災害時の避難はまさに「想定外」の連続。4月に起きた熊本地震では、どのようなことが起きていたのだろう? 毎月話題になったニュースを子ども向けにやさしく解説してくれている、小中学生向けの月刊ニュースマガジン『ジュニアエラ』に掲載された、ジャーナリストの堀潤さんの現地リポートを紹介する。
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■避難先でさらに待ち受ける困難
4月中旬、熊本県や大分県で最大震度7の非常に強い揺れの地震が、2回も発生しました。地中から「ドーン」と突き上げるような強い揺れに加え、地震発生から約1カ月で、震度1以上の余震は1500回超。建物や橋が次々と壊れていったのです。
2度の強い地震が発生したのは、前震が14日の午後9時26分、本震が16日の午前1時25分と、ともに夜でした。子どもを抱えたお母さんは毛布と哺乳瓶を握りしめ、体の具合の悪いお年寄りは息子さんに背負われ、命からがら家を飛び出しました。涙を流しながら避難所に向かった人もいます。
ところが、やっと避難所に着いて「助かった!」と思ったのもつかの間、そこでも、さまざまな困難が待ち受けていました。最大20万人ともいわれる人がいっせいに避難したため、避難所には収まりきらず、小学校の校庭や渡り廊下、屋外で野宿せざるを得ない人たちが大勢出たのです。
また、人であふれかえった避難所をあきらめて、自分の車の中で寝泊まりする人たちも少なくありませんでした。「赤ん坊が泣いて迷惑になるといけないから」「持病があって硬い床で寝られないから」「余震が怖くて建物の中にいたくないから」など、理由はさまざまです。
ぼくが取材をした家族は、親と子どもの4人で3週間以上、車で避難生活を続けていました。避難所にいないので、食料の配給が受けられず自力で調達。
狭い車内で同じ姿勢のまま過ごすことで体調を壊す人もいます。「エコノミークラス症候群」といって、血の巡りが悪くなり血管が詰まるなどして、最悪、死にいたる症状です。定期的に体を動かしたり、血の巡りがよくなるようにマッサージをしたり、工夫が必要でした。
■食料支援がない避難場所もある
また、避難所にいながら、食料の確保に大変苦労した人も多くいました。
災害時の対応などを定めた法律「災害対策基本法」のなかに、「指定緊急避難場所」と「指定避難所」という言葉が出てきます。前者は、地震や津波などからいち早く身を守るために逃げ込むことができる、高台や公園などにある安全な場所や施設。後者はそこにとどまって食料支援などを受けながら避難生活を送ることができる施設を指します。
「指定緊急避難場所」か「指定避難所」かは、災害による影響が比較的少ない場所であることや、生活物資の運搬がしやすい環境であることなど、法律によって条件が定められています。つまり、すべての小・中学校などの避難所がこの「指定避難所」ではないのです。
今回の熊本地震では、身を寄せた避難所が「指定避難所」かどうかで、状況が大きく異なりました。「指定避難所」に避難した人は、自治体からの物資や自衛隊からの支援を優先的に受けられましたが、同じ区内でも「指定避難所」でなかった場合は、避難した人たちが自力で食料を調達しなくてはならなかったのです。
10カ月の赤ん坊を抱えたお母さんは、避難した体育館で「ここは指定避難所ではないので、食料は届きません」と聞いたときに、目の前が真っ暗になったと言っていました。そうした避難所では、インターネットを使って助けを求めるなどして、全国からの直接支援で水や食べ物をかき集め、何とかしのいだという状況です。
■自分の命は自分で守る
みなさんも今のうちから自治体のホームページなどを見て、家の近くの避難先が「指定避難所」かどうかを、確認しておきましょう。
また、自力で避難生活を送らなくてはいけなくなった場合のために、飲み水や食料、日用品をしっかり準備しておくことも必要です。とても厳しい言い方ですが、災害が起きたらまずは「自分の命は自分で守る」ことを心がけましょう。(解説・堀潤/ジャーナリスト)
【いろいろな種類の避難場所※】
種類:指定避難所
特徴:災害により家に戻れなくなった人が一定期間生活する施設で、食事や宿泊などができる。
物資の備蓄:◯
種類:指定福祉避難所
特徴:指定避難所での生活が困難な高齢者や障害者などの避難所。食事や宿泊などができる。
物資の備蓄:○
種類:指定緊急避難場所
特徴:地震や津波など災害の種類別に指定され、緊急に避難するための場所。「一時避難所」ともいう。
物資の備蓄:×
種類:広域避難場所
特徴:大火災が発生し、延焼が拡大した場合に避難できる。大人数が収容可能な広い公園や校庭。
物資の備蓄:△
※避難場所の名称や物資の備蓄の有無は自治体により異なる場合も
※月刊ジュニアエラ 2016年7月号より
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