「いま、見てしあわせ(な気分)になれる映画ないすか」と聞かれて
意外に考え込んでしまった。
これも違うけど
でも、光はある。
「光のほうへ」70点★★★☆
デンマーク、コペンハーゲン。
アルコール依存性の母を持った
10代の兄弟は
可愛がっていた幼い弟を亡くしてしまう。
大人になった彼らは
それぞれ別の道を歩んでいたが、
その傷をどこかに残しているのか、
また育った環境と習慣からか、
母と似たような道を辿ってしまう。
負の連鎖から
逃れる道はないのか……というお話。
原題「SUBMARINO」とは
「水の中に頭を浸けて溺れさせる拷問」の名だそう。
その名のとおり
陰鬱とした街と空の色も
出口のない閉塞と
すさんだ社会状況を映し出してる。
現代を描く映画には
最近、この手の話が多くて
(赤ん坊の死、アル中やヤク中の親、子どもへの負の連鎖……)
だいたい展開が読めてしまうんですが、
やはりドグマ95の提唱者、
トマス・ヴィンターベア監督だけあって
映る惨めさや絶望に、ウソがない。
あまりに希望ナシの展開に
うんざりしかかるけど、
どん底に差し込む、光はあると感じました。
やはりドグマ95系譜で
アカデミー賞とGG賞外国語賞をダブルゲットした
スサンネ・ビア監督の
「未来を生きる君たちへ」(8月公開)より
国内で評価が高かったそうですが、
この国のリアリズムへの向き合いかたが
わかる気がして、おもしろい。
いずれにせよデンマーク映画界は
レベルの高い競争だなと思います。
それに
主人公の家の壁に
ニック・ケイヴのポスターを発見。
音楽がかっこよかったです。
しあわせな気分になれるウソは
どこにもないけど
もがく人はあなただけじゃないんだよと、
身をさらけだして、この映画は言っている。
光を求めて
浮上しようともがくばかりでなく、
いっそ、もっと深く
底まで潜ってみるのも手かもしれません。
★6/4からシネスイッチ銀座ほか全国順次公開。
「光のほうへ」公式サイト
※コメント投稿者のブログIDはブログ作成者のみに通知されます