つらいシーンなど一切なく、しみじみとやさしい。
いま、いちばん欲しかった映画かもしれない。
「ブータン 山の教室」75点★★★★
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現代のブータンの都市で暮らす
青年ウゲン(シェラップ・ドルジ)。
オーストラリアに移住し、歌手になることを夢見る彼は
一応、教職免許を持っているものの
先生としてはやる気ゼロ。
だが、そんな彼が上司に呼び出され
辺境にある村・ルナナの学校に赴任せよ、と命令される。
そこは標高4800メートル(!)
トレッキングで片道8日かかる
電気も車もない村だった。
到着早々「帰る!」と涙目になるウゲン。
だが、9人しかいない子どもたちは
先生の到着を待ち望んでいた――。
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ブータンの美しい自然と、純朴な子どもたち――
十二分に「いい映画」だと予測できると思います。
でも、その上をくる!ので
ぜひ、試していただきたい!
自然も生き物たちも大切に描かれて、
つらいシーンなど一切ない。
いろいろとつらい日々をやさしく癒す
いまいちばん欲しかった映画かも、と思いました。
主人公は都市生活を謳歌する若者ウゲン。
オーストラリアで歌手になることを夢見ていて
教職につくもやる気なし
そんな彼が
僻地の学校に赴任することになる。
そこは標高4800メートル(ちなみに富士山は3776メートルです・・・・・・マジか!苦笑)
電気もなければ、スマホの電波も届かない。
ウゲンは「無理! 帰らせてください!」と涙目になりつつも
だんだんとこの天空の村と、子どもたちに溶け込んでいくんですね。
このシチュエーションは
デンマークの青年がグリーンランドの僻地学校に赴任する
「北の果ての小さな村で」にすごく似ている。
「北の果て~」も映画も半ばドキュメンタリーのようで、とてもよいのですが
本作は
言葉も同じ国でこれほどのカルチャーショックがあるのか!と
ウゲンの戸惑いを、我々もそのままなぞるようで
おもしろいんです。
登場する村人や子どもたちは実際にルナナの住民たちで
主人公ウゲンはミュージシャン。
ウゲンをサポートする村人役の青年の本職は土木作業員だったりと
全員、映画は初体験。
そこにもリアリティがある。
そんななか、だんだんと村になじみ、
村の美しい娘や、子どもたちと心を通わせていくウゲン。
でも
厳しい冬が来れば学校は閉まり、ウゲンは街に戻ることに決まっている。
果たして、ウゲンの選択は?
――ここでのありきたりなエンディングでない、このラストも実にうまいんですわ。
天空の村ルナナは、たしかにいろいろ不便だけど
自然とともに生きるその暮らしは
どうみても現代の理想郷にみえる。
でも、それはあくまでも
よそ者である我々の視線で。
ホントにそこは「幸せの場所」なのだろうか?
その場所しか知らないことは果たして、幸せなのだろうか――?っていうのも
この映画の深い問いかけなのですね。
実際、監督であるブータン出身のパオ・チョニン・ドルジ自身も
世界的な写真家として活躍しているし、
ウゲン役のシェラップ・ドルジも
オーストラリア移住を考えたことがあるそうな。
ワシも思うんです。
若いうちは、広い世界をみたほうが、いい。
その旅の果てに、還る場所があることが、どれだけ尊いことか、は
その旅を経て、初めてわかるものなんだと。
さまざまを思いつつ
特に若い人たちに、このラストの先を、それぞれに感じ取ってほしいなあと
おババ=ワシは思ったりするのでした。
★4/3(土)から岩波ホールほか全国順次公開。
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