現代川柳『泥』第三号
池 さとし作品
まずは、「湯豆腐」と「不発弾」。
湯豆腐とまた越冬の話する
静かな男がひとり 不発弾
この二章から発信される意味は理解できる。しかしそれだけでは伝習の範疇い留まってしまう。意味は分かってもらうこともさることながら、感動の伝達によるスピりットの共鳴こそが川柳のいのちではなかろうか。
刃物研ぐ刃からたちまち風尖る
工作のためではなく、あやめるために刃物を問いでいるのである。非日常の中で男はいくたびかこんな哀しみを重ねていく。作者はそれを「風尖る」と告白していて、その想いが直に伝わってくる。
人間ドックイエローカード加速する
勤務先の医務室であるいは病院で、いくたび「イエローカード」を出されたことであろう。しかも加齢とともにそのスピードは増していくのだ。せめてレッドカードが出ないことを祈ろう。
木の瘤のユーモア月が目を覚ます
いつもはむっつりしている「木の瘤」が、めずらしく洒落を吐いたのである。そのことに驚いたお月さんが目を覚ましてしまったのだ。さりげない一章であるが、なんともいえない諧謔が漂っている。
生き死にのアドリブ泡と戯れる
人生は泡のようなものであると書いた作家がいたが、作者は生死を「アドリブ」として泡と戯れているのである。このアイロニーは強烈。どのような泡と戯れるかは人それぞれであるが、大いに戯れてみることにしよう。
池 さとし作品
まずは、「湯豆腐」と「不発弾」。
湯豆腐とまた越冬の話する
静かな男がひとり 不発弾
この二章から発信される意味は理解できる。しかしそれだけでは伝習の範疇い留まってしまう。意味は分かってもらうこともさることながら、感動の伝達によるスピりットの共鳴こそが川柳のいのちではなかろうか。
刃物研ぐ刃からたちまち風尖る
工作のためではなく、あやめるために刃物を問いでいるのである。非日常の中で男はいくたびかこんな哀しみを重ねていく。作者はそれを「風尖る」と告白していて、その想いが直に伝わってくる。
人間ドックイエローカード加速する
勤務先の医務室であるいは病院で、いくたび「イエローカード」を出されたことであろう。しかも加齢とともにそのスピードは増していくのだ。せめてレッドカードが出ないことを祈ろう。
木の瘤のユーモア月が目を覚ます
いつもはむっつりしている「木の瘤」が、めずらしく洒落を吐いたのである。そのことに驚いたお月さんが目を覚ましてしまったのだ。さりげない一章であるが、なんともいえない諧謔が漂っている。
生き死にのアドリブ泡と戯れる
人生は泡のようなものであると書いた作家がいたが、作者は生死を「アドリブ」として泡と戯れているのである。このアイロニーは強烈。どのような泡と戯れるかは人それぞれであるが、大いに戯れてみることにしよう。