障害者の就農と賃金アップにつなげようと、宮崎県延岡市の不動産会社「和光産業」社長、児玉雄二さん(65)が、障害者就労支援施設と協力し全国的にも珍しい焼き芋の自動販売機を設置した。農業と福祉の連携から「農福やきいも」と名付けた焼き芋は飛ぶように売れており、福祉関係者は「就労の場が広がり、賃金アップも期待できる」と注目している。
児玉さんは亡父が残した農地約1ヘクタールを活用しようと農協の農業塾に通い、5年前に野菜作りを始めた。その後、障害者就労支援施設「めだかハウス延岡」などを経営する押川敬視(たかし)社長(34)と知り合い、3年前に障害者3人が野菜作りに加わった。
直売所に出しても利益がほとんど出なかったが、イベントで焼き芋を出したところよく売れた。「焼き芋を自動販売機で売れば人件費がかからず、雨の日でも障害者が仕事ができる」と思いつき、鹿児島市の大手電機メーカー代理店に相談して自販機を製作した。
栽培した約10センチ大の芋を焼き、紙袋に入れて缶に詰め自販機にセットする。芋は宮崎紅など3種類で210円と250円。温・冷の両方がある。3月初旬に和光産業の社屋前に置いたところ、高校生など女性に人気で、1カ月に800個売れる勢いに。
児玉さんによると、芋の自販機は奈良県に1カ所あり、九州では初めて。年内に延岡、宮崎県日向市に計10台設置し、年間2000万円の売り上げを目指す。フランチャイズ方式で広げていくといい、台湾にも設置を計画している。手作業だと1回に焼ける芋は40個だが、80個焼ける自動芋焼き器も導入して増産を狙う予定だ。
1缶当たり40円を施設側に払う計画が進めば約20人の障害者が作業に携われて賃金を得られるという。押川さんは「新しいビジネスモデルで、他の障害者支援施設に広げられる。社会的意味合いは大きい」と話している。
毎日新聞 2019年4月19日
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