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自在コラム

⇒ 日常での観察や大学キャンパスでの見聞、環境や時事問題、メディアとネットの考察などを紹介する宇野文夫のコラム

☆続・グレタさんにしかられる

2019年12月18日 | ⇒メディア時評

   前回のブログ(17日付)で日本人のトイレットペーパーの「無駄遣い」について書いた。その趣旨は、ヨーロッパからの留学生の指摘で、「日本人は一回で使うトイレットペーパーが長いというのが留学生の間では常識だ」と。試しに目測で一回で使うトイレットペーパーの長さを、左右の手で間隔を示してもらった。それを定規で測ると、日本人学生(男子)2人は85㌢と90㌢、ドイツとフィンランドの男子学生はそれぞれ50㌢と60㌢だった。最大で40㌢も差がある。確かに日本人はトイレットペーパーを使う長さが長く、自身も70から80㌢で使っている。無駄に長いと思うこともある、と述べた。

   ブログの読者からさっそくコメントをいただいた。「日本人と外国人では排泄される便の状態が違います。 肉食中心の外国人の便はコロコロタイプなのでトイレットペーパーは少なくて済みます。しかし、日本人は雑食なので便が柔らかいです。そのためトイレットペーパーも長く使用することになります。 無駄遣いしているわけではありません。 誤解なきように。」

   食生活の違いによって、排出する便の状況が異なる。肉食だと「コロコロタイプ」、雑食性の食事だと「柔らか」タイプになりがちだ。すると、トイレットペーパーの使い方も異なり、「柔らか」タイプは丁寧に拭くことになるので紙の量も多くなる。それが肉食性の留学生から見ると、雑食性の日本人はトイレットペーパーを無駄遣いしているように勘違いされる、 という訳だ。的確なコメントをいただいた。

   そこでもう一度、留学生たちに会って、話を聞いてみようと考えた。彼らは日本に来て、大学では学食を食べている。すると、肉や魚、ご飯とおそらく雑食性の食生活になっているはずだ。ヨーロッパでの生活に比べ、便が柔らかくなっていると推察する。すると、それがトイレットペーパーの使い方にどう変化があったのか、従来と変わらないのか、あるいは少々長くなったのか、と。

⇒18日(水)朝・金沢の天気      あめ

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★グレタさんにしかられる

2019年12月17日 | ⇒キャンパス見聞

   16歳の環境活動家、スウェーデンのグレタ・トゥーンベリさんはパンチの効いたスピーチでその存在感を浮き立たせている。「国連気候アクション・サミット2019」(9月23日、ニューヨーク)でのスピーチも強烈だった。「You have stolen my dreams and my childhood with your empty words. And yet I’m one of the lucky ones. People are suffering. People are dying. Entire ecosystems are collapsing.」(あなたたちは空虚な言葉で、私の夢を、私の子ども時代を奪った。それでも、私は幸運な者の1人だ。人々は苦しんでいる。人々は死んでいる。生態系全体が崩壊している)

   地球温暖化に本気で取り組んでいない大人たちを叱責するメッセージだった。留学生たちと語り合う機会があり、グレタさんのことが話題になった。そのテーマが、もし彼女が日本に来て、ホームステイをしたどうなるか。「きっと彼女は日本人を叱責する」とドイツとフィンランドからの留学生が声をそろえた。「電気の消し忘れによる無駄遣い、ウオシュレットによる水のムダ遣い、そしてトイレットペーパーの無駄遣いに彼女は憤るだろう」と。

   確かに、日本人には節電という意識が薄い。テレビはつけっ放しで、部屋の照明やエアコンもまめに消さない。日本人学生からは、留学した折に寮の管理人から「日本人はルーズだ」と電気を消さないで外出したことを叱責されたと話していた。ウオシュレットも確かに意見が分かれる。日本人は清潔だと絶賛する人もいれば、水を浪費していると違和感を感じる外国人もいる。グレタさんは後者の意見ではないか、と。

   ところでトイレットペーパーの無駄遣いって何だ。先のドイツとフィンランドからの留学生は笑いながら、「日本人は一回で使うトイレットペーパーが長いというのが留学生の間では常識だ」と。そこで、試しに目測で一回で使うトイレットペーパーの長さを、左右の手で間隔を示してもらった。それを定規で測ると、日本人学生(男子)2人は85㌢と90㌢、ドイツとフィンランドの男子学生はそれぞれ50㌢と60㌢だった。最大で40㌢も差がある。ドイツの留学生は小さいころから折りたたんで使うことをしつけられたそうだ。ところが日本人は丸めるようにして無造作に使う。すべての日本人はそうではないだろうが、自身も70から80㌢で使っている。無駄に長いと思うこともある。

   グレタさんに「地球の電気、水、紙を日本人は奪うな」としかられそうだ。(※写真は、9月21日に国連本部で開かれた「若者気候サミット」で温暖化対策を訴えるグレタさん(右)。左はグテレス事務総長=国連「Climate Action Summit 2019」公式ホームページより)

⇒17日(火)午後・金沢の天気     あめ

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☆竹内まりや「いのちの歌」、出雲の考察

2019年12月16日 | ⇒ニュース走査

        ここ何十年まともに大晦日の『NHK紅白歌合戦』を視聴したことがない。でも、2019年の大晦日はチャンネルを合わせようと思っている。その理由は、竹内まりやが初めてこの番組に出演するからだ。同年代のまりやファンの間ではこの話で盛り上がる。歌うのは「いのちの歌」だ。この歌は最近よく耳にする。結婚式や卒業式など少し厳粛な感じのセレモニーで歌われている。

  「生きてゆくことの意味 問いかけるそのたびに 胸をよぎる 愛しい人々のあたたかさ この星の片隅で めぐり会えた奇跡は どんな宝石よりも たいせつな宝物・・・」。人と人の出会いの喜びや、命をつなぐことの大切さを歌い、心にしみる。そして、CDのジャケットが里山なのだ。桐の花が咲くころ、田んぼで子供たちも入り田植えをしている。手前にはハス田が広がる。生命の息遣いが強くなる遅い春、あるいは初夏の風景だ。

   竹内まりやの詞には生命感があふれている。そう感じたのは昨年11月、島根県の出雲大社を訪れたときのことだ。11月のことを旧暦の月名では神無月(かんなづき)と称するが、出雲では神在月(かみありづき)と称し、全国の神々、つまり八百万(やおよろず)の神が出雲に集いにぎやかになる=写真・上=。出雲は神話のスケール感が違うとの印象だった。その出雲大社の門前にある竹内まりやの実家の旅館に宿泊した。明治初期に造られた老舗旅館は風格あるたたずまい。この家で生まれ、大社の境内で幼少期にはどんな遊びをしたのだろうかなどと想像が膨らんだものだ。

   その旅館に竹内まりやの詩が額入りで飾られている=写真・下=。「杵築の社に神々集いて縁結び栄える神話の里よ」。神々が出会い、縁を結ぶ、その場が神話の里、出雲ですよ、と。おそらく神在月のにぎやかさを表現した詩だろう。出雲大社は樹木の緑に囲まれた山のふもと、里山にある。これは想像だが、竹内まりやは幼少期から出雲の里山で神々や自然の生命の輝きを体感したのではないだろうか。「いのちの歌」のルーツはこの額入りの詩ではないだろうか。

   そう考えると竹内まりやの歌のスケール感が理解できる。「いのちの歌」では「いつかは誰でも  この星にさよならをする時が来るけれど  命は継がれてゆく・・・」と。デビュー41周年にしてようやく紅白歌合戦に。神がかった、愚直なまでの人生のスタイルではある。

⇒16日(月)夜・金沢の天気     はれ

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★ポスト・ブレグジットの行方

2019年12月13日 | ⇒ニュース走査

   EUからの離脱の是非を争点にしたイギリスの総選挙の開票が行われている。公共放送BBCのWeb版の開票速報をチェックすると、日本時間の午前で議会下院の650議席のうち離脱を掲げる与党の保守党が161議席を獲得、EUとの再交渉や国民投票の実施を公約にする労働党が111議席となっている。

   BBCは独自のexit-poll(出口調査)を実施していて、650議席のうち、保守党が選挙前の議席を大幅に拡大する357議席と予測し、単独で過半数(326議席)に達すると勝利を予想している=写真=。保守党が過半数を制すれば当然、EU離脱に向けた法案が承認され、来年1月の離脱に向けてまっしぐらという道筋がつく。

   イギリスの総選挙が日本にも意外な波及効果を与えているようだ。きょう13日午前の日経平均株価は一時、前日比で619円高い2万4044円まで上昇した。もちろん、これはアメリカと中国の貿易交渉が進展しているとの報道があり、買い注文が集まったのだろう。それに加えて、イギリスのEUからの離脱に道筋がついたことがプラス要因となって買いが後押ししたとも読める。

   話を開票速報に戻す。労働党は議席を減らしているが、SNP(スコットランド民族党)は増やす勢いだ。SNPが今回選挙で躍進すれば、SNPが選挙公約で訴えてきた「EU離脱への反対」と「スコットランドの独立」のボルテージがさらに高まるだろう。以前から、スコットランドにはイギリスがEUから離脱するなら、スコットランドは独立してでも、EUに残留すべきという「民意」が漂っていた。

   さらに、イギリスの選挙結果はEUにどのような影響を与えるのだろうか。もともとイギリスはEUと付かず離れずのスタンスをとってきた。通貨統合はせずポンドの存続を維持してきたのは典型的な事例だろう。ところが、2011年以降のユーロ危機で金融に対する規制強化が進み、「金融立国」であるイギリスのフラストレーションが高まる。拍車をかけたのが、EU加盟国には域内には移動の自由があり、東欧諸国などから仕事を求める移民がイギリスに多数流入したことだ。EU離脱の気運が一気に高まり、2016年6月の離脱をめぐる国民投票へとつながる。

   今回の選挙で離脱への道筋がはっきりしたことで、2020年に国際政治が大転換期を迎えるかもしれない。まさに、ポスト・ブレグジットが焦点になってきた。

⇒13日(金)午前・金沢の天気     はれ

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☆金沢を訪れる台湾人がダントツ多い、その伝説・・・

2019年12月12日 | ⇒トピック往来

      前回(10日付)のこのブログで、金沢の兼六園を今年訪れたインバウンド観光客数が11月末時点で44万6千人となり、去年1年間の42万8500人を超えて過去最多を更新したと地元メディアの記事(12月6日付・北國新聞)を紹介した。すると、このブログをチェックしてくれた知り合いからメールで「ところで、兼六園ではインバウンド客の人数をどのようにカウントしているのでしょうか? よもや入場券売り場の人の目視ではないですよね」と鋭い指摘をいただいた。確かに、記事にはどのような調査方法なのか触れられていなかったので、兼六園の管理事務所に電話で外国人の入場者のカウント方法について問い合わせた。

  スタッフが丁寧に答えてくれた。以下はその要旨。兼六園には7つの入り口(料金所)がある。料金を受け取ると入場券とパンフを渡している。パンフは9ヵ国語(日本、英語、中国、台湾、韓国、フランス、イタリア、スペイン、タイ)で、それぞれのパンフがある。入場者にパンフを渡す際、必ず国名と人数を尋ねて渡している。団体、個人問わず、そのようにしてパンフを渡しているので正確な国・地域別の人数が出せるのだという。

      ところで、訪日観光客数は日本政府観光局(JNTO)の調べによると、中国742万人、韓国697万人、台湾454万人、香港215万人、タイ106万人と続く(2018年確定値)。もう一度記事を引用すると、ことし1月‐11月で兼六園を訪れた国・地域別では台湾が15万2千人と一番多く、次いで中国4万人、香港3万5千人、アメリカ2万9千人、イタリア2万人、オーストラリア1万9千人と続く。つまり、台湾からの訪日観光客が圧倒的に多い。これは北陸新幹線開業以前からの傾向で、台湾ではある意味で金沢の知名度が抜群なのだ。

   八田與一(はった・よいち、1886-1942)という人物がいた。台湾の日本統治時代、台南市に烏山頭(うさんとう)ダムが建設され、不毛の大地とされた原野を穀倉地帯に変えたとして、台湾の人たちに日本の功績として高く評価されている。このダム建設のリーダーが、金沢生まれの土木技師、八田與一だった。ダム建設後、八田は軍の命令でフィリピンの綿花栽培の灌漑施設の調査ため船で向かう途中、アメリカの潜水艦の魚雷攻撃で船が沈没し亡くなった。1942年(昭和17年)5月8日だった。終戦直後、八田の妻は烏山頭ダムの放水口に身投げし後追い自殺したことは台湾でも金沢でもよく知られた逸話だ。

   八田與一伝説が生きる台湾から、多くの観光客が「八田のふるさと金沢」を訪ねてくれている。(※2017年5月、八田與一の座像修復式には金沢市の関係者も訪れた=台湾・台南市役所ホームページより)

⇒12日(木)夜・金沢の天気     はれ

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★インバウンド客を誘う兼六園の冬景色

2019年12月10日 | ⇒トピック往来

  金沢の兼六園を今年訪れたインバウンド観光客数が11月末時点で44万6千人となり、去年1年間の42万8500人を超えて過去最多を更新したと地元メディアが伝えている(12月6日付・北國新聞)。記事によると、国・地域別では台湾が15万2千人と一番多く、次いで中国4万、香港3万5千、アメリカ2万9千、イタリア2万、オーストラリア1万9千と続く。日本人を含めた全体では260万7千なので、インバウンド観光客が占める割合は17%だ。

  この季節、兼六園は雪吊りが施されていて、名木「唐崎の松」はまるでパラソルでもつつけたかのよう光景だ=写真=。インバウンド観光客が盛んにインスタ映えを狙ってシャッターを切っている。中国語や英語が飛び交っているという感じだ。そして、茶室「時雨(しぐれ)亭」で抹茶を楽しむ外国人客も増えている。茶席の静寂、広がる庭園、洗練された作法、季節の和菓子など「完成された日本の文化」がそこにある。外国人客のお目当ての一つが、和装の女性からお辞儀をしてもらえること、だとか。これだけでも随分と感動もののようだ。日本人でも、この茶席に座ると大人の時間が流れるような感じがする。

  ところで、笑うに笑えない話を兼六園通の知人から聞いた。インバウンド観光客を引率しているガイド(日本人)が、「加賀百万石」のことを「Kaga Million Stones」と直訳しているというのだ。「金沢には、金沢城の石垣を見ても理解できるように、Kaga Million Stonesと称される、すばらしい石の文化があります。県名も訳するとStone riverです」と。その説明で、インバウンド観光客の一行が納得してうなずいていた、という。漢字表記は確かに「石」だが、百万石の場合の「石」は180リットルに相当する米の量換算を指すので、完全に誤って伝えられていると知人は嘆いていた。兼六園には外国語に堪能なボランティアガイドも多くいるので、この話はおそらくレアケースだろうと想像する。ただ、同じような話を留学生からも聞いたことがある。

  今の日本の大人には「加賀百万石」という言葉は何となく、豊かさとして理解できるが、それを量換算として説明できる人は果たしてどれだけいるだろうか。1952年(昭和26年)の計量法により尺貫法の使用が禁止され、石という容量の単位は公式には使われてはいないのだ。将来、日本の子供たちの中にも「Kaga Million Stones」に納得する時代がやってくるかもしれない。兼六園の冬景色を眺めながら、ふと空を仰いでしまった。

⇒10日(火)朝・金沢の天気    くもり

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☆12月8日は「記念日」でよいのか

2019年12月08日 | ⇒メディア時評

    きょう12月8日は、1941(昭和16)年2月8日未明(現地時間7日朝)、日本の海軍がハワイ・オアフ島真珠湾のアメリカ軍基地を奇襲し、太平洋戦争が開戦した日でもある。もう78年も前のことだが、マスメディアは「戦争の記念日」のニュースとして取り上げている。 

    NHKが発掘したニュースをこう報じていた。「終戦直前の昭和20年、本土決戦に備えて女性や少年を含めた一般国民を戦闘員として組織した『国民義勇戦闘隊』の具体的な動員計画などをまとめた資料が、福井県に残されていることが分かりました。国民義勇戦闘隊に関する資料はこれまでほとんど見つかっておらず、調査にあたった専門家は『国民を総動員する戦争が寸前まで迫っていたことを示す資料だ』と指摘しています。」(8日付・NHKWeb版)

    視聴者の記憶から戦争のイメージを消さないという趣旨は理解できるが、この国民義勇戦闘隊のニュースに関心を持つ視聴者は果たしてどれだけいるだろうか。このニュースを見た視聴者の反応は「過去の戦争のことをいつまで報じるのか」「だからどうかのか」「では、当時NHKは反対したのか」ではないだろうか。過去のニュースを報じるのは簡単だ。現在の価値観で、戦前の日本の有り様を酷評すればそれで済む。このニュースを今取り上げるとしたら、現代への訴追性があるか、だ。「国民義勇戦闘隊は、本土決戦となった場合には兵士とともに武器を持って戦闘に加わることを義務づけられています。」(8日付・NHKWeb版)との内容だが、現代の法律に照らし合わせて問題があれば、「この法律はまるで国民義勇戦闘隊の布石だ」と指摘してほしい。あるいは、国民義勇戦闘隊の内容をはらむ問題が国会で審議されているのであれば、「まるで国民義勇戦闘隊だ」と問題化すべきだ。

    その問題性を現代に訴追できないのであれば、78年前の過去のことにどれほどの「ニュース価値」があるのか。12月8日は「戦争の記念日」という発想をマスメディアはいつまで持ち続けるのだろうか。「警鐘を鳴らし続ける」という発想であれば、アメリカ、中国、北朝鮮、韓国との軍事的な問題を徹底的に検証する番組をつくり、現代の日本の果たすべき役割、立ち位置を検証してほしい。日本を「過去」に逆戻りさせないとの意思を番組で表現することを期待したい。

    話は変わる。連日のようにに尖閣諸島への中国公船の領海侵入がありながらも中国国家主席を国賓として招くという。もし、招いた日に中国公船による領海侵入があれば、尖閣諸島は中国の領土ですと日本が追認したとことになるのではないか。尖閣のほかにも、香港やウイグルでの問題で国際批判を浴びている国のトップを国賓として迎えることの是非を正面から取り上げている日本のマスメディアを知らない。「安倍一強」を問うのであればこれが本論ではないだろうか。

⇒8日(日)夜・金沢の天気   あめ

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★田の神を「お・も・て・な・し」

2019年12月06日 | ⇒キャンパス見聞

   能登半島で奥能登と呼ばれている輪島市、珠洲市、穴水町、能登町の地域に伝承されている農耕儀礼「あえのこと」は毎年12月5日、田の神をご馳走でもてなす家々での祭りを意味する。2009年9月、ユネスコ無形文化遺産に単独で登録された。ことしで4回目となる「あえのこと」スタディ・ツアーを4日と5日で実施した。参加したのは金沢大学の留学生3人(フィンランド、ブラジル、中国)と日本人学生3人の6人。もてなしのご馳走である「あえのこと料理」を考えるワークショップにはALT(外国語指導助手)として能登に来ているアメリカ人2人も参加した。

   初日にまず訪れたのは延喜式内社でもある天日陰比咩神社(中能登町)。同神社では、「あえのこと」と同じ日に稲作の収穫を神に感謝する新嘗祭(にいなめさい)が執り行われ、参列者には米を発酵させた濁り酒「どぶろく」の振る舞いがある。神社の説明によると、どぶろくを造る神社は全国で30社あり、そのうちの3社が同町にある。米造りと酒造りが連綿と続く地域である。ここでどぶろくを田の神へのお供え用にいただいた。

   現在の風習では、田の神の好物とされる「甘酒」を供えているが、明治ごろまでは各家で造っていたどぶろくを供していたとの説がある。明治政府は国家財源の一つとして酒造税を定め、日清や日露といった戦争のたびに増税を繰り返し、並行してどぶろくの自家醸造を禁止した。これがきっかけで家庭におけるどぶろく文化は廃れていった。もちろん現在でも酒税法により家庭での醸造・酒造りは禁止である。どぶろくの代替えが甘酒になった、のではないかと推測している。「それなら、田の神に本来の好物、どぶろくを捧げよう」と神社に自説を説明し、現物を提供いただいた。

   2日目のいよいよ「あえのこと」の本番。輪島市にある千枚田の近くの農家を訪れた。留学生を代表し、フィンランドからの男子留学生が、「天日陰比咩神社からの預かりものです。田の神さまにお供えください」と家の主(あるじ)にどぶろくの瓶を手渡した。主人は甘酒も用意していたが、別御膳で神酒用の銚子と徳利で供えてくれた。「大役」を果たした留学生はあえのことを見終えて、「フィンランドにこういう行事はない。家々が土地の神様に祈ることが興味深い」「出された料理にも一つひとつ意味があると聞いて驚いた。田の神さまがどぶろくを楽しんでくれた想像するとうれしい」とメディアのインタビュー取材に答えていた。

   田の神はそれぞれの農家の田んぼに宿る神であり、農家によって田の神さまにまつわる言い伝えが異なる。共通しているのが、目が不自由なことだ。働き過ぎで眼精疲労がたたって失明した、あるいは稲穂でうっかり目を突いてしまったなど諸説ある。目が不自由であるがゆえに、それぞれの農家の人たちはその障害に配慮して接する。座敷に案内する際に階段の上り下りの介添えをし、供えた料理を一つ一つ口頭で丁寧に説明する。もてなしを演じる家の主たちは、自らが目を不自由だと想定しどうすれば田の神に満足していただけるのかと心得ている。あえのことで演じられる所作を見ていると「ユニバーサルサービス(Universal Service)」という言葉を連想する。社会的に弱者とされる障害者や高齢者に対して、健常者のちょっとした気遣いと行動で、障害者と共生する公共空間が創られる。

   ブラジルからの女子留学生は「とても美しいと感じる光景の儀式でした。ホスピタリテー(もてなし)の日本文化を知る機会を与えていただき感謝しています」、そして「ブラジルの先住民族にもこうした儀式や伝統文化があったが、今では少なくなったのではないでしょうか」と現状にも触れた。中国からの女子留学生は「中国にもどぶろくと同じような製法のお酒がある。母親の好物で、母親の笑顔を思い出しました」と感想を語った。留学生たちは日本の「お・も・て・な・し」を体感したようだ。(※写真は、輪島市千枚田の川口家の「あえのこと」。留学生たちが後方でかたずをのんで見守っている)

⇒6日(金)夜・金沢の天気     あめ

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☆「ごちゃまぜ」という社会の化学変化

2019年12月04日 | ⇒トレンド探査

  「Share(シェア)金沢」という施設が金沢大学の近くにある。高齢者向けデイサービス、サービス付き高齢者住宅、児童福祉施設、学生向け住宅の複合施設だ=写真=。90人ほどが暮らす、ちょっとしたコミュニティでもある。施設には天然温泉やカフェバー、レストラン、アルパカの牧場、タイ式マッサージ店などがあり、近くの子供たちや住民も出入りする。運営している社会福祉法人「佛子園」の理事長、雄谷良成(おおや・りょうせい)氏と面談するチャンスがあった。


   大学で作成する教材用の動画の出演依頼の面談だった。テーマは「ソーシャルイノベーション」。都会から地方に移住したいという人々を地域が受け入れ、一つのコミュニティー(共同体)をつくることで新たな考えや発想、ビジネスを起こすという社会実験の場をいかにして創るか。Share金沢はそのモデルの一つだ。CCRC(Continuing Care Retirement Community)は高齢者が健康なうちに地方に移住し、終身過ごすことが可能な生活共同体のような小さなタウンを指す。1970年代にアメリカで始まり、全米で2000ヵ所のCCRCがあるという。都会での孤独死を自らの最期にしたくないと意欲あるシニア世代が次なるステージを求めている。そうした人々を受け入れる仕組みを地方で創る、いわば日本版CCRCの社会実験の意義について講演をお願いした。 

    雄谷氏は「私が目指しているのは、“ごちゃまぜ”によるまちづくりです」 と口火を切った。続けて「障害のあるなしや高齢に関係なく、多様な人たちがごちゃまぜで交流する。誰もがコミュニティの中で役割を持ち、機能しすることで元気になり、コミュニティが活気づく。いわば人間の化学反応が起きるのです。いま日本の社会、とくに地域に求められているのはこうした共生型社会ではないでしょうか」と。

    雄谷氏の祖父は寺の住職で、戦災孤児や知的障害児を引き取り育てていた。1961年生まれの雄谷氏も障害児たちと生活し、「ごちゃまぜ」の環境で育った。金沢大学で障害者の心理を学び、青年海外協力隊に入り、ドミニカで障害者教育に携わった。いろいろな人たちがごちゃまぜに共生し、人と人が関わり合うことによって化学反応が起きる。事例がある。通所している認知症の女性が、重度心身障害者の男性にゼリーを食べさせようと試みた。男性は車椅子で首はほとんど動かせない。3週間ほど繰り返すうちに男性にゼリーを食べさせられるようになった。首が少し回るようになったのだ。女性も深夜徘徊が減った。この様子を観察していた雄谷氏は「人と人が関わり合うことによって互いが役割を見つけ、生きる力を取り戻す。大きな気づきでした」と。

    雄谷氏が提唱する、ごちゃまぜのコミュニティづくりの構想は、縦割りとなった社会制度を崩すものだ。政府が目指すべき将来像を示す「まち・ひと・しごと創生基本方針2019」にこの構想が盛り込まれた。個人の人生設計と併せて地域で共生する社会のなかで誰もが活躍する。少子高齢化・人口減少の課題先進国、日本にとって示唆に富んだ提案ではないだろうか。今回の面談の時間は30分ほどだったが、講演の動画収録にOKが出たので、今度ゆっくり聞かせてもらうことになった。

⇒4日(水)朝・金沢の天気    あめ

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★「ONE TEAM」 多国籍のチカラ

2019年12月02日 | ⇒トピック往来

   今年話題となった言葉を選ぶ「2019ユーキャン新語・流行語大賞」の年間大賞に、ラグビーワールドカップの決勝トーナメントに進出した日本代表のスローガン「ONE TEAM」が選ばれた。予想通りだった。多国籍を超えて、日本チームとして結束しているところが見事だった。国歌斉唱では外国人選手も「君が代」を歌い、むしろグローバルさを感じたものだ。

  この「ONE TEAM」の在り様は、日本が取るべき将来の進路ではないかと考える。急速に進む少子高齢化で働き手や担い手が不足する中、日本の多国籍化を進めていく。国際化と言うと共通の理念が求められるが、目標に向かって結束する場合は多国籍化でよいのではないか。多国籍化が求められるのは、スポーツだけでなく、研究開発やマーケット戦略、生産性や教育分野など幅広い。市民生活でもあえて日本人の社会に溶け込む必要はない。たとえば、金沢に「ニュージーランド村」や「南アフリカ村」があってもいい。日本の法律の下でお互いに暮らし安さを追求すればそれでよいのではないか。そんなことを想起させてくれたのが「ONE TEAM」の戦いぶりだった。

   そのほか個人的に選ぶ流行語大賞は、やはり「令和」だ。4月1日午前11時35分から総理官邸で開かれた会見で、菅官房長官が墨書を掲げて新元号を公表する様子をネットの動画中継を見ていた。「大化」(645年)から248番目の元号が「令和」と発表されたとき、時代の転換点に立つような、改まった気分になった。安倍総理もその後の記者会見で、「春の訪れを告げ、見事に咲き誇る梅の花のように一人ひとりが明日への希望とともに、それぞれの花を大きく咲かせることができる、そうした日本でありたいとの願いを込めて決定した」と述べていた。 なんと平和なことか。昭和、平成、そして令和の時代を生きることは喜びではないかのか、ふと気づかされたものだ。平成の世と同じく、令和も戦争のない平和な時代であってほしいと願うばかりだ。

  「新紙幣」も個人的には流行語大賞だ。「令和」の発表の8日後、新紙幣を2024年度に発行すると麻生財務大臣が記者会見で発表した。1万円、5千円、千円の紙幣(日本銀行券)の全面的な刷新だ。平成の1万円札の主役を担った福沢諭吉から、令和は渋沢栄一に代わる。しかし、「独立自尊」の福沢の精神は未来も変わることはない。

⇒2日(月)夜・金沢の天気    くもり

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