痔に対する漢方薬としてまず挙がるのが乙字湯(おつじとう)。比較的程度の軽い痔があり、かゆみ、痛み、出血、脱出などがあるときに使います。大黄が入っているので少し便秘気味の方に使うことが多いです。また陰部掻痒症などに効果があることもあるようですから、漢方薬というのは不思議なものです。柴胡が入っているからか、うつうつとしていた人が元気になったなどという報告もあるから漢方薬は驚きを与えてくれることもあります。
当帰が血の循環を良くし、柴胡や黄芩が炎症(熱)を沈めてくれるとされています。
保険適応は、切れ痔といぼ痔。この病名がついていないと処方はできません。でも多くの人が痔主ですから、あまり困りません。
この処方は、江戸時代の原南陽という漢方医が作り上げたということらしいですが、現在使われている乙字湯は生薬の内容が少し変わっているようです。この原南陽はかなりの酒好きだったようです。酒場で出会う水戸藩士と仲良くなり、薬を出したりしているうちに、医師たちから匙を投げられたお殿様の診療を頼まれることに。症状を聞いて診察に行く道すがら買い求めた生薬を煎じ、効果が出るまで酒を飲んでいたなんていう話が残っているようですが、真偽のほどはどうでしょうか。ちなみに、いぼ痔に飲みすぎはあまりよろしくないことが多いようですが。
痔に対して処方するものには、桂枝茯苓丸、芎帰膠艾湯、補中益気湯、当帰建中湯その他いろいろあります。乙字湯がすべてではないので、医師、薬剤師とよく相談してください。
《処方語呂合わせ》当帰・柴胡・黄芩・甘草・升麻・大黄
乙だね東西黄金 甘露な酒一升枡で大往生
乙(乙字湯)だねと言いながら、東(当帰)西(柴胡)の黄金(黄芩)を手に入れるという甘(甘草)露な夢を見ながら、酒を一升枡(升麻)であおりすぎ大往(大黄)生してしまったとさ。