ゴエモンのつぶやき

日頃思ったこと、世の中の矛盾を語ろう(*^_^*)

災害に負けない(3) 障害者への援護

2008年08月22日 14時00分33秒 | 障害者の自立
 知的障害、発達障害などで判断力やコミュニケーション能力に問題がある人は、災害時の避難や生活に大きな困難を伴う。行政の対応を求めるとともに、さまざまな自助の取り組みも出てきた。

 日本自閉症協会(東京)は先月、支援者向けに「防災ハンドブック」(A6判、二十三ページ)を作った。

 自閉症の人たちは▽想像力が弱く危険が迫っていることを理解できない▽困っていることを他人に伝えられない▽声をかけられても適切な返事ができない▽避難生活に混乱して集団行動も取りにくい-などの問題を抱えやすい。

 ハンドブックでは「指示や予定は明確に」「大声でしかるのは逆効果」といった対処の基本を解説。一般の避難所では生活できない人のための「福祉避難所」の大切さを訴えている。

 同協会では「日常からの積み重ねが大切。親たちがハンドブックを手に、周囲への理解を求めていってほしい」と話す。

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 知的障害、発達障害の人は、日常生活でも迷子になったり、挙動不審で通報されたりと、さまざまな災難に巻き込まれることがある。東京都板橋区の福祉関係者らで組織する「板橋安心ネット」では、名刺大の「いたばしSOSカード」を作った。地域の障害者団体や警察が連携し、トラブルに対処する目的だ。

 「このカードの持ち主はあなたの助けを必要としています。困っていたり、トラブルにまきこまれている時は、裏面の電話番号にお知らせください」と表記。裏面には、会員番号や連絡先、生年月日などの情報を載せている。板橋安心ネットの加盟団体を利用する障害者が登録し、カードを取得できる。

 ネット事務局の桜井基樹さんは「地域全体で障害者を支えていく姿勢を示したカード。障害への理解が警察、消防、コンビニなどに広がっていくことが大事。それが災害時にも大きな力になると思う」と話す。

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 災害時に支援が必要な高齢者、障害者などの「要援護者」について、国は二〇〇六年に指針をつくった。防災と福祉の関係部局で横断的なチームをつくり、情報を共有して支援に当たることなどを定めているが、各自治体の取り組みはまだ温度差が大きい。

 長野県松本市では、各地区で「防災と福祉のつどい」を開催。住民や行政職員が地域の課題を話し合うほか、地域の高齢者、障害者の家庭を訪ねて、要援護者台帳への登録を呼び掛けるなどの活動をしている。

 「互いに知り合い、信頼関係を築くことが緊急時に役立つ。今、要援護者の支援プランを作成中。障害のある人をだれが福祉避難所に連れて行くか、専門家とどう連携するか、なども盛り込んでいきたい」と同市の防災担当者。

 九月一日の防災の日には、中学生も参加して福祉避難所の設置運営の訓練を行う。 

災害に負けない(2) アレルギー メールで連携、細やかに支援

2008年08月22日 13時59分35秒 | 障害者の自立
 昨年四月十五日の正午すぎ、三重県中部で最大震度5強の地震が起きた。「あれるぎっこおひさまの会四日市」代表の浅川知香子さんは、ちょうど東海四県の患者会などでつくる「東海アレルギー連絡会」の会合に出席するため名古屋に向かっていた。

 直後は不通だった携帯メールが通じると、連絡会から「安否確認を練習しよう」と連絡が。浅川さんは一斉メールで会員に「けがなどないですか?」と送った。

 二時間後には十五人の会員ほぼ全員から大丈夫の返事があったが、外食中の会員から「お皿がひっくり返った。もし劇症型アレルギーの子が触れたら危ないと感じた」と報告も。浅川さんも「もっと大きな地震だったらメールを打っていられない。その後、あらかじめ文章を用意して保存しました」と振り返る。

 東海地震の発生が心配される東海地方。全国初の安否確認システム「防災・救援ネットワークシステム」は、NPO法人アレルギー支援ネットワーク(事務局・愛知県岡崎市)が今年二月、スタートさせた。東海アレルギー連絡会も団体登録している。携帯電話のメールを利用して安否確認や救援依頼、相談受け付け、情報配信などを進める。普段は相談、情報収集にも活用できる。

 愛知、静岡県内にいる「支援ネット」の四人が、災害時に強いPHSを持ち、被災情報をキャッチすると、登録者に安否確認メールを一斉送信。加盟団体は安否確認後、団体間で物資を融通し合うなどで支え合う。

 支援ネット理事の栗木成治さんは、一九九五年の阪神・淡路大震災の際、アレルギー対応ミルクや非常食を持って被災地へ通った。食物アレルギーの患者は避難所の食事がほとんど食べられない。乳児は対応ミルクがなければ、お手上げだ。

 原因物質を吸い込んだり、触れたりするだけで命の危険につながる患者もいた。ほこりが多く、入浴や洗濯がままならない避難所ではぜんそくやアトピーなども悪化しがちで、避難所に行かず孤立する患者家族も多かった。栗木さんは「必要な人に必要な物を届ける支援が一番大切」と実感。所在とニーズをつかむシステムづくりを考えた。

 連絡会加盟団体のメンバーは計約五百人。個人登録は五十人ほどにとどまっており、登録を呼び掛けている。インターネットで「アレルギー支援」で検索できる。ネットには「個人で最低三日分の食料備蓄を」などのアドバイスや防災品の購入先、緊急連絡カードなども案内される。

 連絡会は、アレルギー対応食を自宅や診療所など百カ所で計一万食備蓄することを目指すほか、自治体にも備蓄を求め続けている。災害があれば、近くの備蓄場所からバイクボランティア団体などの協力を得て物資を運ぶ。避難先でのアレルギー専門医の開業情報や対応食、衣服、医薬品の入手方法が分かる物流情報のシステム構築も目指す。

 同時に力を入れるのが、正しい理解を広めること。避難所で、重いアレルギーの子が「非常時なんだから食べなさい」と言われたり、入浴や衣類などで個別の配慮を求めるとわがままと取られたりしかねない。浜松市で災害ボランティアコーディネーターを務める鵜飼愛子さんも「見た目で分からないアレルギー患者支援の必要性は地元の防災会議などでもまだまだ知られていない」と話す。

 「支援ネット」は紙芝居や絵本を作り、啓発を進めていく。事務局長の中西里映子さんは「一人一人が日ごろから近所と交流を持ち、正確な情報を知ってもらうことが何より大切」と話している。

災害に負けない(1) 生活不活発病 活動量や質の低下に注意

2008年08月22日 13時58分11秒 | 障害者の自立
 大きな地震が相次ぐ日本列島。ご家庭の備えは万全だろうか。高齢者や慢性疾患の患者、障害者、幼児などがいる家庭は、いざというときの対策をより注意深く練っていく必要がある。今月は、災害に負けないための備えを医療面から考えていく。 (安藤明夫)

 避難所で、高齢の被災者が昼食の分配を手伝おうとしたら、ボランティアの若者が「これは私たちの仕事です。無理しないでください」と、トレーを奪うように取った。

 国立長寿医療センター研究所(愛知県大府市)の生活機能賦活研究部長・大川弥生さんは、二〇〇四年の新潟県中越地震の被災地で見た光景に衝撃を受けた。

 「援助する側が生活不活発病の知識を持たないために、被災者の役割を奪い、動く機会を奪っていたんです」

 「生活不活発病」とは、体を動かさないことで心身の機能が低下する状態。筋力や心肺機能が落ち、うつ病や寝たきりにもつながる。学術名は「廃用症候群」だが、高齢者が不快感を持たずに本質を理解できるようにと大川さんが生活不活発病と名付けた。

 地震の半年後、大川さんが同県長岡市内で約二千人を対象に実施した生活機能調査によれば、健康で自立していた高齢者のうち、屋外歩行が難しくなったと感じる人が25%、屋内歩行も難しくなった人が6%いた。病気ではなくても環境の変化によって生活機能が落ちることを示した。

 以後、厚生労働省では大地震などの災害のたび、被災地の自治体に生活不活発病予防対策を促す通達を出しているが、「被災者は安静に、無理をさせない」という意識はまだ根強いという。

 大川さんは「避難生活では、料理、洗濯、掃除などの活動量も減るし、家庭や地域の中での役割も低下して生活全体が不活発になりやすい。活動の量や質が低下している高齢者を早期発見して、原因を確かめ、手助けをしていく必要がある」と訴える。

 その人らしい、いきいきとした生活を取り戻すことが大切で、一般的な対策としては▽散歩やスポーツは生活の活発化に効果的▽避難所では昼間は毛布を畳み、横にならないようにする▽何らかの役割を持つ▽ボランティアによる必要以上の手助け・介護を避ける-などを呼び掛ける。

 リスクの高い人を早期発見するために「生活機能チェック表」も作った。<1>屋外歩行<2>自宅内歩行<3>その他の生活行為(食事、入浴、洗面、トイレなど)<4>車いす<5>歩行補助具・装備の使用<6>外出頻度<7>家事<8>家事以外の家の中での役割<9>日中活動性-の各項目ごとに災害前と現在の状態を比較するもので、低下している場合は、早く手を打つことが大切になる。

 被災地では、保健師が核となって被災者の状態を調査、理学療法士、作業療法士なども専門分野で手伝っていく形が理想という。

 大川さんは「生活不活発病は災害時だけの問題ではありません。日ごろから自分の活動が低下していないか点検し、改善に努めることが、いざという時にも役立つ」とアドバイスする。