障害児の学童保育
県内事業所経営ピンチ
自治体設定単価が影響、赤字で撤退相次ぐ
障害児の学童保育を行う「サポートセンターつぼみ」。数時間の支援が親子に憩いの時間をつくっている=岐阜市福光西
障害児を対象に2006(平成18)年10月から始まった日中一時支援事業。家族の負担軽減、障害児の学童保育的な役割を担うと期待される一方、利用単価は自治体ごとに設定されており、単価のばらつきが事業所の運営に影響を与えている。県内では、この事業を本年度から休止、廃止する事業所も出ており、利用者ニーズの受け皿確保が課題となっている。
3月末に、岐阜市福光西で単独型の日中一時支援事業を開設した「サポートセンターつぼみ」は、月約60万円の収入に対し、職員の人件費などを合わせた支出は約90万円。開設当初から月30万円の赤字を抱える。運営は愛知県愛西市に本部を置く「NPO法人夢んぼ」。菊池利哉事務局長(32)=岐阜市東中島=は「本部で赤字補てんしているが、この状態が長く続けば継続も難しくなっていく」と不安を募らす。
ダウン症の小学4年生(9つ)の長男を通わせている母親(46)は「これまでは仕事を終えて学校に迎えに行くと、あとは自宅で過ごす生活の繰り返しだった。ここに通い出してから、初めて1人で息抜きする時間が持てるようになった」と言い、「自分たちには必要な場所。受け皿をなくさないで」と訴える。
岐阜市に登録する日中一時支援事業所のうち、岐阜市、関市、羽島市の3事業所が本年度からこの事業を休止、廃止した。3月末で廃止したある事業所は「いまの利用単価は人件費も下回っており、続けるほど赤字になる。ニーズは高く、障害児のいる家庭を支援する重要なサービスと分かっているが、やむを得ずの選択だった」と、苦しい胸の内を明かした。
岐阜市は、利用単価を全国の中核都市の設定単価などを参考に決めている。単独型で行う事業所の利用単価は本年度から見直され、区分に応じて640円から1740円の幅で引き上げられた。市では「事業所は運営的に厳しく、少しでもマイナスを補足できれば」としながらも、「単価を上げれば、利用者負担も大きくなる」と慎重な姿勢を見せる。
利用単価を、県内5圏域の主な市で比較をしてみると、区分1(軽度の障害)で利用4時間以下の場合、940円から1870円と開きがある。愛知県の愛西市や津島市などは区分設定がなく、4時間以下の利用で一律4000円。
菊池事務局長には、重度の脳性まひがある長男(6つ)がいる。「夜、子どもがせきをするだけでも目を覚ます。この6年、朝まで熟睡したことがないんですよ」。日中の数時間、親子が息抜きできる場所づくりの大切さを訴えている。
日中一時支援事業 障害者自立支援法に基づいた地域生活支援事業の一環。もともとある施設を利用した併設型、日中一時支援事業だけを行う単独型などがある。利用単価は市町村ごとに決定され、設定単価は異なっている。利用者負担は1割、残り9割を市町村が公費負担している。
県内事業所経営ピンチ
自治体設定単価が影響、赤字で撤退相次ぐ
障害児の学童保育を行う「サポートセンターつぼみ」。数時間の支援が親子に憩いの時間をつくっている=岐阜市福光西
障害児を対象に2006(平成18)年10月から始まった日中一時支援事業。家族の負担軽減、障害児の学童保育的な役割を担うと期待される一方、利用単価は自治体ごとに設定されており、単価のばらつきが事業所の運営に影響を与えている。県内では、この事業を本年度から休止、廃止する事業所も出ており、利用者ニーズの受け皿確保が課題となっている。
3月末に、岐阜市福光西で単独型の日中一時支援事業を開設した「サポートセンターつぼみ」は、月約60万円の収入に対し、職員の人件費などを合わせた支出は約90万円。開設当初から月30万円の赤字を抱える。運営は愛知県愛西市に本部を置く「NPO法人夢んぼ」。菊池利哉事務局長(32)=岐阜市東中島=は「本部で赤字補てんしているが、この状態が長く続けば継続も難しくなっていく」と不安を募らす。
ダウン症の小学4年生(9つ)の長男を通わせている母親(46)は「これまでは仕事を終えて学校に迎えに行くと、あとは自宅で過ごす生活の繰り返しだった。ここに通い出してから、初めて1人で息抜きする時間が持てるようになった」と言い、「自分たちには必要な場所。受け皿をなくさないで」と訴える。
岐阜市に登録する日中一時支援事業所のうち、岐阜市、関市、羽島市の3事業所が本年度からこの事業を休止、廃止した。3月末で廃止したある事業所は「いまの利用単価は人件費も下回っており、続けるほど赤字になる。ニーズは高く、障害児のいる家庭を支援する重要なサービスと分かっているが、やむを得ずの選択だった」と、苦しい胸の内を明かした。
岐阜市は、利用単価を全国の中核都市の設定単価などを参考に決めている。単独型で行う事業所の利用単価は本年度から見直され、区分に応じて640円から1740円の幅で引き上げられた。市では「事業所は運営的に厳しく、少しでもマイナスを補足できれば」としながらも、「単価を上げれば、利用者負担も大きくなる」と慎重な姿勢を見せる。
利用単価を、県内5圏域の主な市で比較をしてみると、区分1(軽度の障害)で利用4時間以下の場合、940円から1870円と開きがある。愛知県の愛西市や津島市などは区分設定がなく、4時間以下の利用で一律4000円。
菊池事務局長には、重度の脳性まひがある長男(6つ)がいる。「夜、子どもがせきをするだけでも目を覚ます。この6年、朝まで熟睡したことがないんですよ」。日中の数時間、親子が息抜きできる場所づくりの大切さを訴えている。
日中一時支援事業 障害者自立支援法に基づいた地域生活支援事業の一環。もともとある施設を利用した併設型、日中一時支援事業だけを行う単独型などがある。利用単価は市町村ごとに決定され、設定単価は異なっている。利用者負担は1割、残り9割を市町村が公費負担している。