仕事で車を運転していると
「お好み焼き」
と書かれた看板が目に入って来た。
ちょうど昼時だったのでここで買う事にした。
持ち帰り販売のみの店だった。
間口3m位の店舗で、
歩道に面して対面販売する古い形態の店だった。
店先のカウンターにはアルミホイルに包まれた
状態のお好み焼きが数種類並んでいる。
ガラスケースに並べられた商品の上には
赤っぽい光を放つ白熱電球のような
ものが吊り下げられていていた。
この電球が保温の役割を果たしているようだ。
店の前に車を停め、足早に店頭に向かった。
道路に面したカウンターの奥には、
頭に手拭を巻いた推定60歳前後のオヤジが立っていた。
オヤジは威勢の良い声で
いらっしゃい
と言った。
並んでいるお好み焼きは5種類あった。
肉入・・イカ入り・・肉玉子・・イカ玉子・・デラックス・・
どれにしようかと一瞬悩んだ、
そのき、オヤジが声を掛けて来た・・
焼きたてですよ!!どれにしましょう
愛想の良いニコヤカな表情で、たいへん威勢がよい掛け声だった。
オヤジの顔をチラリと見た瞬間、ウサギセンサーが反応した・・・
なんだかイヤな予感・・・
「 イカ玉を一つください 」
オヤジは露骨なほどに満面の笑みを浮かべて
「ありがとうございます!!!」
と言って袋に入れた。
速やかに車に戻り、早速食べることにした。
お好み焼きを袋から取り出した・・・手に持った瞬間、
更に・・イヤな予感・・・
包みを剥がして一口食べた・・・
悪い予感は的中した・・・やはり・・・
このお好み焼きは今日焼いたもののではない・・・
冷蔵庫に保管したあった
昨日の売れ残りをヒーターの下に数時間置いて
温めなおしたものだった・・・・
表面だけ暖かく、中の方は冷たかった。
フンワリした食感がなく団子のように硬かった、
風味も悪く、お世辞にも美味しいとは言えないものだった。
私は思った・・・
もう二度とこの店で買ってやらない
愛想よく調子のよいオヤジに腹が立った・・・
もし仮に、昨日の売れ残りであったとしても、
劣化していないものならまだ許せる。
そこまで拘ることも野暮である。
しかしながらこの場合、明らかに劣化していて、
食べるのが苦痛だった。
非常に腹が立つが、
オヤジに文句を言ってやろうとは思わなかった。
私と同じ思いをした客はたくさんいると思う。
たぶん私と同じように、「二度と買わない」と思うだけで、
抗議する人はは皆無に等しいと思う。
こういうオヤジに紳士的な態度で
穏やかに意見したところで
調子のよい口調でその場しのぎの
愛想を振りまきながら
誤魔化すような対応をして来ると思う。
いままでそれで巧く切り抜けて来たのだろう。
こういう輩は、
それが商売上手であると勘違いしている。
慢性化した悪癖に対しては、
人目など気にせず
真剣勝負で怒って抗議しない事には
無意味だろうと思う。
とは言え・・・
くだらない事でムキになって怒るのも大人げない。
怒っても疲れるだけだ。
平穏を保ちたい。
感情的な口論などしたくない。
耳障りな事は言いたくない。
まぁ、イイか・・・・
ほとんどの人がそう思うだろう・・・
その結果、この店は客は遠のき衰退して行く。
売り上げが減る ⇒ 売れ残りが増加する ⇒ 翌日再販する
この循環を繰り返すことになる。
例え欠品してでも、生産量を調整するか、
売れ残りが出そうなときは半額に値引きしてでも
売り切ってしまうか、
何らかの改善をしない事には悪循環を
止める事はできない。
詰まるところ・・・
このオヤジ
状況分析 ⇒ 要因分析 ⇒ 対策検討
を怠っているだけだ。
その怠慢を愛想を振りまく事で帳消しに
しようとしている。
この「愛想」とは、
ある意味、文句を言わせないための先手の
自己防衛とも思える。
おい!! オヤジ!!!
何だこれは!!!
アンタ!!! これ自分で食べてみろよ!!!
調子のイイこと言って誤魔化すな!!!
アンタ損得勘定ができないのか???
損してるだけだぞ!!!
愛想振りまく前に誠意を持て!!!
と言ってやりたい。
真剣に怒って、怒鳴る者がもし現れたなら
その人はオヤジにとって
救世主であり、福の神であろう・・・
恥ずかしながら・・・
私はそんな「善い人」にはなれなかった・・・