玄文社主人の書斎

玄文社主人日々の雑感もしくは読後ノート

島秋人の歌稿発見

2011年01月18日 | 日記
 二月二十六日・二十七日に、越後タイムス百周年記念事業として予定している、「鬼灯」柏崎公演への協力を求めるため、西本町三の正法寺に松田秀明住職を訪ねた。早速「鬼灯」のチラシをお見せして、ご協力をお願いした。
 住職はいきなり「ちょうど島秋人の資料を整理していたところで、自筆原稿もありますよ」と、びっくりするようなことを言われる。住職が別室から持ってこられた封筒には、「柏崎西本町三、島町住人、中村覚二こと島秋人、自筆原稿、葉書他」と記されていた。
 封筒に入っていたのは、柏崎歌会の機関誌「朱」の島作品掲載号三年分、投稿用の自筆原稿、島手書きの自選歌集二冊。他に、事件後の四年間の経緯を伝える「小千谷新聞」の記事、最高裁への上告趣意書の写し、住職の父・松田政秀さん宛の絵葉書四通があった。
 そんなものを見せられて、すっかり昂奮してしまったが、住職はそれらの資料を昨年の十二月二十二日に整理されたのだという。
「まるでお出でになるのをお待ちしていたようですね」と住職は言われる。今回の公演実現には、多くの偶然が重なったが、この日の資料発掘も偶然のひとつだった。
“島秋人”の筆名は、“島町の住人で囚人であること”からつけられたもので、「絢子さん等から贈られた」とされているが、具体的には政秀さんの命名によることも知った。機関誌「朱」には、政秀さんによる島作品評も掲載されていて興味が尽きない。
 これらの貴重な資料は「鬼灯」公演の当日、会場の「游文舎」エントランスホールに展示する予定だ。その前に、タイムス紙上で、その一部でも紹介できればいいと思っている。

越後タイムス1月14日「週末点描」より)


monado君の同人誌

2011年01月18日 | 日記
 正月に帰省した甥のmonado君(柏崎生まれ、日本人)から、仲間と出した文学同人誌をもらった。全部は読んでないが、かなり本格的な同人誌である。全国に同人誌は無数にあるが、そのほとんどが同人の高齢化という問題を抱えている。
 しかもかなり前から、同人誌に欠かせない批評精神というものを失い、高齢者たちの意欲を欠いた小説ばかりが、その誌面のほとんどを占めるという有様となっている。
 monado君の同人誌は三十代の書き手を中心としている。誌名は「b1228」。発刊第一号のテーマは“Fictional”。これでは何の雑誌か分からないが、目次を見てかろうじて文学関係の雑誌と分かる。しかし、小説と批評を交互に配した構成は、彼らの挑戦的意欲を明瞭に示している。
 内容に踏み込んでいる時間はない。が、執筆者の多分全員がペンネームをつかっていること、しかもmonadoとかLianとかの横文字を使っていることに問題を感じる。奥付まで横文字で、発行日が昨年十二月五日と分かるのみ。住所も電話番号も何も書いてない。
 と指摘したら、monado君は「メールアドレスが書いてあるから、それでいい」と言う。彼らは皆インターネット世代で、ネット上で連絡を取り合っているのだ。全国の同人誌の多くは“地名”を誌名とし、地域性を彼らの共同体の根幹としているが、「b1228」はそうではない。
 彼らの共同体は彼らの“志向するもの”の中にしかない。多分それでいいのだろう。しかし後世の書誌学者が、この同人誌の実態を調べる時には、大きな困難が立ちはだかることになるだろう。
 さて、monado君の「b1228」について知りたい方は、インターネット上で“b1228”で検索を。

越後タイムス1月7日「週末点描」より)