図書館本。
著者は日経の電子報道部のデスクということです。
アマゾンで見るとわりと高い評価が多いのですが、私はあまりよいとは思えませんでした。この方は存じていないのですが、ご自身が実際に個人投資家としてマーケットの中で「闘って」きた経験が薄いのではないかと思いました。
なんか全体として「上から目線」的な印象があります。まあ、それは本書の体裁というか編集のあり方によるところも大きいのでしょうけど(こんな失敗をしがちだけど、それはこういう理由です、というような構成になっている)。
もう、最初のところから違和感が・・・。
金融商品で言う「リスクは危険ではなく変動」という意味だから誤解するなということが書いてあります。
だからなんなの?。
「大きく儲かるかもしれないけど、大きく損するかもしれない」というのが、変動幅が大きいという意味でリスクが大なわけですよね。
となると、これは大きく損する可能性が大きいという意味で「危険」なわけですよ。
だから、金融商品で言う「リスク」とは、一般的な言葉の「リスク」とは違っていたとしても、それは大きく誤解しているということにはあたらないと私は思いますが。
それと「こっちが騰がれば、こっちが下がる」みたいに相反する関係にある商品を組み合わせればリスクは小さくなる(つまり変動幅が小さくなる、つまり大損しにくくなるという意味で危険性が低くなる)ということとは、ちょっと意味が違うのでね。
なんか、わざとそこのところを混同して書いてますか?。
同じように違和感をおぼえるところがありました。
「毎月分配型のような投信は投資という視点では損だから、長期で複利効果が得られるような投資をしたら、早くに亡くなってしまった。だったら、分配金をもらってお金を使っておいた方がよかった。」というような例が書かれているのですが・・・。
また、意味の違うことを一緒にしてるでしょ。
投資という視点で言えば、自分の投資資金を税金を払って少しずつ払い戻してもらうような毎月分配型の投信は損です。これは明らか。
そのことと、自分の人生においてお金の使い方をどうするのかというのは、意味、質の違う問題で、これを一緒にしている。
お金はそれなりに自分のために使っていこうということであれば、毎月分配してもらうのではなくて、その分だけ自分の判断で取り崩していけばいいわけです。
全体としては「なるほど」と思う内容もあるのですが、これは「なぜ・・・失敗するのか」というタイトルの本としては極めて不十分と言わざるをえない。
それは、投資家の心理的な要因についてまったくといっていいほどふれておらず、近年の行動ファイナンスの知見についてもふれられていないからです。実際の個人投資家の感覚としては、ここのところは非常に意味が大きいと思うのだけれど。
「それは本書の趣旨とは違う」ということであれば、このタイトルそのものがよくないですね。
と、また辛口になってます・・・。