一句へのこだわり・・・池 さとし 作品
道柳界は男性作者よりも女性作者の方が生気変わらず、自在な境地を保ち続けているといえる。その中にあって、いま最も注目されている男性柳人は池さとし氏であろう。
音のないけむりが西へ行きたがる
ひとつかみ星納骨堂に降りてくる
散文的エネルギーのある文体がさとし作品の本領なのであろう。る止め作品が30句中12句と多いことも肯ける。
一句目の無常感漂う佳句、二句目のヒューマンな感覚の冴えが美しい秀句、いずれも直情的表現が効果的であった。しかし、る止め作品は断定的に言い切ってしまうところで、余情に欠ける場合が多い。<人間ドックイエローカードが加速する><ダイヤモンドダスト耳が処刑される>などは読後の余韻に浸る愉しみも無く、素っ気なく感じてしまう。
静かな男がひとり 不発弾
「静かな」は‘静かなる‘にすべきだ。表現が滑らかになるし、イロニーの度合いも微妙に増してくる。
キリストの頬幾条にも冬の滝
鉛筆の先で大きくなる羽音
薄目開けるとガーゼのような十二月
一句目の大胆な発想とそれに伴ったスケールの大きい表現、二句目の日常性への視点の確かさと瑞瑞しい感覚、三句目のデリケートな詩情、いずれも作者の精神の張りと豊かな心象の所産である。休言止めの響きが快い佳唱である。
道柳界は男性作者よりも女性作者の方が生気変わらず、自在な境地を保ち続けているといえる。その中にあって、いま最も注目されている男性柳人は池さとし氏であろう。
音のないけむりが西へ行きたがる
ひとつかみ星納骨堂に降りてくる
散文的エネルギーのある文体がさとし作品の本領なのであろう。る止め作品が30句中12句と多いことも肯ける。
一句目の無常感漂う佳句、二句目のヒューマンな感覚の冴えが美しい秀句、いずれも直情的表現が効果的であった。しかし、る止め作品は断定的に言い切ってしまうところで、余情に欠ける場合が多い。<人間ドックイエローカードが加速する><ダイヤモンドダスト耳が処刑される>などは読後の余韻に浸る愉しみも無く、素っ気なく感じてしまう。
静かな男がひとり 不発弾
「静かな」は‘静かなる‘にすべきだ。表現が滑らかになるし、イロニーの度合いも微妙に増してくる。
キリストの頬幾条にも冬の滝
鉛筆の先で大きくなる羽音
薄目開けるとガーゼのような十二月
一句目の大胆な発想とそれに伴ったスケールの大きい表現、二句目の日常性への視点の確かさと瑞瑞しい感覚、三句目のデリケートな詩情、いずれも作者の精神の張りと豊かな心象の所産である。休言止めの響きが快い佳唱である。