ぼくは「やけ酒」「恨み酒」「愚痴酒」「悩み酒」をしない。よく映画でウィスキーをストレートでグイと飲む表情が実感できなかった。酒は美味しいから飲むものであり、その結果愉快になるのである。「悲しい酒」なんてものもない。「祝い酒」というのもないが、まあ、いわば淡々と気分良く酒を毎日飲んでいるのである。怒っても、イライラしてもしかたがない。酒を飲む前に忘れる。たぶんそうしているのだろうと思う。ちぇ、おもしろくねえや、とおもって盃を口にしたことはない。
で、酒の肴を見つけるのが楽しみである。鬼エビがあれば必ず手に入れる。柳カレイも同様。サバはノルウェーのサバが脂があって美味しい。
同じ明慶町の同じ通りで、徒歩30歩のところにある干物屋さんのAさんが朝の魚市場にいく途中で同じ魚業者の男が運転する車に跳ねられてこの4月から入院し、リハビリをしていた。ぼくはAさんの保険関係の手伝いをした。保険会社というにはぼくからすればずるいのである。なにも知識がなければ保険会社の言うがままになってしまう。「賠償」「慰謝料」の区別もおおかたの人は無縁に生きている。ましてや「逸夫利益」という言葉など人は知る機会もない。
Aさんはこの事故ショックと右膝の悪さで店を閉じ、廃業した。それではおさまらない親戚とご近所さん。冷蔵庫などは片付けてしまったが、この頃は時々、Aさんの家の前に、ショウワダイとかアジの開きやらが干してある。そこにはぼくの分もある。朝の市場にはいけないが知り合いがAさんらが食べる分くらいの魚を買ってくれるのだそうだ。また、その店の隣の家のMさんはAさんの事故の加害者の魚屋さんでアルバイトをしている。ここでは「からすみ」を作っている。この「からすみ」もまた旨く酒の肴としてのワン シーズンである。
もう尾鷲では「はまぐり」は中国産のものでしか手に入らなくなった。アサリ、チャンポコは健在である。深海物も水揚げされるようになり、「メヒカリ」も目にするようになった。
何を酒の肴にするか、などと考える。とても贅沢な時代のなかにいる。
で、酒の肴を見つけるのが楽しみである。鬼エビがあれば必ず手に入れる。柳カレイも同様。サバはノルウェーのサバが脂があって美味しい。
同じ明慶町の同じ通りで、徒歩30歩のところにある干物屋さんのAさんが朝の魚市場にいく途中で同じ魚業者の男が運転する車に跳ねられてこの4月から入院し、リハビリをしていた。ぼくはAさんの保険関係の手伝いをした。保険会社というにはぼくからすればずるいのである。なにも知識がなければ保険会社の言うがままになってしまう。「賠償」「慰謝料」の区別もおおかたの人は無縁に生きている。ましてや「逸夫利益」という言葉など人は知る機会もない。
Aさんはこの事故ショックと右膝の悪さで店を閉じ、廃業した。それではおさまらない親戚とご近所さん。冷蔵庫などは片付けてしまったが、この頃は時々、Aさんの家の前に、ショウワダイとかアジの開きやらが干してある。そこにはぼくの分もある。朝の市場にはいけないが知り合いがAさんらが食べる分くらいの魚を買ってくれるのだそうだ。また、その店の隣の家のMさんはAさんの事故の加害者の魚屋さんでアルバイトをしている。ここでは「からすみ」を作っている。この「からすみ」もまた旨く酒の肴としてのワン シーズンである。
もう尾鷲では「はまぐり」は中国産のものでしか手に入らなくなった。アサリ、チャンポコは健在である。深海物も水揚げされるようになり、「メヒカリ」も目にするようになった。
何を酒の肴にするか、などと考える。とても贅沢な時代のなかにいる。