お日さん、雨さん
ほこりのついた
芝草を
雨さん洗って
くれました。
洗ってぬれた
芝草を
お日さんほして
くれました。
こうして私が
ねころんで
空をみるのに
よいように。
まぼろしの名詩が50年ぶりに発掘されてから、昭和59年に第一版が刊行されました。(1903~30)
金子みすず詩集より(1903~30)
波 の 橋 立
波の橋立よいところ、
右はみずうみ、もぐっちょがもぐる、
左ゃ外海、白帆が通る、
なかの松原、小松原、さらりさらりと風が吹く。
海のかもめはみずうみの鴨とあそんで
日をくらし、
青い月出りゃ
みずうみの、ぬしは海辺で
貝ひろう。
波の橋立、よいところ、
右はみずうみ、ちょろろの波よ、
ひだりゃ外海、どんどの波よ、
なかの石原、小石原、
からりころりと通りゃんせ。
童謡の詩です。海とみずうみを眼下に望み、その風情の対比を試みています。
「かもめ」がその海と、みずうみを行きかう「昼と夜」の生態さえも教えてくれているような気がします。「かもめは今でも、海が荒れると察すれば、水のあるところならどこでも退避します。」
「ちょろろの波」「どんどの波」で、みずうみはわずか「湖面を走る波」海「高波」だから、かもめがホームグランドを離れ、湖の「鴨」と遊んでいるのですね。「鴨」も、穏やかな海で遊ぶのですよ・・蛇足まで。
「もぐっちょがもぐる」「ちょろろ」「どんと」「からりころり」のリズム感と大きなイメージを連想させてくれます。
「どんな絵描きさんでも、この風景を絵にすることは至難のわざでしょう・・」
みすずさんのチャレンジの姿が眼裏に浮かんできそうです。