映画を見ると、スクリーンに映っている出演者を羨ましいと思う。
歌を聞くと、歌い手が逝っても残る歌とともに、記憶に残る歌手が
羨ましく思う。
単なる凡人なので、誰の記憶にも残らないということは無い。誰かの
記憶に残ってくれればいいと、最近思うことにして、手元の記憶に残るもの
の処分を出来るだけすることにした。
以前は、美術展に行ったり、展示会に出掛けた時は、何かしらの思い出にと
ちょっとしたものを、買い求めてきた。
引き出しに入りきらなくなるほどにたまってしまった、これらの品を、
維持していくことの、むなしさを思うようになり、最近は、出掛けても、土産物品は
見るだけで素通りする。
もし、親しい人の思い出の品が津波などで失われてしまったら、どうか、記憶の
中に大事にしまって欲しいと思う。
もし、思い出が、戻ったら、いつくしんでまた、保管して欲しい。
すべての人から忘れられたら、それはとっても哀しいことだろうと思う。
様々な人に思い出を残される人は、やっぱり羨ましい。
ま、今まで通り、気負わずに、そっと残してもらえるような、そんなことを、これからも
続けよう。
記憶に残る作家二十五人の素顔
水口義朗
中公文庫