揺れる障害者福祉:自立支援法2年/3 存続を模索する小規模作業所 /和歌山
◇生き残りに選択肢ない--5人通所副理事長
5人の知的障害者が通う和歌山市の小規模作業所「ひぃふぅみぃ共同作業所」。06年に長屋の一室で開所し、地域の障害者の交流の場となっていたが、今月、別の地区に引っ越した。従来の約3倍の広さで、家賃は20倍以上。安定した運営を求め、新体系移行を目指す第一歩だった。
開所当時は利用者3人。公的補助はなく、保護者の寄付などで月5000円の工賃を賄った。利用者5人となった昨年から年約350万円の市の補助を受けるが、運営は厳しい。障害者自立支援法に基づく「地域活動支援センター」になれば、年間600万円程度の補助が見込める。
定員20人以下の小規模作業所は、地域の重度障害者の受け皿として80年代に全国に広がり、現在、6000カ所近くある。法定外のため、多くは経営が不安定だ。全国の作業所でつくる「きょうされん」(東京都)によると、小規模作業所への公的補助の全国平均(05年)は年間で、都道府県約400万円、国110万円だった。
しかし同法施行に伴い、国は06年4月、補助を打ち切った。新たに補助を得るには移行が原則だが、5年以上の実績や10人以上の利用者など条件がある。ひぃふぅみぃ共同作業所の尾崎直加副理事長(52)は「新しい場所で、なんとか利用者を増やしたい」と話す。
条件を満たせず、移行の見通しが立たない施設もある。岩出市の「共同作業所ぷちこすもす」は利用者1人。すべてを自主財源で賄う。井原啓子理事長(54)は「1人でも利用者がいる限り、存在理由がある。資金の無い小さな作業所にこそ補助が必要」と訴える。
県は07年度から2年間の期限付きで、移行を考える小規模作業所に上限250万円を補助。県障害福祉課は「経営安定のため、補助を活用して早めに移行してほしい」とするが、この補助を受けるにも、実績や定員数などの条件がある。
尾崎副理事長は言う。「移行して、今までのように仲間の居場所であり続けられるか不安はある。それでも、生き残るために、私たちに選べる選択肢はない」。地域の障害者福祉を支えてきた小規模作業所は、存続の道を模索している。
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■ことば
◇新体系移行
障害者自立支援法の施行で、障害種別に33あった従来の施設・事業体系を、各サービスの機能や目的に合わせて「六つの日中活動」に再編。療養介護、生活介護、自立訓練、就労移行支援、就労継続支援、地域活動支援センターがある。06年度から5年間の経過措置が設けられ、国や自治体から補助金を受けるためには、その間に移行先を決めなければならない。複数の事業選択も可能。
毎日新聞 2008年4月17日 地方版
◇生き残りに選択肢ない--5人通所副理事長
5人の知的障害者が通う和歌山市の小規模作業所「ひぃふぅみぃ共同作業所」。06年に長屋の一室で開所し、地域の障害者の交流の場となっていたが、今月、別の地区に引っ越した。従来の約3倍の広さで、家賃は20倍以上。安定した運営を求め、新体系移行を目指す第一歩だった。
開所当時は利用者3人。公的補助はなく、保護者の寄付などで月5000円の工賃を賄った。利用者5人となった昨年から年約350万円の市の補助を受けるが、運営は厳しい。障害者自立支援法に基づく「地域活動支援センター」になれば、年間600万円程度の補助が見込める。
定員20人以下の小規模作業所は、地域の重度障害者の受け皿として80年代に全国に広がり、現在、6000カ所近くある。法定外のため、多くは経営が不安定だ。全国の作業所でつくる「きょうされん」(東京都)によると、小規模作業所への公的補助の全国平均(05年)は年間で、都道府県約400万円、国110万円だった。
しかし同法施行に伴い、国は06年4月、補助を打ち切った。新たに補助を得るには移行が原則だが、5年以上の実績や10人以上の利用者など条件がある。ひぃふぅみぃ共同作業所の尾崎直加副理事長(52)は「新しい場所で、なんとか利用者を増やしたい」と話す。
条件を満たせず、移行の見通しが立たない施設もある。岩出市の「共同作業所ぷちこすもす」は利用者1人。すべてを自主財源で賄う。井原啓子理事長(54)は「1人でも利用者がいる限り、存在理由がある。資金の無い小さな作業所にこそ補助が必要」と訴える。
県は07年度から2年間の期限付きで、移行を考える小規模作業所に上限250万円を補助。県障害福祉課は「経営安定のため、補助を活用して早めに移行してほしい」とするが、この補助を受けるにも、実績や定員数などの条件がある。
尾崎副理事長は言う。「移行して、今までのように仲間の居場所であり続けられるか不安はある。それでも、生き残るために、私たちに選べる選択肢はない」。地域の障害者福祉を支えてきた小規模作業所は、存続の道を模索している。
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■ことば
◇新体系移行
障害者自立支援法の施行で、障害種別に33あった従来の施設・事業体系を、各サービスの機能や目的に合わせて「六つの日中活動」に再編。療養介護、生活介護、自立訓練、就労移行支援、就労継続支援、地域活動支援センターがある。06年度から5年間の経過措置が設けられ、国や自治体から補助金を受けるためには、その間に移行先を決めなければならない。複数の事業選択も可能。
毎日新聞 2008年4月17日 地方版