生を、振り絞る。
「生きちゃった」72点★★★★
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2019年、東京近郊の工業地帯。
山田厚久(中野太賀)と奈津美(大島優子)、武田(若葉竜也)は
幼なじみ。
が、青春の時代を過ぎ、それぞれもう、30歳。
そんななかで
厚久と奈津美は結婚し、5歳の、娘をもうけていた。
狭いアパート暮らしでも、一見、幸せそうにみえた家族。
そんなある日、厚久が仕事先から早退すると
奈津美が、見知らぬ男と肌を重ねていた――。
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「川の底からこんにちは」(10年)、最近では
「夜空はいつでも最高密度の青色だ」(17年)の石井裕也監督が
幼なじみの男女の「それから」を描いた作品。
自主映画っぽいざりざりした手触り。登場人物たちの振り絞るような叫び。
むき出し!な感覚に、原点回帰な魂と意欲を
ガツンと感じました。
なにより
大島優子氏演じる
人生諦めたくないのに、諦めざるを得ないような
30歳の主婦・奈津美がいい。
幼なじみと結婚し、かわいい娘もいるのに
どこか満ち足りない。
結局は離婚しても、一人では立てず、
だめんずに依存して、デリヘル嬢にまでなっていく。
厚久との暮らしが破綻した根底には、ある理由があるんですが
そのフクザツな心境が
ことさらに描かれるわけでもなく
でも、ちょっとしたシーンに生々しいすごみがあるんですよね。
自分はパートで疲れて帰ってきて
これから娘を迎えに行かなきゃいけなくて、
「ああ、忙しい」というときに
家で寝っ転がってだらだらするだめんずをみたときの
あの、なんともいえない「あきらめ」の感じ。
「はあ~」というため息を押し殺した背中に
全女性の共感が集まると思う(苦笑)。
髪バサバサ、生活にやつれまくったリアルもすごいし。
ワシ、大島さん
「紙の月」(14年)はもちろん
でも好きなんですよね。
フツーさと、あきらめ感、ちょっと投げやりな感じや、秘めた狂気を、
いまの時代に暮らす女性として
自然に表現できる女優さんだと思う。
おなじみ「AERA」10/5発売号で
石井裕也監督×大島優子さんの対談記事を書かせていただいております。
撮影に挑んだ大島さんの気持ち、それを受け取った石井監督の思い――
ぜひ、映画と合わせてご一読くださいませ!
★10/3(土)からユーロスペースで公開。
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