心電図モニターの波形が平坦になり
ツー という音が残る
ドラマなどで人の死を表わすのによく使われるショット
多くの場合
普通に表れていた正常な波形が
いきなり平坦となりツー
である
急にモニターへの入力を遮断するのであろうが
あまりに安易で陳腐は表現技法だと感じる
実際には正常からいきなり心停止
などということはなく
一旦は頻拍となり
不整脈が出たりしながら
あるところで徐脈傾向が進み
心停止に至る
しかもいったん止まったように見えても
時折心筋の収縮を示す波形がぽつぽつと出る
いきなりツーはまずない
心電図の波形は心臓が動いている証
生きていることを示している
患者さんが亡くなるとき
病室に心電図モニターを持ち込む場合がある
最終的に平坦になった波形をお見せして
死を納得していただく意図があるのだろうが
私は好まない
患者さんを囲む人が
患者自身を見つめず
波形の方にしばしば気がとられるからだ
私は 見守る人たちに
ただただ患者さんの方をみて
話しかけてほしいと思うので
モニターは持ち込まない
先日 主なき実家の整理をしていたら
母の心電図記録が出てきた
検査の日付は旅立つ約9年前
その頃はすでに不整脈はみられるが
確かに生きていた証
最後に見守っているとき
心電図を見ていたかどうか記憶にない
手を握り 頬や額を触り
髪をなぜ
話しかけながら
徐々に間隔が広がり弱くなる呼吸を
感じていたことは覚えている