ぽつお番長の映画日記

映画ライター中村千晶(ぽつお)のショートコラム

一度も撃ってません

2020-04-21 23:18:51 | あ行

阪本順治監督。しびれた!(笑)

 

「一度も撃ってません」79点★★★★

 

 

***********************************

 

夜の街で、怪しく目を光らせる

トレンチコートに中折れ帽の男(石橋蓮司)。

 

紫煙たなびく地下のバーで

旧友(岸部一徳、桃井かおり)らと夜な夜な酒を交わし、情報交換をする彼は

 

御年74歳。伝説のヒットマン――だ。

が、実は「一度も撃ってない」。

 

いったい、彼の正体は――?!

 

***********************************

 

「半世界」(19年)も素晴らしかった

阪本順治監督の新作。

 

「大鹿村騒動記」(11年)を彷彿とさせる

おもしろさでした。

 

期待以上にムード満点のハードボイルドで

大人たちの宵&遊び、といった洒脱さがたまらない。

 

 

伝説のヒットマンなのに、

実は「一度も撃ってません」な主人公。

そのシチュエーションだけで、笑いの導火線――!って感じですがw

主人公・石橋蓮司氏が

想像を超えて、おかしいんです(笑)

 

ヒットマンといいつつ、その正体は

まあ一介のミステリー作家なわけですが

 

まず、彼のなんとも几帳面な生活感が、最高w

 

妻が出かけたあとに、洗濯物を干すとき、

下着のまわりをしっかりタオルで囲う、その細かさにしびれた!(笑)

(そして妻役・大楠道代さんがものすごくよい!

 

さらに次々と登場する達者なキャストたちの妙。

 

学生運動時代からの友人役、岸部一徳氏に桃井かおり氏。

実生活でも同時代を生きた「同志」であろう彼らが

煙が薫るバーで醸し出す

あうんの呼吸と、転がる会話。

終わらない「宵」の感じが、本当に楽しげでうらやましい。

 

 

悠々と愉しむオトナたちの一方で、

いまいち影の薄い、少し下の世代の編集者(佐藤浩市)の

存在の巧みさ。

 

そして、さらに下の世代で、酒もタバコもNO!で

「働き方改革」世代の編集者(寛一郎=佐藤浩市さんの息子さんですよ!)が

「現代の狭さ」を描写する。

 

笑いのいっぽうで、ハードボイルド部分を支えるのは

妻夫木聡、江口洋介、柄本明に柄本佑、

渋川清彦、豊川悦司――の美味しすぎる布陣。

 

と、実に楽しい映画なのです。

 

 

なにより石橋氏と、その仲間たちを観ながら思うのは、

この歳にしてやっぱり

「こんなオトナになりたい!」ってこと。

 

アラ70の彼らは、決して

「昔はよかった・・・・・・」なんて言わない。

いまだって、いつだって「良き時代を生きりゃいいじゃん」と

言ってるんだと思うんです。

 

本当にステキです。

 

今週発売の「週刊朝日」で桃井かおりさんにインタビューさせていただいてます。

お目にかかるのは、ほぼ8年ぶり!

wikiにもある

桃井かおりのデビュー作は、あの田原総一朗が監督した”. 週刊朝日 2012年10月5日号 (2012年10月5日)

の取材のときで、

実に3時間超の、忘れない取材でした。

当時の記事も憶えていてくださって嬉しかったなぁ・・・

 

そして驚くほどに

変わらない、いやますます美しく、愉しく、優しくなった桃井さん

今回もたくさんお話くださって、感激です!

ぜひ映画と併せてご一読くださいませ~。

 

★近日公開。

「一度も撃ってません」公式サイト

※公開情報は公式サイト、劇場情報をチェックしてください。

よきタイミングでご鑑賞いただけることを願っています。


コメント    この記事についてブログを書く
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする
« ポルトガル、夏の終わり | トップ | はちどり »
最新の画像もっと見る

コメントを投稿

あ行」カテゴリの最新記事