玄文社主人の書斎

玄文社主人日々の雑感もしくは読後ノート

行列嫌い

2009年05月26日 | 日記
 十七日、プレミアム商品券の販売で、東本町一の通りにできた、三百メートルはあろうかという、長い二本の行列にはびっくりした。販売開始の二時間も前から待っていたという人もいたようで、その辛抱強さにも驚かされた。
 こちらは、取材する立場だから、行列に並ぶわけにもいかず、商品券を買うことはできなかったが、十五分以上待つなどということができない体質なもので、もともと買い求めるつもりもなかった。
 よくテレビなどで、ラーメンを食べるために行列に並んで三時間待つとか、デパートの福袋ほしさに長蛇の行列をつくるなどというニュースが流れるが、だいたい東京の話で、「どうして東京人は、行列が好きなんだろう。どうしてあんなに忍耐強いのだろう」と思ってしまう。
 柏崎でも新しくオープンしたラーメン屋などで、行列ができることがあるが、四~五人以上並んでいたらあっさり諦めて、違う店に行くことにしている。行列をつくってまで待って食べるほどラーメン自体がおいしいとも思わないためもあるが、とてもイライラして待っていられないというのが本音である。
 長い行列は、期待感を増幅させるのだろう。行列が長ければ長いほど、期待は大きくなり、自分の番がきたときの喜びが大きいのかもしれない。しかし、その逆もあり得る。長時間待っていたのに、味が期待はずれだったりしたら、どうするのだろう。
 ほとんどギャンブルのようなもので、都会人の行列好きは、そのギャンブル好きと共通する部分があるように思う。

越後タイムス5月22日「週末点描」より)



毛虫の花

2009年05月26日 | 日記
 毎年この季節になると、コンクリートの道を横断する毛むくじゃらの虫を多く見ることになる。大きいものでは七~八センチになろうというその毛虫は、巨体をゆらしながら懸命に道路を横切って行く。そのスピードは毛虫にしてはえらい早さで、車で走っていても、その進み具合が分かる。
 その一所懸命な姿に好感を覚え、毛虫のわりに気持ち悪さも感じないし、車で轢いてしまわないように、慎重なハンドル操作で避けてあげるよう努めている。それでも道路の上には多くの轢死体が散見され、見ていて可哀相になるのは私ばかりではないだろう。
 その毛虫のことを勝手に“ウシケムシ”と呼んでいた。黒や茶色のウシを連想させるからである。いったいどんな蝶や蛾の幼虫なのだろうと思っていたが、調べてみようとはしなかった。
 しかし、この毛虫の不思議な生態を知ることになったため、インターネットで調べてみることにした。検索語は「道を横切る毛虫」。ちゃんと出てくる。「道を横切るのは最短距離を通るためだ」などと余計なことまで書いてある。
 この毛虫はヒトリガ(火取蛾)の幼虫で、別名“クマケムシ”とも呼ばれているという。“ウシケムシ”の呼び方は当たらずとも遠からずであった。成虫の写真を見ると、よく見かける蛾で、焚き火などに飛び込んで焼け死ぬことから、“ヒトリガ”の名前がつけられたという。
 クマケムシが横断した先の叢を観察すると、ススキなどの枯れた花穂に登って行って、一番先で動かなくなるのが分った。その結果、ケムシがガマの穂のようになって風に揺られる。ケムシの花束のような様相となる。数が多いとやはり気持ち悪い。
 「六月から七月までに蛹化する」とあるから、花穂の先で蛹になるのだろう。きっとエサをたらふく食べ、登るべき花穂を求めて道路を横断するのではないか。「七月から八月までに羽化する」というから、次はそれを観察してみよう。

越後タイムス5月16日「週末点描」より)