今年話題となった言葉を選ぶ「2019ユーキャン新語・流行語大賞」の年間大賞に、ラグビーワールドカップの決勝トーナメントに進出した日本代表のスローガン「ONE TEAM」が選ばれた。予想通りだった。多国籍を超えて、日本チームとして結束しているところが見事だった。国歌斉唱では外国人選手も「君が代」を歌い、むしろグローバルさを感じたものだ。
「ONE TEAM」が教えてくれた次なる可能性
この「ONE TEAM」の在り様は、日本の将来の進路ではないかと考える。急速に進む少子高齢化で働き手や担い手が不足する中、日本の多国籍化を進めていく。国際化と言うと共通の理念が求められるが、目標に向かって結束する場合は多国籍化でよいのではないか。多国籍化が求められるのは、スポーツだけでなく、研究開発やマーケット戦略、生産性や教育分野など幅広い。市民生活でもあえて日本人の社会に溶け込む必要はない。日本の法律の下でお互いに暮らし安さを追求すればそれでよい。そんなことを想起させてくれたのが「ONE TEAM」の戦いぶりだった。
そこで、「ONE TEAM」を多国籍型の移民政策だと想定してみる。実は「ONE TEAM型移民政策」はすでに動いている。政府は、2020年を目途に留学生受入れ30万人を目指す「留学生30万人計画」を外務省や文部科学省に指示して推進している。たとえば、金沢大学でも2023年までに外国人留学生2200人の受け入れを目指している。法務省は留学生に在留資格を発行していて、留学生がさらに国内の企業へ就職する場合は在留資格の変更許可を出している。2018年の許可数は2万5942人で、前年に比べ3523人、15.7%も増加している。日本の大学で専門性を身につけた留学生が日本の企業で就職するケースは今後増えるだろう。
事例がある。金沢市にある繊維会社(インテリア、スポーツ衣料)は、社員52人のうち28人が外国人だ。留学生を積極的に採用している。生産管理と品質管理、営業は専門性を持ったベトナムや中国人スタッフが担当。金沢本社とアジアの生産工場を往復するマネジメントのスタッフもいる。こうした海外に生産拠点を置く企業だけでなく、サービス産業やITベンチャー企業も外国人採用枠を増やしているのだ。会社の中で互いに技術やアイデアを競い合う多国籍型の会社組織が当たり前の時代になりつつある。
もう一つの「ONE TEAM多国籍型移民政策」は、今年4月から施行された改正出入国管理法(入管法)だろう。高度な試験に合格し、熟練した技能を持つ人は長期就労も可能になり、家族の帯同も認める(特定技能2号)。地域の企業がグローバル展開するには、有能な外国人技術者を獲得し、そして地域に定住してもらう政策が必要となる。石川県内にはそれを積極的に進めている自治体がある。
自治体の首長はこう語った。「有能な外国人技術者を雇用すると妻子を伴ってくるケースが多い。その子どもたちの教育環境を整えることで、企業はそれを誘い文句に、海外からの優秀な技術者をスカウトしやすくなる」と。首長に「では、どのような教育環境が必要なのですか」と突っ込んで尋ねると、「それはインターナショナルスクールのような教育環境だろう」と明快だった。
地域にインターナショナルスクールの教育環境を整えること、それが海外から技術者を呼び込む「試金石」になる。地域の企業も国際的な大競争の時代にさらされている、そこをどう生き残るかまさに地域の未来課題でもある。「ONE TEAM」が示唆するテーマは実に深い。
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