ぽつお番長の映画日記

映画ライター中村千晶(ぽつお)のショートコラム

バッド・ルーテナント

2010-01-29 02:17:38 | は行
やだ!これおもしろかったです!


「バッド・ルーテナント」80点★★★


だって予告編を見たときは
「すっげつまんなさそー」と思ったですよ。


闇社会とつながってる
ドラッグ中毒のワル刑事が
何かの出来事で改心し――みたいな

“いかにも”な展開の警察腐敗ドンパチ映画・・・
という宣伝だったんだもの。


しかーし!全然違う!

もっとシュールだし
宗教的訓辞が散りばめられていて
奥が深い!

あやうく見逃すとこでしたよー。
宣伝の罪!プンプン


舞台はハリケーン・カトリーナに襲われた直後の
ニューオリンズ。

テレンス刑事(ニコラス・ケイジ)は
水没する街で
逃げ遅れた囚人を助けたものの
そのことで傷を負ってしまう。

彼は勇気を称えられ、表彰されもするが
痛みを紛らわせるために
ドラッグに溺れていく。

そんな彼が
ある惨殺事件を担当することになり・・・という話。


一見、坂を転がり落ちる男のような話ですが

ここに描かれているのは
“墜ちていく正義”というような
単純なものではないんですね。

そもそもが
悪人を助けて自分が傷を負う
という業から始まっていたり

ヘビやは虫類
象徴的に使われてたりと

番長、キリスト教には詳しくないけど
存分に宗教的な示唆があるのでしょう。


それにこの刑事
やってることは無茶苦茶なんですが
彼を突き動かしているものは
実は金や欲じゃなくて、安息だったりするわけで。


正義、善悪、許容と拒絶、良心、モラルといった
人の心のあいまいな境界を

ドイツの鬼才・ヘルツォーク監督は
うすーい膜がかかったように
ねっと~りとして、かつユーモラスでシュール
独特の技で描いていくんです。


ニコラス・ケイジは苦手だけど
このヤバさは
彼じゃなかったら
手に負えなかっただろうなあ。

あ「ノーカントリー」の
ハビエル・バルデムって手もありか・・・


★2/27から恵比寿ガーデンシネマほか全国で公開。

「バッド・ルーテナント」公式サイト
コメント (6)
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