ハリソン君の素晴らしいブログZ

新旧の刑事ドラマを中心に素晴らしい作品をご紹介する、実に素晴らしいブログです。

『俺たちの勲章』と44マグナム

2018-09-22 12:00:03 | 刑事ドラマ HISTORY









 
44マグナム(あるいはマグナム44)っていうのは、44口径用のマグナム弾を使う拳銃を指す通称みたいなもので、クリント・イーストウッド御大の出世作『ダーティハリー』で主人公が使ったS&W・M29が一番有名なんだけど、他にも44マグナム弾を撃てる拳銃は存在します。

だけど「こいつは世界一強力な拳銃で、撃てばお前の頭なんか跡形なく吹っ飛ぶぜ」なんて言うハリー刑事の脅し文句がインパクト絶大で、44マグナムと言えばM29、ってなイメージが世間に定着しましたね。

『太陽にほえろ!』でもスコッチ刑事(沖 雅也)が初登場してしばらく経った頃にM29を使った殺人事件が発生し、射撃訓練場でボン(宮内 淳)が試し撃ちをしてみたら、強烈な反動で撃った本人が数メートル吹っ飛んじゃったというw、いくら何でもそこまでって思うような描写がありました。(第234話『おさな子』)

だけど、撃てば人間の頭が粉々に吹っ飛んじゃう位の威力があるのは事実で、本来は熊狩りなんかに使用する目的で開発された武器であり、刑事が護身用に持ち歩くなんて、かなり荒唐無稽な設定なんですよね。

マカロニ・ウェスタンでスターになったイーストウッド御大だからこそ、そういう現実離れしたキャラクターでも何となく許容されたのかも知れません。

あと、御大は2メートル近い長身ゆえ、それ位デカい拳銃でないと絵にならない、みたいな事情もあったのかも知れません。ともかく、映画が世界的に大ヒットしたお陰で、M29=44マグナムも当時、たぶん世界一有名な拳銃になった次第です。

そして日本でもモデルガンが発売され、バカみたいに売れちゃうブームが巻き起こりました。当然、私も44マグナムのモデルガンは持ってます。自分で買ったのは大人になってからだけど、初めて手にしたのは中学時代、クラスメートから譲り受けた国際産業(現コクサイ)の金属製モデル(4インチ)でした。

私が44マグナムに憧れたのは、ダーティハリーよりも『俺たちの勲章』で中野刑事(松田優作)が使ってたから。日本で一番44マグナムが似合うのは、やっぱこの人でしょう。

優作さんが使ってたのは、M29の6インチでした。人気銃だけあって、モデルガンは老舗のMGCやCMC、コクサイなど各メーカーが競作してましたから、『俺たちの勲章』で使われたのがどのメーカーの物なのか、中途半端なガンマニアである私には判別出来ません。(画像のカタログ写真はMGC製品)

モデルガンを提供するメーカーは様々ながら、とにかく44マグナムを主人公に持たせた刑事ドラマは当時、やたら多かったです。それだけ、荒唐無稽なアクション物が沢山創られてたワケですねw

私が憶えてるだけでも『華麗なる刑事』の草刈正雄、『大都会 PART III』『西部警察』の寺尾聰、『警視庁殺人課』の菅原文太、『爆走!ドーベルマン刑事』の黒沢年男、そして『太陽にほえろ!』のスコッチ(後期のみ)、ボギー(世良公則)、ブルース(又野誠治)、さらに『もっとあぶない刑事』の仲村トオルetcと、カスタム系を除いても枚挙に暇ありません。

この内、寺尾さんと沖さん、又野さんがモデルガンじゃ一番長い8・3/8インチ、世良さんと仲村さんが4インチで、他の皆さんは6インチ(あるいは6.5インチ)を使っておられたと記憶します。細かい事だけど、銃身の長さで印象がかなり違うんですよね。

’70~’80年代の刑事ドラマでは44マグナムを所持する刑事さんが、かくも沢山おられたワケですが、非常に大雑把ではあるんだけど、それらを2つのグループに分ける事が出来ます。

1つは44マグナムを「人の頭を吹っ飛ばす威力を持った」極めて危険な武器と認識してる刑事さんのグループと、もう1つは何も考えず、片手で気軽にバンバン撃ちまくる刑事さんのグループですw

後者の代表格は、間違いなく『西部警察』の寺尾聰さんでしょうw もはや『西部』の世界では44マグナムであろうがショットガンであろうが関係無しですからね。その銃を使う理由はただ1つ、とにかくカッコイイからw

他の番組でも、大方は普通の銃と変わんない扱い方をしてたように思います。その辺のリアリティを気にするなら、刑事がこんな銃を持ってること自体が有り得ないだろ?って事なんでしょうね。

だけど、そんな中でも優作さんと草刈さんは、44マグナムをちゃんと44マグナムらしく扱ってるように見えました。さすがは当時最大のライバルどうしで、こだわり所がよく似てるからこそ、お互い意識せずにいられなかったのかも知れません。

ちなみに『俺たちの勲章』で優作さんとコンビを組んだ中村雅俊さんの使用拳銃は、45口径のオートマチック=コルト・ガバメント。電気発火式なんでブローバックはしませんでした。

後に世良さんや舘ひろしさんが使うようになって、ガバメントもヒーローの拳銃として見られるようになるんだけど、'70年代は悪役が使う銃ってイメージが強かった気がします。少なくとも私の中じゃそうだったんで、主役の刑事が使うのには違和感がありました。

それはともかく、基本的に『俺たちの勲章』は青春ドラマなんで、マグナムやガバメントというイカツい銃を使ってるからって、派手な活劇アクションを期待すると肩すかしを食らう事になります。

そんな中でもガンアクションが印象に残ったエピソードをいくつか挙げますと、まずは第1話の『射殺』。

遠距離からライフルで狙って来る敵を前にして、中野刑事(優作さん)が五十嵐刑事(雅俊さん)をオトリ役として走らせ、援護するのかと思いきや煙草を一服し始めるというw、コミカルな場面があって、同じ青春路線でも『太陽にほえろ!』とは違った味わいのアクションを見せてくれました。

それでいて最後は、犯人の恋人(関根恵子=高橋惠子)が見てる目の前で、やむなく彼を射殺するに至るというほろ苦さ。シンコの元カレだったジーパンが、新しい彼氏を殺しちゃったワケですねw

第5話『人質』はかなりハードなエピソードです。かつて犯人を追跡中に人質を取られ、手が出せずに逃がしたら、後日その人質が死体で発見され、マスコミに叩かれた苦い過去がある中野刑事。

その時の犯人を街で偶然見つけて、今度こそはと追いかけたら、またもや人質を取られ、逃がした上に人質の死体が発見されて、マスコミに叩かれるという悪夢のような負の連鎖。

そしてまたもや、中野に追い詰められた卑劣な犯人は、か弱い女性を人質に取る。二度ある事は三度あるのか、あるいは三度目の正直で中野は人質を救えるのか?

過去の経験から犯人の動きを見切った中野が、壁越しにマグナムを撃って犯人と人質を引き離すという、世界一強力な拳銃の威力を活かした戦法で、ついに逆転勝利を収めます。

その後に展開される犯人との殴り合いも壮絶で、鉄杭で脚を刺された中野が、最後にブーツを脱いでひっくり返したら血がジャーって流れたりして、優作さんらしいリアルな描写が光る一編です。

第12話『海を撃った日』は、傷害罪のチンピラ(小野進也)を護送する中野&五十嵐コンビが次々と刺客に襲撃され、応戦しながら本署を目指す『ガントレット』的なロードムービー・アクション。

そのチンピラが実は、暴力団と癒着する警察上層部の秘密を握っており、どうやら黒幕が警察内部にいるらしいのもイーストウッド監督・主演の映画『ガントレット』とよく似てます。

共に闘う2人の刑事とチンピラとの間に生まれる友情。だけど結局はチンピラを守り切れなかった中野が、最後に感情を爆発させ、海に向かってマグナムを連射します。

脚本はメインライターの鎌田敏夫さん。『太陽にほえろ!』でジーパンが初めて銃を手にした『海を撃て!ジーパン』も鎌田さんの作品で、優作さんに海を撃たせるのがよっぽどお好きなんですねw

ほか、雅俊さんが後に結婚する五十嵐淳子さんと共演した第14話『雨に消えた…』や、水谷豊さんが二度目のゲスト出演を果たす第15話『孤独な殺し屋』、そして中野が左遷され、五十嵐が刑事を辞めちゃう最終回『わかれ』等がオススメ作品です。
 
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『俺たちの勲章』1975

2018-09-22 00:00:22 | 刑事ドラマ HISTORY









 
とある若者が○月○日に銀行強盗を計画している、みたいなタレコミを受けた時、あなたが刑事ならどうするでしょうか?

その決行日に銀行を張り込み、若者が強盗をやらかすのを待ち構えて現行犯逮捕するのが、武闘派の刑事マシーン=中野祐二(松田優作)のやり方。

片や、若者が強盗しちゃう前に何とか見つけ出し、説得して思いとどまらせるのが、平和主義のヒューマニスト刑事=五十嵐貴久(中村雅俊)のやり方。

その時は思いとどまっても、やる奴はどうせ又やるに決まってる。それが中野刑事の人間観。対して、人間の本質は善だと信じて疑わないのが五十嵐刑事。

考え方は対照的なんだけど、両者とも組織の中で働くには自己主張が強すぎて、サラリーマン的な上司や同僚達から疎まれちゃうハミダシ者。

そんなヤツらはまとめて厄介払いしてしまえって事で、2人は毎回あちこちの地方署に出張させられちゃう。

横浜を拠点にしながらも、日本全国あらゆる町を舞台にして、優作が走り、雅俊が吠える。『俺たちの勲章』は、そんなユニークな設定の刑事ドラマでした。

1975年の春から秋、日本テレビ系列で水曜夜8時に放映された番組ですが、頻繁にナイター中継を挟んだお陰で、全19話という当時としては少ない話数。視聴率もやや苦戦気味だったらしいです。

だけど片や『太陽にほえろ!』のジーパン刑事役、片や『われら青春!』の沖田先生役で、それぞれ鮮烈なデビューを飾って人気スターの座に就いた2人がコンビで主演ですから、そりゃもう我々世代の男子にとってはたまらん番組でした。

特にやっぱり、革ジャンに革パンの黒づくめで決めた優作さん=中野祐二の、情け容赦ないバイオレンス刑事ぶりが鮮烈で、めちゃくちゃ格好良かった。少年ジャンプに連載された漫画『ドーベルマン刑事』の主人公も、中野刑事をモデルに造形されたんだとか。

萩原健一&水谷豊の名作探偵ドラマ『傷だらけの天使』は、健全路線の『太陽にほえろ!』でマカロニ刑事を演じてたショーケンさんが「俺はもっとアダルトで尖ったドラマがやりたい!」とか言って、プロデューサーにダダをこねた事から生まれた作品でした。

同じように優作さんも、純朴キャラのジーパン刑事役には相当ストレスを溜めておられたそうで、そのワガママに『太陽』プロデューサーが応えて生まれたのが、この『俺たちの勲章』という企画だったんですね。

だからと言って、クールな松田優作がやたら暴れ回るアクション一辺倒の刑事ドラマかと思ったら、実は全然違ってたりします。

本作は後に中村雅俊の『俺たちの旅』や勝野洋の『俺たちの朝』等へと続いて行く『俺たち』シリーズの第1弾でもある。つまり本質は「青春ドラマ」なんですね。

だから、五十嵐がいくら人間の性善説を信じても大抵は裏切られてしまうし、中野の内に秘めた正義感や優しさを理解してやれる人間もほとんどいない。青春とは、痛くてほろ苦いもんなのです。

扱われる事件も、男と女の情念が絡んだ現実的なものが中心で、必ずしも善人が報われるとは限らない、辛辣な結末を迎えるエピソードが多かったように思います。

ゆえにゲスト俳優も水谷豊さんはじめ実力派の人達がキャスティングされ、殊に関根恵子(現・高橋惠子)、篠ひろ子、浅茅陽子、五十嵐淳子、真野響子といった、旬の若手女優さんが毎回起用されるのも大きな見所になってました。

で、五十嵐がいちいち彼女らに惚れちゃうんですよね。美人はみんなイイ人だと思い込んでるフシがあるw 演じる雅俊さんは実際、その中の1人である五十嵐淳子さんと結婚しちゃいましたからね。

製作は日本テレビ&東宝テレビ部の『太陽にほえろ!』チームで、メインライターは後に『男女7人夏物語』や『金曜日の妻たち』等を手掛けるヒットメーカー・鎌田敏夫さん。音楽は吉田拓郎&トランザム。

レギュラーキャストは他に、中野&五十嵐が所属する相模警察本部捜査第一係の係長に北村和夫、事務員に坂口良子、鑑識課員に柳生 博&山西道広、行きつけの小料理屋「あすか」のママに結城美栄子、店員に佐藤蛾次郎、中野が捜査の合間にデートする謎の美女に鹿間マリ、といった面々。

プロデューサーの岡田晋吉さんは、ご自身が手掛けられた幾多の名作・ヒット作の中でも、この『俺たちの勲章』が一番の自信作なんだそうです。

また、後に中村雅俊&根津甚八のコンビで続編的内容の『誇りの報酬』('85) が、更にその後番組として舘ひろし&柴田恭兵の『あぶない刑事』('86) が製作される事にもなります。

放映スタートはテレビ朝日系列『TOKYO DETECTIVE/二人の事件簿』の方が1日だけ早かったけれど、日本のバディ物刑事ドラマの原点はやはり、この『俺たちの勲章』と言って差し支えないでしょう。

黒豹みたいな松田優作のハードアクションに痺れるも良し、青春ど真ん中な中村雅俊の悲恋に泣くも良し、’70年代を彩った若手女優たちに萌えるも良し。未見の方は是非、DVDやBlu-rayでご鑑賞あれ。
 
コメント (2)
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