリントが出来るようですので、やはり、この小皿の製作年代は江戸中期であろうと思い直したところです。従いまして、この小皿の製作年代を、再度、「江戸時代中期」に変更いたします。