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まほろ界隈逍遥生々流転日乗記

ありがとう、大瀧詠一さん、そしてサヨナラ!

2014年01月06日 | 音楽
 大瀧詠一さんが昨年末30日午後に亡くなられたのを知ったのは、大みそか31日のお昼の出勤前、パソコンで知り合いの方に近況伺いメールを送った際に偶然覗いたヤフーニュースだった。どうして、こんな年の瀬にと一瞬我が目を疑ったが、ネット上では次々とその突然の訃報が広がっているようだ。なんでも30日夕方5時過ぎに都内瑞穂町の自宅で突然倒れ、搬送された青梅市内の病院で亡くなったらしい。友人がメールで「リンゴを喉につまらせた~?」と教えてくれたが、大瀧さんらしい?冗談のような気がしてその時は何のことやらわからなかった。
 とにかく、邦人アーティストによるトリビュートアルバム2002年「ナイアガラで恋をして」と1989年リマスターの「B-EACH TIME L-ONG」をひっぱりだしてきて聴くことに。30日の夕方といえば、自宅で和室の障子張り替えを終えてひと息ついたころで、偶然にもアップル!レーベルのアーリービートルズソングを聴いてくつろいでいたころ、その時にこんな信じられない悲しい出来事が起きていたなんて!

 元旦の新聞には、その解離性動脈瘤による急死を知らせる記事が載り、3日の朝日新聞夕刊には、早くも内田樹氏の追悼記事が掲載される。それによると「(大瀧さんは)ふつうの人は気づかないものごとの関係を見出す力において卓越した方でした。」とあり、「はっぴえんど」時代の代表曲「春よ来い」(もちろん、相馬御風作詞の童謡やユーミン作とは違う)は、「地方から都会に出てきた青年の孤独と望郷の念をうたう、春日八郎や三橋美智也にも通じる楽曲でした」と述べている。じつは大瀧さん、岩手県の生まれで「日本語ロック先駆者」「実験的なサウンド」という常套句よりも、よほど本質を突いたものと共感する。創造とはまさしく「誰も気が付かなかったものごとの新しい関係性を見出すこと、そしてそこに新たな意味を付与すること」にあると私自身信じているから。

 いま、改めてLPジャケットを眺めながらナイアガラサウンドを振り返ってみる。

「A LONG V-A-C-A-T-I-O-N」(現題はすべてアルファベット表記)は、永井“ペンギン”博画伯!による南方の海辺を思わせる無人のプールサイドの鮮やかで透明感あふれるイラストレーションが、実に印象的なジャケットで1981年のリリース、ちょうどなつかしい大学時代と重なる。そして卒業した84年には、輸入盤仕立ての新譜「EACH TIME」が発売され、すぐさま購入して聴き続けた。井上鑑のストリングスアレンジの素晴らしさと相まって、このアルバムの白眉はなんといっても「ペパーミント・ブルー」だろう。二作品とも作詞松本隆とのコンビ作。85年の小林旭「熱き心に」の歌いだし「故郷の~」後に続くストリングスの調べにぐっと心が揺さぶられた。ツボにはまったオブリガートとはこのようなものだというお手本のようなアレンジははたして大瀧さんのものか?また、シリア・ポールの「夢であえたら」を初めて聴いたときはそのキュートな魅力に参ったが、いまから思うと大瀧さんのコニー・フランシスを思わせる楽曲の魅力が大きかった。そして89年「B-EACH TIME L-ONG」は、なんと前二作の代表曲をフルオーケストラサウンドのイントロでボーカルとともに聴かせたナイアガラサウンドの集大成のようなアルバムで季節を問わずに愛聴した。個人的には、この三作をもってナイアガラサウンドは頂点に達したものと思っている。

 そもそも、大瀧さんの名前が初めて刻印されたのは、70年代中高校生のころの若き秋吉久美子の水着姿がまぶしかった「三ツ矢サイダー」CMサウンドの作者としてだった。なんてシャレたコーラスとメロディーなんだと、洋楽の豊饒な世界を知らない片田舎の少年の心をとらえたものだ。それ以来、上京してから少しずつLPを買い求めていって、コミックバンド風な洒落や冗談にも並々ならぬ才気を感じずにはいられなかった。いまにして思えば「ナイアガラ音頭」なんて、大瀧さんの薀蓄と余裕であったに違いない。福生と相模原と横浜横須賀が国道16号線で結ばれていることをただただうれしく思ったものだ。大瀧さんが小津安二郎ファンで、映画ロケ地めぐりが趣味というのも親近感を覚える。
 

 永遠の「ロング・バケーション」に旅立たれた大瀧さん、リンゴを食べている最中に倒れられるなんて本気であなたらしいのかもしれませんね。大瀧さん、生まれて65年の音楽人生は、望んだとおり「はっぴいえんど」=「幸せな結末」でしたか? 
 生のステージに接することは叶いませんでしたが、同時代にあなたの音楽を聴くことができて本当に幸せです、ありがとう!ございました。

 
  2013.12.31町田東急ツインズイースト 新星堂店頭にて、出勤途中に。


 
   
  2014.1.6 町田モディ タワーレコードにて。「大瀧詠一ファースト」「ナイアガラ トライアングルVOL.1」を購入。前者には「三ツ矢サイダーCM」につながる楽曲も聴かれ、後者には若き日の山下達郎、大貫妙子、吉田美奈子の声が。