それにしてもなんという文章だろう。『マンク』の大団円とも言える、暴徒による尼僧院破壊と炎上の場面は次のように書かれている。
「燃えている炎の山から、めらめらと建物の一部に火がうつる。古くてかわききっているので、あっという間に次から次へと、部屋が火の海になってゆく。あらゆるものを食いつくす火の力に、壁がすぐゆれはじめた。柱が倒れ、異徒の頭上に天井が落ちて、大ぜいの人間がその重みにつぶれる。尼僧院全体が炎に包まれ、惨禍と恐怖の地獄絵巻だった」
このように平板で紋切り型なクライマックスの描写を読んだことがない。文章は簡略に過ぎて、ダイジェストを読んでいるかのようだし、描写が軽すぎてとても大団円の重さを持ちこたえることが出来ない。それは場面が墓穴と地下牢に移ってからも同じことである。
もうひとつ勧善懲悪のことも言っておかなければならない。悪人はすべて罰を受けて死に、善人はすべて危機をまぬがれて平安と幸福を得るのである。
ではなぜ、美しき処女アントニアが兄アンブロシオに強姦され、しかもナイフで刺し殺されなければならないのか。それはアントニアが悪魔の誘惑に負けたアンブロシオの妹だからであり、二人の母エルヴィラがアンブロシオに殺されるのと同断であろう。
あるいはまた、エルヴィラはかつて恋愛上の罪を犯したことがあり、その罪はアンブロシアにはもちろんのこと、アントニアにも投影されているのである。
ルイスは恋するロレンゾに死んだアントニアの替わりに、より美しい娘ヴィルジニアを与えて小説を終えている。
いいかげんやめよう。なんというご都合主義、なんという悪趣味、なんというセンチメンタルだろう。それでもルイスの『マンク』は後の小説に大きな影響を与えた。『マンク』がゴシック小説の骨格を初めて完成させたからなのだということにしておこう。
「燃えている炎の山から、めらめらと建物の一部に火がうつる。古くてかわききっているので、あっという間に次から次へと、部屋が火の海になってゆく。あらゆるものを食いつくす火の力に、壁がすぐゆれはじめた。柱が倒れ、異徒の頭上に天井が落ちて、大ぜいの人間がその重みにつぶれる。尼僧院全体が炎に包まれ、惨禍と恐怖の地獄絵巻だった」
このように平板で紋切り型なクライマックスの描写を読んだことがない。文章は簡略に過ぎて、ダイジェストを読んでいるかのようだし、描写が軽すぎてとても大団円の重さを持ちこたえることが出来ない。それは場面が墓穴と地下牢に移ってからも同じことである。
もうひとつ勧善懲悪のことも言っておかなければならない。悪人はすべて罰を受けて死に、善人はすべて危機をまぬがれて平安と幸福を得るのである。
ではなぜ、美しき処女アントニアが兄アンブロシオに強姦され、しかもナイフで刺し殺されなければならないのか。それはアントニアが悪魔の誘惑に負けたアンブロシオの妹だからであり、二人の母エルヴィラがアンブロシオに殺されるのと同断であろう。
あるいはまた、エルヴィラはかつて恋愛上の罪を犯したことがあり、その罪はアンブロシアにはもちろんのこと、アントニアにも投影されているのである。
ルイスは恋するロレンゾに死んだアントニアの替わりに、より美しい娘ヴィルジニアを与えて小説を終えている。
いいかげんやめよう。なんというご都合主義、なんという悪趣味、なんというセンチメンタルだろう。それでもルイスの『マンク』は後の小説に大きな影響を与えた。『マンク』がゴシック小説の骨格を初めて完成させたからなのだということにしておこう。
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