クリント・イーストウッド監督は、まだまだ走る!
「リチャード・ジュエル」71点★★★★
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1996年。オリンピック開催に沸く米・アトランタ。
リチャード・ジュエル(ポール・ウォルター・ハウザー)は
警官になることを目指してきた純真な若者。
だが、強すぎる正義感はしばしば周囲との軋轢も起こし、
いまはオリンピックの野外フェス会場の警備員として働いていた。
その夜、リチャードは会場で
怪しいリュックサックを見つける。
「爆発物かもしれない!」と率先して市民を避難させた彼は
結果的に多くの人々の命を救い
リチャードはヒーローとして人気者になる。
だが、そんな彼があろうことか
「容疑者」となってしまい――?!
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クリント・イーストウッド監督が
1996年に起きたアトランタ爆破事件を描いた作品です。
など、割と最近ニュースになった実話を基にすることも多い監督。
今回は、1996年、アトランタ・オリンピックの最中に起きた
爆発テロ事件が題材に。
テロを最小限に食い止め、一躍ヒーローとなった純真な青年が
一転、犯人扱いされ
実はいまもその汚名が完全に注げていない・・・・・・という事実を知り
「真実を伝えなければ!」と筆を、いやカメラを取ったそうです。
イーストウッド監督にしては
若干、光りきれていないところも残している感じなんですが
実際の出来事が教える教訓を、とにかく「誠実」に伝えていて
いま、大事な作品だと思いました。
というのは
純真で正義感の強いリチャードが、犯人にされていく様が
あまりに昨今の風潮、たとえばSNSでの炎上にそっくりで
誰かを「血祭り」にし、生贄にしようとするメディアや大衆の恐ろしさが
20年以上たった現在、より加速している!ってことを
いやでも感じずにいられないから。
無理やり犯罪のストーリーを考え、リチャードをハメようとするFBIにイラだちつつ、
同時に、正義感や忠誠心が裏目に出そうな
リチャードの言動や行動にもハラハラ。
そんな彼を助けることになる弁護士ワトソン役の
サム・ロックウェルが実によい!
そう、「スリー・ビルボード」(18年)のあのいや~な巡査役で
アカデミー助演男優賞を獲ったあの人です。いや~ナイス。
いい人か悪い人かわかりにくい「あや(綾)」の加減といい
ちょっとスティーヴ・カレルを思わせるよね。
さらにリチャードの母役
キャシー・ベイツもさすがの存在感。
と、脇を固めるキャストも手堅く
リチャードの運命はいかに?!と魅せるんですが
色気を武器にネタをとる女性記者など
もうひと押し、ふた押し、書き込んでほしいキャラやエピソードがあったかな、と。
でも、なによりこの作品は
リチャード・ジュエル本人に、捧げられるべきもので
その意義は十二分に果たしてはいるなあと。
89歳のレジェンド、
まだまだ走り続けてほしい!
★1/17(金)から全国で公開。
あまりの人の良さに鑑賞中思わず、
「それダメ!」
と声が出てしまいました(笑)
社会的にうまく立ち回れない人が
窮地に陥る様子って
最大限にハラハラしますよね・・・・・・
一人でも多くの人が、この映画で
事件の誤った記憶を
上書きしてくれることを願います。