玄文社主人の書斎

玄文社主人日々の雑感もしくは読後ノート

中村さんの第2小説刊行

2006年07月01日 | 日記
 中村あきおみさんの本がやっとできた。昨年四月の『秘湯・白妙の湯』に次ぐ小説第二弾『もしも小雨でなかったら……』である。玄文社刊。A5判、八十二頁、定価(本体九百五十三円+税)。柏崎市内の書店で好評発売中。玄文社でも注文を受け付ける。スナックのボトル棚の写真を使った装幀が評判だ。
 新宿のとあるスナックのカウンターが舞台。たまたま隣り合った中年の男と女の会話で小説は進行していく。バックグラウンドミュージックは六〇年代のロックやフォークソング、そしてジャズ。団塊の世代の過去への郷愁溢る設定である。
 見ず知らずの男と女は、お互いが歩んできた人生について語り始める。BGMが二人に青春時代への回想を呼び起こす。本当の自分というものを失っていなかった時代への想い。男は女の言葉に「もう一度、自分と闘う」ことを決意する。ラストシーンは、団塊の世代にとって、とりわけ哀切なものがあるだろう。
 一人で十種類の楽器を同時に操り、全国のまちおこしで活躍する大道芸人・野尻博さんの友情溢れる「あとがき」を付す。野尻さんもまた団塊の世代の一人だ。野尻さんは書いている。
「この小説の面白さは、読みながら自分の若かりし過去がどんどん蘇ってくるところにあります。楽しかったこと、苦しかったこと、ほろ苦い思い出や悲しみに暮れたことなど……小説と自分の人生がコラボする非常に心憎いものだと感じます。ある意味でこれから生きていくうえで、大きな勇気をあたえるものになるでしょう」

綾子舞街道活性化プロジェクト

2006年07月01日 | 日記
 市観光交流課長で、国の観光カリスマである春日俊雄さんの話をじっくりと聞いたのは初めてだった。春日さんの朴訥な口調は、聞く者に安心感を与え、その話の内容は、じんわりと効いてくる。「そうだない」という高柳弁を多用する春日さんのゆったりとしたしゃべりは、柔らかではあるが座をまるめ込む強い力を持っている。
 一面の「タイムス抄」で取り上げた「綾子舞街道活性化プロジェクト」について書き足りないので補足しておきたい。このプロジェクトは、県の秋季観光キャンペーンと、八月に予定の観光カリスマ会議だけをターゲットにしているのではない。
 より長期的には「地域資源活用型の周遊観光ルートの開発」と「既存文化施設と地域との連携」をも目的とする。むしろこちらの方が本来の目的であり、息の長いプロジェクトとなるだろう。
 春日氏の言うように、この地域の観光資源は、高柳のじょんのび村のように新たに拠点施設をつくるまでもなく、既に充分に豊富だ。入り口からたどれば、博物館、松雲山荘、木村茶道美術館、飯〓邸、綾子舞会館、それに今度は旧別俣小学校の木造校舎も加わりそうだ。何もなかった旧高柳町に比べれば、非常に恵まれた施設群が既にある。
 しかし、春日氏は言う。「高柳荻ノ島の環状集落がすごいといいますが、建物がすごいんではなくて、そこに住んでいる人がすごいんです」。人を中心にした地域おこしを実践してきた春日氏ならではの言葉だ。施設が人を呼ぶのではなく、人が人を呼ぶのだという発想である。
 春日氏は、地域の中での情報発信の中では、地元の人の思いのこもった言葉が絶対に必要だと主張する。一方行政は、そのような思いを持つことができないとも……。
 ということで、「綾子舞街道活性化プロジェクト」は行政主導を離れて、地元に委ねられることになった。今後の展開に注目しよう。

越後タイムス6月30日「週末点描」より)