自在コラム

⇒ 日常での観察や大学キャンパスでの見聞、環境や時事問題、メディアとネットの考察などを紹介する宇野文夫のコラム

★ポスト・ブレグジットの行方

2019年12月13日 | ⇒ニュース走査

   EUからの離脱の是非を争点にしたイギリスの総選挙の開票が行われている。公共放送BBCのWeb版の開票速報をチェックすると、日本時間の午前で議会下院の650議席のうち離脱を掲げる与党の保守党が161議席を獲得、EUとの再交渉や国民投票の実施を公約にする労働党が111議席となっている。

   BBCは独自のexit-poll(出口調査)を実施していて、650議席のうち、保守党が選挙前の議席を大幅に拡大する357議席と予測し、単独で過半数(326議席)に達すると勝利を予想している=写真=。保守党が過半数を制すれば当然、EU離脱に向けた法案が承認され、来年1月の離脱に向けてまっしぐらという道筋がつく。

   イギリスの総選挙が日本にも意外な波及効果を与えているようだ。きょう13日午前の日経平均株価は一時、前日比で619円高い2万4044円まで上昇した。もちろん、これはアメリカと中国の貿易交渉が進展しているとの報道があり、買い注文が集まったのだろう。それに加えて、イギリスのEUからの離脱に道筋がついたことがプラス要因となって買いが後押ししたとも読める。

   話を開票速報に戻す。労働党は議席を減らしているが、SNP(スコットランド民族党)は増やす勢いだ。SNPが今回選挙で躍進すれば、SNPが選挙公約で訴えてきた「EU離脱への反対」と「スコットランドの独立」のボルテージがさらに高まるだろう。以前から、スコットランドにはイギリスがEUから離脱するなら、スコットランドは独立してでも、EUに残留すべきという「民意」が漂っていた。

   さらに、イギリスの選挙結果はEUにどのような影響を与えるのだろうか。もともとイギリスはEUと付かず離れずのスタンスをとってきた。通貨統合はせずポンドの存続を維持してきたのは典型的な事例だろう。ところが、2011年以降のユーロ危機で金融に対する規制強化が進み、「金融立国」であるイギリスのフラストレーションが高まる。拍車をかけたのが、EU加盟国には域内には移動の自由があり、東欧諸国などから仕事を求める移民がイギリスに多数流入したことだ。EU離脱の気運が一気に高まり、2016年6月の離脱をめぐる国民投票へとつながる。

   今回の選挙で離脱への道筋がはっきりしたことで、2020年に国際政治が大転換期を迎えるかもしれない。まさに、ポスト・ブレグジットが焦点になってきた。

⇒13日(金)午前・金沢の天気     はれ

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