ゴエモンのつぶやき

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揺れる障害者福祉:自立支援法2年/3 存続を模索する小規模作業所 /和歌山

2008年04月17日 23時54分11秒 | 障害者の自立
揺れる障害者福祉:自立支援法2年/3 存続を模索する小規模作業所 /和歌山
 ◇生き残りに選択肢ない--5人通所副理事長
 5人の知的障害者が通う和歌山市の小規模作業所「ひぃふぅみぃ共同作業所」。06年に長屋の一室で開所し、地域の障害者の交流の場となっていたが、今月、別の地区に引っ越した。従来の約3倍の広さで、家賃は20倍以上。安定した運営を求め、新体系移行を目指す第一歩だった。

 開所当時は利用者3人。公的補助はなく、保護者の寄付などで月5000円の工賃を賄った。利用者5人となった昨年から年約350万円の市の補助を受けるが、運営は厳しい。障害者自立支援法に基づく「地域活動支援センター」になれば、年間600万円程度の補助が見込める。

 定員20人以下の小規模作業所は、地域の重度障害者の受け皿として80年代に全国に広がり、現在、6000カ所近くある。法定外のため、多くは経営が不安定だ。全国の作業所でつくる「きょうされん」(東京都)によると、小規模作業所への公的補助の全国平均(05年)は年間で、都道府県約400万円、国110万円だった。

 しかし同法施行に伴い、国は06年4月、補助を打ち切った。新たに補助を得るには移行が原則だが、5年以上の実績や10人以上の利用者など条件がある。ひぃふぅみぃ共同作業所の尾崎直加副理事長(52)は「新しい場所で、なんとか利用者を増やしたい」と話す。

 条件を満たせず、移行の見通しが立たない施設もある。岩出市の「共同作業所ぷちこすもす」は利用者1人。すべてを自主財源で賄う。井原啓子理事長(54)は「1人でも利用者がいる限り、存在理由がある。資金の無い小さな作業所にこそ補助が必要」と訴える。

 県は07年度から2年間の期限付きで、移行を考える小規模作業所に上限250万円を補助。県障害福祉課は「経営安定のため、補助を活用して早めに移行してほしい」とするが、この補助を受けるにも、実績や定員数などの条件がある。

 尾崎副理事長は言う。「移行して、今までのように仲間の居場所であり続けられるか不安はある。それでも、生き残るために、私たちに選べる選択肢はない」。地域の障害者福祉を支えてきた小規模作業所は、存続の道を模索している。

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 ■ことば

 ◇新体系移行
 障害者自立支援法の施行で、障害種別に33あった従来の施設・事業体系を、各サービスの機能や目的に合わせて「六つの日中活動」に再編。療養介護、生活介護、自立訓練、就労移行支援、就労継続支援、地域活動支援センターがある。06年度から5年間の経過措置が設けられ、国や自治体から補助金を受けるためには、その間に移行先を決めなければならない。複数の事業選択も可能。

毎日新聞 2008年4月17日 地方版


揺れる障害者福祉:自立支援法2年/2 移動支援の自治体格差 /和歌山

2008年04月17日 23時51分57秒 | 障害者の自立
揺れる障害者福祉:自立支援法2年/2 移動支援の自治体格差 /和歌山
 ◇楽しみ奪われる、悔しい--36歳の女性
 「住所が違うだけで受けられるサービスが違うのは不公平」。下肢障害のある和歌山市の女性(36)は憤る。障害者自立支援法の施行で、ヘルパー利用時間が大幅に減った。障害程度は変わらないのに、同じ作業所に通う紀の川市の仲間は3倍支給されている。

 女性は車椅子生活で、外出にはヘルパーの付き添いが必要だ。同法施行前、ヘルパー利用は月35時間。料理教室への送迎など自由に使えたが、06年4月の同法施行を境に、私的な理由で使える時間が月10時間に制限。それ以上は全額自己負担となる。外出は減り、家にいる時間が増えた。

 同法で、障害者の社会生活に不可欠な「移動支援」は市町村事業になった。このため、支給時間や利用条件など自治体の対応に格差がある。例えば、和歌山市が18歳以上の私的理由による利用を月10時間としているのに対し、紀の川市は制限がない。「友達の家にも気軽に行けない。楽しみまで奪われるのが悔しい」と女性は言う。

 和歌山市は利用者の声を受け、今月から移動支援などの支給決定基準を緩和。18歳以上の場合、単身世帯や障害者のみの世帯などは月10時間を20時間に増やした。

 一方、ヘルパーを派遣する事業所では収入減も起きている。和歌山市社会福祉協議会は、障害者へのヘルパー派遣利用時間が799時間(05年5月)から637・5時間(07年5月)に激減。07年5月の収入は約129万円で、05年同期比3割減となった。

 同市障害福祉課は「私的理由でのヘルパー利用は個人差がある。特別な事情を除き、過去の平均利用時間に基づいて、公平公正なように一律10時間とした。今後も利用者の声には耳を傾けたい」と説明する。

 趣味を持ち生活の幅を広げようとするヘルパー利用は、そうした人たちにとって著しく制限されている。和歌山市障害児者父母の会事務局長の岩橋秀樹さん(49)は「当事者であるはずの障害者が置き去りにされている。利用者の立場にたった制度を考えて」と訴える。

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 ■ことば

 ◇移動支援
 社会生活上、必要不可欠な外出や、余暇活動など社会参加のための外出時の移動を支援する事業。厚生労働省は「全国一律でなく、地域の実情に応じ柔軟に提供すべきサービス」として、障害者自立支援法で市町村主体の「地域生活支援事業」に位置づけた。利用料や利用範囲は、各市町村が独自に定める。

毎日新聞 2008年4月16日 地方版