10日前の朝日新聞に、「抗うつ薬は、承認された用量の範囲内の少なめの量を飲むのが最も効果的とする研究結果を、日英などの国際チームがまとめた。結果をもとに研究者は、少ない量から始めて副作用に注意しながら増やすことを勧める学会の治療指針の見直しが必要と指摘する」という記事がのった。
新世代の抗うつ薬は、副作用を避けるために、もともと、日数をかけて、ゆっくりと服薬の効果がでるように設計されているから、「少ない量から始めて副作用に注意しながら増やすこと」は、全く意味がなく、逆に、過剰に摂取する危険がある。だから、最初から所定の用量を服用すべきだという指摘は、納得いくものである。
これまでも、朝日新聞に大事な向精神薬の記事があったが、人は忘れやすいので、もう一度、ここに記す。
約3年前、朝日新聞に、記事『子供のうつ病に診療指針』がのった。記事はまず、子どものうつ病の特徴を指摘する。
「うつ病は児童・思春期の間に5%がなる」、「大人との違いとして抑うつ気分のかわりに怒りやすくなる場合がある」。
次に、抗うつ薬の現状を述べる。
「現時点では、国内での臨床研究で安全性や有効性が示された子ども用の抗うつ薬は存在しないと(指針が)明記」、「大人のうつ病に効果がある薬の中には、子どもには効果がなく、かえって副作用が出てしまうものがあることに注意しなければならない」。
そして、服薬以外の治療も必要だ、と述べる。
「家庭内のいさかいや学校でのいじめが影響していることが少なくなく、家族や学校と連携して治療を進めることが欠かせない」、「(夫婦)けんかは子どものいない時にするよう両親に頼んだり、いじめへの対応を教師に求めたりと、『環境調整』を行うことが多い」。
記事は、子どもへの安易な抗うつ薬の使用を戒めるものだった。
NPOで私の担当している子どもは、中学2年から抗うつ薬を服用しており、高校3年になって減薬を始めた。ちょうど両親の離婚と重なり、母とともに実家に引っ越したこともあり、離脱症状を起こし、減薬に失敗した。
そして、その失敗の後、気持ちが落ち込むと、自分から、抗うつ薬の増量を求めるようになり、医師がそれに応じている。大丈夫なのか、と心配になる。
また、記事『子供のうつ病に診療指針』の2か月後に、朝日新聞は、「知的能力障害」のある子どもの8人に1人に抗精神病薬が与えられていることが、健康保険組合の診療明細書(レセプト)の分析からわかった、と報じていた。
健康保険組合の診療明細書の分析から、わかったということは、向精神薬が保険対象外の用途に使われていたから ではないか、と思う。もし、診断名をいつわれば、対象外に使われても発覚しないから、実態は、もっと多くの「知的能力障害」の子どもたちに、効用が認められていない用途に、薬が与えられていることになる。
実際、私のNPOにきている「知的能力障害」や「発達障害」の子どもたちも、パニックをおさえるためとして、向精神薬を服用しているのがめずらしくない。そして、これは、親の要望によることが多い。
メディアは、定期的に、薬の危険性を親たちに啓蒙していく必要がある。