玄文社主人の書斎

玄文社主人日々の雑感もしくは読後ノート

タイムズとタイムス

2009年05月01日 | 日記
 アメリカの大手新聞・ニューヨーク・タイムズが二十一日、今年一月から三月期の最終赤字が七千四百四十七万ドル、日本円で約七十四億円となったと発表したと報道された。前年同期は三十三万ドルの赤字だったというから、かなり危機的な数字である。
 売上高に占める広告収入はスポンサーのインターネットへの移行のため年々低下していて、〇五年までは六五%を超えていたが、今年に入って六〇%を割り込んだという。さらにそこに金融危機による景気後退が追い討ちをかけた。ブロードウェーの劇場の広告や自動車メーカーの広告が激減し、広告収入が二七%も減少したという。
 こうした傾向はニューヨーク・タイムズだけのものではなく、日本の新聞も同じような運命をたどりつつある。ニュースを伝えるのはテレビやインターネットの方が圧倒的に早いし、インターネットの情報はプリントしたりデータとして保存したりできるから、新聞の持つ利点をカバーしている。
 インターネットの普及が英語の覇権によって、他の国語(日本にあっては日本語)を亡ぼすことを心配する人もいるが、それよりもむしろ、インターネットの普及は間違いなく新聞というメディアを亡ぼすことになるだろう。
 同じタイムス(ニューヨークの方は“タイムズ”)の名を持つ「越後タイムス」も例外ではない。大新聞と違ってローカル紙の生き延びる道はあるように思うが、生来のへそ曲がりが災いして、経営はなかなか大変である。
 「越後タイムス」は明治四十四年(一九一一年)五月二十日の創刊である。ニューヨーク・タイムズはそれより六十年古い一八五一年の創刊。世界最古の日刊紙といわれるロンドン・タイムズ(越後タイムスの名はこちらから)は、さらにそれより七十年古い一七八五年の創刊だ。
 新聞というものは、近代になって生まれたもので、それほど大昔からあったものではない。今新聞はその歴史的役割を終えようとしているのかも知れない。気が付くと「越後タイムス」は創刊百年まで、あと二年というところまで来ているのだった。

越後タイムス4月17日「週末点描」より)


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