ハリソン君の素晴らしいブログZ

新旧の刑事ドラマを中心に素晴らしい作品をご紹介する、実に素晴らしいブログです。

『大都会/闘いの日々』#01

2018-09-30 20:25:05 | 刑事ドラマ'70年代









 
☆第1話『妹』(1976.1.6.OA/脚本=倉本 聰/監督=小沢啓一)

殺人を犯して逃走中の暴力団員(石橋蓮司)を逮捕すべく、彼の妹(水沢アキ)に協力を要請する城西署の黒岩刑事(渡 哲也)たち。カタギのOLで、しかも結婚間近の大事な時期である妹は、頑なに捜査協力を拒みます。

そんな彼女に、自分の妹=恵子(仁科明子)への想いを重ね、苦悩する黒岩。

黒岩は捜査第四課の所属、つまりマルボー(暴力団絡みの事件担当)である為にヤクザの恨みを買い、妹の恵子を輪姦されてしまった!という、暗いにも程がある過去を背負ってる。

恵子にも恋人がいた筈なのに、最近どうやら別れてしまったらしい。もしかすると、それも例の過去が原因なのかも………

どうですか、重いでしょう? 暗いでしょう? 地味でしょう? スーパーマシンをぶっ飛ばしながらショットガンを乱射する、あのグラサン団長と同一人物とはとても思えませんw

クライマックス、犯人は自分の妹を盾にして逃走を試みるんだけど、黒岩は迷わず突っ込み、暴力とショットガン抜きで逮捕して見せます。

「あんた、人質の命なんかどうなってもいいと思ってるのか!?」

本作でデビューした新人俳優=神田正輝さん扮する新米記者が、棒読み台詞で黒岩を責め立て、すぐさま批判記事を掲載するんだけど、黒岩は黙って背中に苦渋を滲ませるだけ。いやはや、渋い。けど、辛気くさい!w

もちろん、黒岩は確信してたんでしょう。犯人が、自分の妹を殺すワケがないって。誰よりも愛する、我が妹を……

『北の国から』を連想させる、兄と妹の絆。脚本の倉本聰さんは、狭いアパートで同居する黒岩頼介&恵子の兄妹に、ちょっと近親相姦的な匂いも漂わせたかったのかも知れません。

『西部警察』の古手川祐子さんだとイメージが若すぎて、渡さんと兄妹っていう設定にムリを感じるけどw、淑やかな仁科明子さんならサマになりますね。

仁科さんは当時23歳。松方弘樹さんと不倫騒動の末に結婚&引退するも、1998年の離婚を機に仁科亜希子の名義で女優復帰。がん治療を経験された事から、ACジャパンの乳癌検診CMでもお馴染みの顔になられました。

ゲストの水沢アキさんは当時18歳。後に『太陽にほえろ!』でゴリさん(竜 雷太)の婚約者を演じることになる女優さんですが、歌手としての活動やヌードグラビア、アメリカ人との国際結婚、そしてジャッキー・チェン氏と1年間交際したこと(!)等でも有名な方です。
 
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『大都会/闘いの日々』1976

2018-09-30 12:12:18 | 刑事ドラマ HISTORY

 
1976年の1月から8月まで、日本テレビ系列の火曜夜9時枠で全31話が放映された刑事ドラマ。制作は石原プロモーション。

日本映画が斜陽期に入り、多額の借金を抱え経営危機に陥った石原プロを救ったのは、背に腹は換えられず社長=石原裕次郎さんが渋々出演したTVドラマ『太陽にほえろ!』の大ヒットでした。

当初はテレビというメディアを馬鹿にしてた裕次郎さんも考え方を改め、自社でも連ドラを手掛けたいと『太陽~』のチーフプロデューサー・岡田晋吉さんに相談し、当時『前略おふくろ様』等をヒットさせ注目されてた脚本家・倉本 聰さんを岡田さんが招き入れ、石原プロのNo.2・渡 哲也さん主演を念頭に置いて練り上げた企画が『夜の紋章』というマルボー(暴力団担当)の刑事を主人公にしたストーリー。

それじゃイメージが暗すぎるって事で最終的には『大都会/闘いの日々』というタイトルに落ち着き、石原プロ初のTVドラマ制作がスタートしたのでした。

あの『西部警察』の前身となったシリーズって事でアクション物のイメージが強いかも知れませんが、第1作『闘いの日々』だけは全然違います。なにしろ人間ドラマの権化とも言える倉本聰さんがメインライターですから、ほとんど文芸作品に近い重さとリアリズムを持ったこのドラマにはアクションのアの字もありません。『太陽にほえろ!』が既に国民的人気を獲得しており、それとの差別化や強い対抗意識もあった事でしょう。

あるいは、主役を務める渡哲也さんが大病(そのせいで大河ドラマ『勝海舟』を途中降板)から復帰したばかりで、体調が万全じゃない影響もあったかも?(治療の副作用で、渡さんのお顔がパンパンにむくんでます)

そんな渡さん扮する主人公=黒岩頼介は暗い過去を背負い、部長刑事という中間管理職の悲哀を滲ませ、事件もスカッと解決すること無く、矛盾と理不尽に満ちた毎回の結末に、ますます眉間にシワが寄って行くという世界観。

要するに、リアルで良質なんだけど暗い、重い、地味なドラマで、どちらかと言えば玄人向け。当然ながら視聴率は取れないし創ってる側も楽しくないって事で、松田優作さんを新レギュラーに迎えた第2シリーズ『大都会PART II』からは娯楽アクション路線へとシフトし、それがテレビ朝日系列『西部警察』シリーズや『ゴリラ/警視庁捜査第8班』等へと繋がっていく事になります。

そんなワケで、私個人としては『PART II』を強くオススメしたいんだけど、アクションやヒロイックな刑事ドラマが好きじゃない、あるいは見飽きたと仰る方には、この第1作を是非、試しに観て頂きたいです。

内容の地味さとは裏腹に、キャスト陣はすこぶる豪華絢爛。渋谷を管轄とする城西警察署メンバーとして渡 哲也、高品 格、小野武彦、佐藤 慶、中条静夫、そして東洋新聞や毎朝新聞の事件記者に石原裕次郎、宍戸 錠、寺尾 聰、神田正輝、平泉 征、柳生 博etc…といったメンツ。

見事にオッサンだらけの布陣ですがw、黒岩刑事の妹に仁科明子さん、黒岩に想いを寄せるヤクザの情婦に篠ひろ子さんが扮する他、石原プロ作品恒例の弾き語り歌手を牧村三枝子さんが担当し、花を添えられてます。

松田優作、浅田美代子、石田あゆみ、坂口良子、藤岡琢也、川谷拓三、志賀 勝、木の実ナナほか、豪華ゲスト陣にも要注目の第1シリーズです。

なお、'76年は日テレで『太陽にほえろ!』、TBSで『夜明けの刑事』『Gメン'75』、NETで『非情のライセンス』が継続中のほか、千葉真一『大非常線』(NET)、星正人『刑事くん』(TBS)、篠田三郎・高岡健二『新・二人の事件簿/暁に駆ける』(NET)、高松英郎・山城新伍・江藤潤『刑事物語/星空に撃て!』(CX) 等の刑事ドラマが制作・放映されてました。
 
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『はぐれ刑事』1975

2018-09-30 00:00:17 | 刑事ドラマ HISTORY



 
1975年の秋シーズン、日本テレビ系列の火曜夜9時枠で全13話が放映された刑事ドラマ。制作は俳優座映画放送&国際放映。

東京・浅草を管轄とする台東警察署を舞台に、人情派の中堅刑事=風間(平 幹二朗)とエリート気質の新米刑事=影山(沖 雅也)が、下町の人々とふれ合いながら事件を解決していくヒューマンストーリー。

地味な内容ゆえか当時それほど話題にならず、ガキンチョだった私はその存在すら知りませんでした。10年ほど前にCATVで放映されたのを何話か観ましたが、やっぱり地味で眠たくて継続視聴には至りませんでした。

本作の後番組である『大都会/闘いの日々』もジメジメした内容で、日テレ火曜夜9時枠がハードアクションのイメージを定着させるのは'77年の『大都会 PART II 』以降という事になります。

かくも地味な存在かつ思い入れのない作品にも関わらずここで取り上げたのは、沖雅也さんが『太陽にほえろ!』にスコッチ刑事として登場する1年前に、その原型とも思える刑事像を演じておられるから。

というのも、第1話で沖さん扮する影山刑事が犯人を狙って撃った筈の弾丸が、なんと先輩の風間刑事に当たっちゃうトラウマ設定があるんですよね。

その弾丸を摘出するのが困難で、風間は体内に鉛の塊を残したまま刑事の仕事を続けるんだけど、激しく動くと激痛に襲われ、その度に影山は罪悪感に苦しむワケです。

『太陽~』のスコッチ刑事は、かつて自分が犯人を撃つことをためらったせいで先輩刑事が撃たれてしまい、そのトラウマから非情な性格に変貌したという設定。似てますよね。

ただし『太陽~』のチーフプロデューサーで『はぐれ刑事』の企画にも参加された日テレの岡田晋吉さんは、スコッチのキャラクター造形に影響を与えたのは影山刑事ではなく、テレビ朝日系列の人気時代劇『必殺』シリーズで沖さんが演じた殺し屋だとインタビューで証言されてます。影山はトラウマで人が変わったりはしてないですから、先輩刑事が撃たれちゃうシチュエーションがたまたま似ちゃっただけの事みたいです。

だけど鋭い眼つきとダンディーなスーツ姿はどう見てもスコッチを彷彿させ、少なくともビジュアル面では影響を与えたんじゃないかと思えてなりません。

風間刑事の幼なじみで町医者の新藤(田中邦衛)の義妹=美智子を演じてるのが、後に『太陽~』でスコッチの元婚約者に扮する夏純子さんなのが、またややこしいんですよねw で、その美智子は影山じゃなく風間に惚れてるというw

最終回直前で風間刑事の弾丸摘出手術が成功し、トラウマから解放されたのも束の間、影山刑事は最終回で保護しようとした女の子(市毛良枝)に撃たれ、「死にたくない」と呟きながら絶命します。

このシチュエーションはジーパン刑事(松田優作)の有名な殉職シーンとも似てるし、スコッチ刑事も最期は「死にたくない」と呟いて息を引き取ります。そもそも新米刑事・影山の成長と挫折を軸にしたシリーズ構成からして『太陽~』的なんですよね。

意図して似せたワケじゃないとしても『はぐれ刑事』と『太陽にほえろ!』とは切っても切れない関係、と言って差し支えないでしょう。少なくともテレ朝の『はぐれ刑事純情派』よりはずっと近い。

レギュラーキャストは他に火野正平、ホーン・ユキ、浅芽陽子、小沢栄太郎といった面々。10年前はリタイアしちゃったけど、今一度じっくり観直してみたい作品の1つです。
 
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