25時間目  日々を哲学する

著者 本木周一 小説、詩、音楽 映画、ドラマ、経済、日々を哲学する

起業ってどういうことだ?

2018年02月23日 | 社会・経済・政治
政府が「いけいけドン」で音頭をとって第四次産業革命(純粋機械化経済)に導こうと予算500億円つけるらしい。ぼくに言わせればたかだか500万円かよ、と思うが、予算をつけるよりも制度の改革がなければ第三次産業革命と後にいわれた1995年あたりと同じ失敗を繰り返すだろう。日本は世界的な汎用性をもつプラットフォーム事業を立ちあげることができなかった。プラットフォームというのは世界的に共通して使用できるインターネット上の土台である。ソフトではマイクロソフト社、アップル社、ハードではインテルなどがあり、グーグル、フェイスブック、アマゾンもほぼ汎用性があるため、独自のプラットフォームをもつと言えるとだろう。ここから生じることは大きく、多種多様にわたった。スマホやタブレットができた。それを使うアプリが発達した。パーソナルコンピュータが小型化してして、大容量化していき、スマホと同期するようになり、あらゆる産業の分野でパソコンは欠かせられないものとなった。これを牽引したのはアメリカである。
 ぼくは1995年の革命のさ中に事業をしていた。英語学習がやりやすくなる教材をCDR化し、各出版社の英語教材のテープを自動的にチャプター、トラック、インデックス、サブインデックスと分けていくソフトの開発に挑戦したのだった。これができれば、同じ分は何度でも繰り返して聴け、一文一文、前後に勧められ、通しでも聞け、必要あれば一文の訳や解説、スローで聴ける、そんな夢のような教材に世界の語学教材を変えたかったのである。これはまた不振であえぐ音楽CD業界にも光明のはずだった。CDは封がされているため、知っているものしか選べず、試聴盤も限られている。大方は「これはよさそうだ」という勘で購入するのである。そんなばかなことがあるか、ぼくらが開発した技術を使えば、各店は聴けるCDカタログができるはずだと思った。
 世界各国にこの技術を説いてまわった。まだテープが主流だった。
 ぼくらのソフトか完成し、ハードウエアはソニーだった。ソニーのハードに欠陥があることがわかった。ここが大きな分岐点だった。ぼくらの資力はもたなかった。ソニーは逃げてしまった。

 政府は「創造的技術に関する促進法」を作り、新技術を認定した。政府が音頭をとって1995年前にベンチャー企業を興せと旗を振ったのである。証券会社はやる気一杯だったが銀行はそれどころではなかった。金融危機と金融の自由化が起きていたのだ。銀行などは政府の方針に渋々付き合ったのだった。
 一度頓挫すると二度目の支援策はなかった。債権もさっさと債権回収会社に売られた。そのスピードは驚くばかりだった。当時の多くの起業家は頓挫した。たとえば三重県内で今のドローンと同じようなものを作った会社も頓挫した。

 銀行は相変わらず、融資には「不動産担保」「連帯保証人」を求める。事業と関係のないものに連帯保証を求めなければならない。妻とか友人とかお金持ちの知り合いだとかである。
 債務ができなくなれば、すべてを整理した上で、「破産」となるのだが、破産に至るまでには「連帯保証人」にも迷惑をかけることになる。もしかして連帯保証人の人生を変えてしまうことになる。

 それを避けるには破産を逃れるしかない。ぼくは破産しない道を選んだ。借金について交渉して安く買い取り、無視するものは無視し、払うべきところには払う、という道は茨の道で艱難辛苦であった。
 当然ブラックリストに載る。カードは発行してもらえない、ETCは使えない。あらゆるローンは使えない。
 日本で失敗するということはそういうことなのだ。今、平気で政府のIT起業を推進する政治家も、学者も何もわかっていない。調子こいて、やれやれ、と言っている。でないと次の産業革命に乗っていけない、と主張する。
 アメリカは二度、三度と失敗してもまた出直すことができる。日本はほぼできない。ベネッセの先代のように出直して成功した人もいるが、それはまだ経済成長をしていた頃だからできたのだ。
 起業を呼び掛けるのであれば、担保、保証人、失敗しても次へと勧められる制度的環境が必要である。それが全くできていないのに、よくも「やれやれ」と言えるものだとぼくはあきれている。

 これは政治の政策である。第四次産業革命というわりに予算規模が小さく、相変わらず経済効果のない一時しにぎの公共事業にお金を使い、起業の環境を整えない。

 これでは結局小さなことしかできず、敗れる者は去り、また台頭する者が出て来て、また沈没する。
 ソニーもインターネットへの関心が幹部にあれば iphoneのようなものが作れたはずだ。日本のどの起業もプラットフォームを作れなかった。1995年以降経済は停滞した。ソニーもパナソニックもシャープも富士通やNECもリストラで凌いだ始末だ。輸出産業は政権の支援で維持しているという風だ。
 今度は AI、IoT、ナノテクノロジー、ロボット・・・。
 日本は相変わらずなのか、進むのか、ぼくは上の方から見ている。すると学者の一人が80歳になっても上場は可能です、とか言っている。こいつアホか、と思うのである。こういうのをお調子者というのである。責任持たない煽動家と言ってもよい。