大阪に本格的な夏の訪れを告げる風物詩「愛染まつり」が6月30日から始まります。
大阪市天王寺区、勝鬘院 愛染堂の夏祭りで、天神祭、住吉祭と合わせて大阪三大夏祭りの一つ。
しかし、今年は祭りの内容が大幅に縮小され、露店(縁日屋台)ナシ、初日の愛染娘の宝恵駕籠パレードもナシ。
そもそも愛染娘の募集自体行われておらず、夕方から境内で開かれていた演芸大会もありません。
愛染堂のページによると、例年通り行われるのは以下の行事だけ。
・秘仏本尊(愛染明王・大日大勝金剛尊)のご開帳
・初日の四天王寺による法要「夏越の大祓え大法要」
・大阪真言青年会による「愛染まつり護摩法要」
・摂州地車囃子かずらによる祭囃子の奉納
・境内での宝恵駕籠の常時ディスプレイ(写メ スポット)
大阪日日新聞には『愛染まつり原点回帰』(6/26)とあります。法要などお寺の宗教行事がメインになり、夏祭りのにぎわいはすっかり影をひそめた感じ。
2017年の愛染娘の宝恵駕籠パレード。今年は見られない(撮れない!)のが残念。
昨年までは、JR天王寺駅近くの「あべのキューズモール」で出発イベントの後、愛染娘の宝恵駕籠パレードが谷町筋を北上。愛染堂に着くと、境内で愛染娘を一人ずつ乗せてかご上げ、という華やかな風景がありました。
◆近隣トラブルが祭り縮小の原因
愛染まつりが大幅縮小されたのは、ここ数年の近隣トラブルが原因。露店が並ぶ谷町筋にごみが散乱、一部の若者が深夜まで騒いだり、暴走族が集まるのが常態化したためだそうです。
宝恵駕籠パレードなど昼間の行事を見た限りでは、良い感じの祭りの風景で、特に問題はなさそうでしたが、夜間がひどかったようです。ネットで関連記事を探すと「ヤンキ―ばかりで怖い」という書き込みもありました。
以下は、産経WESTの記事(5/8)から引用。
『「怖いイメージの祭りになってしまった」。愛染祭を主催する愛染堂勝鬘院の山岡武明住職はこう嘆く。
愛染祭は、同院境内や大阪市天王寺区の主要道・谷町筋沿いが会場。周辺には民家も多く、最近はマンションも増えている。山岡住職によると、地元住民からの苦情がここ5年ほどで急増。「マンションに立ち小便をされた」「散乱するごみをどうにかしてほしい」など、祭りに訪れた一部の若者らへの苦情が警察や寺側に多数寄せられるようになったという。
終電がなくなる深夜まで若者らが最寄り駅や歩道にたむろ。参拝客らに見せつけるように、谷町筋に暴走族が集まるのも恒例になってしまっていた。
過去には花火を行う集団や、道路でキャッチボールをする人まで。祭りの実行委員会メンバーの男性は「昔と違い、愛染祭の雰囲気がおかしくなっている。暴れている若者たちは境内すら訪れず、周囲で騒いでいるだけの人も多い」と憤る。』
こういうひどい状態では、祭りを続けられないと、住職さんら関係者は深刻に悩まれたと想像されます。
このさい、思い切って祭りを原点に戻そうと、大幅縮小という決断に至ったのは、やむを得ないかも。
ただ、ゴミ問題や若者がたむろする誘因になる露店をなくすのは理解できるとして、愛染娘の宝恵駕籠パレードまでなくしてしまうのは、どうなんでしょうか…
近隣トラブルと、あまり関係がないのでは。
愛染まつりを無形民俗文化財として指定した大阪市の紹介文には、
『大阪市中の新地の芸者衆が駕籠を仕立てて行列し参拝する風習である宝恵駕籠(ほえかご)行列は、文献史料的には十日戎よりも先行する。』
と、歴史的価値を認めていることですし…
まあ、愛染娘の写真を撮りたいという、個人的な都合からそう思うのかもしれませんけどね。
大阪三大夏祭りのもうひとつ「天神祭」も苦境。府や市の補助金削減、協賛企業の撤退、警備費増大などで累積赤字が膨らみ、船渡御の規模を縮小する一方、クラウドファンディングでサポーターを募集中。
伝統の祭りを続けていくのは、なかなか大変なようです。