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北海道現代川柳『泥』・・・細川不凍作品評

2007年09月22日 | 川柳
   一句へのこだわり・・・池 さとし 作品  

 道柳界は男性作者よりも女性作者の方が生気変わらず、自在な境地を保ち続けているといえる。その中にあって、いま最も注目されている男性柳人は池さとし氏であろう。

            音のないけむりが西へ行きたがる
            ひとつかみ星納骨堂に降りてくる

 散文的エネルギーのある文体がさとし作品の本領なのであろう。る止め作品が30句中12句と多いことも肯ける。
一句目の無常感漂う佳句、二句目のヒューマンな感覚の冴えが美しい秀句、いずれも直情的表現が効果的であった。しかし、る止め作品は断定的に言い切ってしまうところで、余情に欠ける場合が多い。<人間ドックイエローカードが加速する><ダイヤモンドダスト耳が処刑される>などは読後の余韻に浸る愉しみも無く、素っ気なく感じてしまう。

             静かな男がひとり 不発弾

 「静かな」は‘静かなる‘にすべきだ。表現が滑らかになるし、イロニーの度合いも微妙に増してくる。

             キリストの頬幾条にも冬の滝
             鉛筆の先で大きくなる羽音
             薄目開けるとガーゼのような十二月

 一句目の大胆な発想とそれに伴ったスケールの大きい表現、二句目の日常性への視点の確かさと瑞瑞しい感覚、三句目のデリケートな詩情、いずれも作者の精神の張りと豊かな心象の所産である。休言止めの響きが快い佳唱である。
コメント
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