自在コラム

⇒ 日常での観察や大学キャンパスでの見聞、環境や時事問題、メディアとネットの考察などを紹介する宇野文夫のコラム

★インバウンド客を誘う兼六園の冬景色

2019年12月10日 | ⇒トピック往来

  金沢の兼六園を今年訪れたインバウンド観光客数が11月末時点で44万6千人となり、去年1年間の42万8500人を超えて過去最多を更新したと地元メディアが伝えている(12月6日付・北國新聞)。記事によると、国・地域別では台湾が15万2千人と一番多く、次いで中国4万、香港3万5千、アメリカ2万9千、イタリア2万、オーストラリア1万9千と続く。日本人を含めた全体では260万7千なので、インバウンド観光客が占める割合は17%だ。

  この季節、兼六園は雪吊りが施されていて、名木「唐崎の松」はまるでパラソルでもつつけたかのよう光景だ=写真=。インバウンド観光客が盛んにインスタ映えを狙ってシャッターを切っている。中国語や英語が飛び交っているという感じだ。そして、茶室「時雨(しぐれ)亭」で抹茶を楽しむ外国人客も増えている。茶席の静寂、広がる庭園、洗練された作法、季節の和菓子など「完成された日本の文化」がそこにある。外国人客のお目当ての一つが、和装の女性からお辞儀をしてもらえること、だとか。これだけでも随分と感動もののようだ。日本人でも、この茶席に座ると大人の時間が流れるような感じがする。

  ところで、笑うに笑えない話を兼六園通の知人から聞いた。インバウンド観光客を引率しているガイド(日本人)が、「加賀百万石」のことを「Kaga Million Stones」と直訳しているというのだ。「金沢には、金沢城の石垣を見ても理解できるように、Kaga Million Stonesと称される、すばらしい石の文化があります。県名も訳するとStone riverです」と。その説明で、インバウンド観光客の一行が納得してうなずいていた、という。漢字表記は確かに「石」だが、百万石の場合の「石」は180リットルに相当する米の量換算を指すので、完全に誤って伝えられていると知人は嘆いていた。兼六園には外国語に堪能なボランティアガイドも多くいるので、この話はおそらくレアケースだろうと想像する。ただ、同じような話を留学生からも聞いたことがある。

  今の日本の大人には「加賀百万石」という言葉は何となく、豊かさとして理解できるが、それを量換算として説明できる人は果たしてどれだけいるだろうか。1952年(昭和26年)の計量法により尺貫法の使用が禁止され、石という容量の単位は公式には使われてはいないのだ。将来、日本の子供たちの中にも「Kaga Million Stones」に納得する時代がやってくるかもしれない。兼六園の冬景色を眺めながら、ふと空を仰いでしまった。

⇒10日(火)朝・金沢の天気    くもり

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